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EUのしたたかさ? 国境炭素調整措置

CBAM

略語が多すぎる状態を「アルファベット スープ」などと呼ぶことが多いですが、環境関連の用語についても同じ状態に陥っています。

CDPやSBTi、RE100、TCFDなどが代表例ですが、これも覚えておいた方がよいかもしれません。

the Carbon Border Adjustment Mechanism 
国境炭素調整措置(国境炭素税)
"シーバム"と読むことが多いようです。

EU域内の事業者がCBAMの対象となる製品をEU域外から輸入する際に、域内で製造した場合にEU排出量取引制度(EU ETS)に基づいて課される炭素価格に対応した価格の支払いを義務付けるものです。

CBAM導入の目的は2つ。

1.炭素リーケージリスク(EUと比べ域外国の排出規制等が緩いことでEU企業の国際競争力が低下し、EUから生産拠点が移転してグローバルでの排出量が減らないこと)の抑制
2.EU域外での気候変動対策強化の促進

当初は、「鉄鋼、セメント、肥料、アルミニウム製品、発電セクター」を対象に23年に発効。25年12月までの当初の3年間は予備段階・移行期間として報告義務のみ、炭素価格の実質的な調整は26年からの予定でした。
それが、1年間前倒しされて、25年から本格運用となりそうです。

これと併せて明らかになったのが、EU-ETSにおける、無償の排出枠を段階的に減らして完全に有償化する時期も、35年から30年に前倒しされること。

排出量が多く、輸出依存が高い部門は、リーケージリスクが高いとして、それを制限をするために、無償で配分していたんですね。

これが、CBAMと完全に置き換わるのが、5年前倒しになるということです。

メーカーのR&D部門に所属していたときは、RoHS指令や、REACH規則などの対応に追われていたときもありました。近年では、EU一般データ保護規則(GDPR)が話題になりましたね。

欧州委員会は、その規模を生かして、デファクトスタンダードを作って行くというイメージがあります。本当にしたたかですよね。

今回の動きは、カバーする排出量において、EU-ETS(16億トン)が中国の排出量取引市場(CN-ETS 45億トン)に抜かれたことも、背景にあるかもですね。

ICAP Status Report 2022より

さて「EU向けは扱っていないから関係無いな」というのは甘い。
ということは、皆さん重々承知の上ですよね。
バリューチェーンはつながっていますから。スコープ3です。

では、ECの言うがままなのか、粛々と従うしかないのか。
1と2の目的に合致した行動をとればよいと思いますが、これについては別のnoteで考えたいと思います。


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