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Fit for 55 パッケージ 第一弾

欧州議会は、2022年4月11日、「Fit for 55 in 2030パッケージ」のうち、以下の内容を含む重要な法案を承認しました。

1.EU-ETSの無料排出枠が2026年より段階的に廃止
2.CBAMが2026年より段階的導入
3.道路交通及び建物向けEU-ETSⅡが2027年より開始
 (燃料価格が著しく高騰した場合は2028年より)
4.エネルギー貧困に対する社会気候基金の設立

Fit for 55」とは、2030年までに温室効果ガスの純排出量を少なくとも55%削減するというEUの目標です。この施策は、気候変動法に基づいて策定されています。

欧州委員会・EU理事会ウェブサイト infographicより

「パッケージ」は、その目標を達成するために、EUの法律を改正・更新し、新しいイニシアチブを導入する一連の提案のことをいいます。ですので、今回承認された法案は、その一部という訳です。

法律:気候変動法→方針:Fit for 55→施策:パッケージ

パッケージの詳しい内容はこちらを参照下さい。

ちなみに、EU-ETSやETSⅡ、CBAMなどについては、その検討段階から繰り返しお伝えしてきたので、ご存知の方も多いと思います。

CBAMは個人的に関心が高く、検討段階は数回に亘り報告してきました。

また、暫定決定段階では速報で、

具体的な内容については、5回シリーズで、お届けしました。

EU-ETSの改訂については、こちらを参照ください。


ということで、一回も触れていない「4」について、先にご案内しましょう。

4.エネルギー貧困に対する社会的気候基金

気候移行が公平で社会的に包摂されたものとなるよう、2026年にEU社会気候基金(SCF)を設立するという加盟国との取り決めが、521票対75票、棄権43票で採択されました。特にエネルギーや交通の貧困の影響を受けている弱者世帯、零細企業、交通利用者がその恩恵を受けることになる。SCFが完全に導入されると、ETS IIの排出枠のオークションから650億ユーロを上限として資金が調達され、さらに25%が国の資源で賄われます(推定総額は867億ユーロにのぼります)。

欧州議会プレスリリースより

ファンドの詳細は、こちらの、EU諸国との協定締結後のプレスリリースに詳しく説明なされています。

つまり、この基金は、エネルギー高騰の影響の大きいセクターや零細事業者、低所得世帯に対する支援制度であり、その財源として、EU-ETSⅡが導入されるという仕組みであると見ることができます。

CBAM導入は、EU-ETSの無償排出枠の段階的廃止とセットですので、今回のパッケージ第1弾は、それぞれ、補完する施策がセットで採択されたということですね。

その他、3つの施策について、ポイントをご紹介しましょう。

1.EU-ETSの無料排出枠が2026年より段階的に廃止
3.道路交通及び建物向けEU-ETSⅡが2027年より開始

今回の改正によって、企業への無償割当が2026年から削減され、2034年で完全に廃止しされます。また、道路輸送用燃料と建築物のための新しいETSとしてEU-ETS IIが別途設立されます。2027年から導入予定ですが、エネルギー価格が想定以上に高騰した場合は、2028年という選択肢を残しています。

併せて、海運セクターが対象となることも決定。

既に対象となっていた航空セクターですが、こちらは、「CORSIA」という独自の制度を有しており、改訂では統合を予定しています。

その対象をどうするか等の詳細について、まだ議論し尽くされていないところがあるものの、一応合意を見たとされていますが、さてどうなるのでしょうか。「CORSIA」も私の関心事なので、気になるところです。

2.CBAMが2026年より段階的導入

CBAMの対象となる商品は、鉄鋼、セメント、アルミニウム、肥料、電力、水素のほか、一定の条件下での間接排出も含まれます。これらの商品の輸入者は、生産国で支払われる炭素価格とEU-ETSの炭素排出枠の価格との間に生じる価格差を「CBAM Certificate」を購入して埋め合わせます。

このCBAMが、2026年から導入され、2034年にかけて、EU-ETSの無償排出枠が段階的に縮小されるのと同じスピードで導入されます。クロスフェードするのですね。

詳細はこちら


欧州議会で承認されましたので、次のステップは、EU理事会での承認です。
めでたく、両機関で正式に承認を受けることが来たら、その後、EU官報に掲載、20日後に発効という運びになります。

理事会で承認されましたら、またご案内しますね。
まぁ、もう事実上決まっていますけど。

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