マガジンのカバー画像

排出権取引の現在地

109
カーボンプライシングの1つ、排出権取引。世界を見渡すと、EUや中国、韓国、ニュージーランドなど、幅広い国で実施され、着実な効果を上げています。日本で検討されているGX-ETSはど…
運営しているクリエイター

2022年9月の記事一覧

GXリーグの目指す排出量取引制度(その4)

GXリーグ基本構想への期待事項、2つ目「野心的な削減目標」について。 その1〜その3は、こちらです。 これについては、「総排出可能量」を明確に定義することが必要でしょう。 それに基づいて、各企業に排出枠を設定する。各企業はそれを達成するための「野心的な削減目標」を立てる。これしかありません。 現在は、2025年度及び2030年度の目標排出量を登録することとなっており、2050年ネットゼロと整合的かつNDC相当以上の目標を掲げることを推奨しています。 本論に入る前に、確

GXリーグの目指す排出量取引制度(その3)

排出権取引制度によって排出削減が達成されるためには、 1.総排出可能量(Cap)が設定されること 2.対象企業は参加が「義務」であること 3.罰則が定められていること が重要であると、(その2)で述べました。 GXリーグで議論が始まった「排出量取引制度」において排出削減が達成できるか否かは、この「Capを遵守する仕組みが備わっているか」を見ればよいということに尽きます。 説明資料では、「自ら、野心的な削減目標水準を設定」とあります。 GXリーグ基本構想は、賛同企業にお

GXリーグの目指す排出量取引制度(その2)

「GXリーグ基本構想」の本丸、「排出量取引制度」の検討が動き出したことを受けて、先のnoteでは、これまでの経緯を振り返ってみました。 環境に関わってきた人間なら「いつか来た道」と思うことでしょう。 ・議論は散々やって来た ・何を今さら ・結局やらないんでしょ こういう人もいるでしょう。私もその一人です。 石橋を、叩いて叩いて、叩き壊して渡らない。 こう嘯いたこともあります。 「やらないために、やってるんじゃないの」とも。 ですが、ここは一旦、与件を持たずみてみたいと

GXリーグの目指す排出量取引制度(その1)

440社の賛同を得て、2022年4月1日動き出した「GXリーグ基本構想」 私も「賛同」したこともあり、以前ご案内しました。 22年9月からは、JPXにおいて、試行的な取引が始まりました。 実証期間は、2023年1月までで、売買の対象は「J-クレジット」及び「GXリーグにおける企業由来の超過削減枠」ですが、実際に取引できるのは「J-クレジット」のみ。午前と午後に1回ずつ、約定を成立させます。 条件が整えば「超過削減枠」も売買できるようにするようですが、あくまでも「シミュレー