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GXリーグの目指す排出量取引制度(その3)

排出権取引制度によって排出削減が達成されるためには、

1.総排出可能量(Cap)が設定されること
2.対象企業は参加が「義務」であること
3.罰則が定められていること

が重要であると、(その2)で述べました。

GXリーグで議論が始まった「排出量取引制度」において排出削減が達成できるか否かは、この「Capを遵守する仕組みが備わっているか」を見ればよいということに尽きます。

説明資料では、「自ら、野心的な削減目標水準を設定」とあります。
GXリーグ基本構想は、賛同企業における意見形成により、義務的で無く自主的な制度により、NDCを達成することを企図しているので当然です。

参加企業については、現在の賛同企業に限定されません。しかし、多排出企業の参加が「義務化」されることは、基本構想からして無いはずです。

「開示するため、目標を達成すべく取り組むことが期待される」ので、社会的な信用を「罰則」同等の動機付けにしたいようです。

「GXリーグにおける排出量取引の考え方について」説明会資料より

このような、「自主的な目標設定と達成努力」に当て込んだ施策で代表的なものは、「京都議定書目標達成計画(目達計画)」でしょう。

京都議定書第一約束期間(2008-2012年度)において、GHG排出量を1990年比で6%削減する義務を負いました。その目標を達成するために作成したものですが、経団連及びその他の業界団体が作成していた「自主行動計画」の削減目標を、そのまま、日本の産業界における削減量にカウントしたのです。

産業界としては、お上のお達しですから、遵守せざるを得ない。法的拘束力は無いものの、同等の効力を持たせる、うまいやり方でした。

経団連としても、「言われたとおりにやりますから、義務にはしないで下さい」といったところで、どっちもどっち感があったように感じました。

京都議定書目標達成計画

このような、性善説に基づいた日本のお家芸はよしとして、今回のGXリーグに期待したいのは、以下の2つ。

1.野心的な削減目標の設定
2.達成させるための仕組み

同様のことは、気候変動枠組条約(UNFCCC)でも行われています。
「Global Stocktake(GST)」です。

パリ協定の目標達成に向けた世界全体での実施状況をレビューし、目標達成に向けた進捗を評価する仕組みで、パリ協定第14条で定められています。

各国は5年毎に、自国が定める貢献(Nationally Determined Contribution: NDC)を策定・提出することになっており、パリ協定の達成を担保する仕組みとなっています。

「IGES グローバルストックテイクとは」より

説明会の資料には、「GST」のような「達成させるための仕組み」について、記載はありませんでした。「学識有識者検討会」に期待です。

もう1つ「野心的な削減目標」については、次回に譲りたいと思います。

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