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排出権取引の現在地

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カーボンプライシングの1つ、排出権取引。世界を見渡すと、EUや中国、韓国、ニュージーランドなど、幅広い国で実施され、着実な効果を上げています。日本で検討されているGX-ETSはど…
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2022年5月の記事一覧

東京都排出量取引制度についてのつぶやき

ご存知ない方が圧倒的だと思いますが、法的拘束力を有した排出量取引制度が国内に存在します。それが、東京都と埼玉県です。 両制度は連携しており、クレジットの相互利用ができ、一度の試験で両制度の検証人資格を取得することができます。 私は、初年度に検証主任者講習会をうけ、修了試験を受験、めでたく資格取得しました。と、簡単に書きますが、大変でした。 クレジットには、種類があります。 で、それぞれについて、資格が設定されているのです。 まぁ、ISOも9001と14001は別の資格

CBAMは「危機」なのか

ここまで引っ張るつもりがなかった、CBAMネタ。 書き出したら長くなって、3回目。 最後に、日本企業への影響について考えたいと思います。 まず、First Stageでの5セクターでは、影響は軽微だと思います。 CBAM導入に当たっては、保護主義的でない、国際ルールに反しないことに最大限の配慮を払う姿勢を見せています。 そのためには、製造における排出量が明確に区別され、対象となる製品に帰属される必要があります。それに基づき、CBAM certificate を納付すること

国境炭素調整措置(CBAM)が気になります

前回のnoteで、国境炭素調整措置(CBAM)の導入が1年間前倒しされ、2025年から本格運用になる、という話をしました。リーケージを回避するという同じ目的で導入されていた「排出枠の無償提供」終了時が、2035年から2030年へこちらも前倒しとなります。 ですので、クロスフェードの開始時期が1年間前倒しとなることに加え、クロスフェード期間が4年間も短縮されることになりますね。 なお、この間も、無償提供からオークションへ排出枠の割り当て方も徐々にシフトしていきます。欧州委員

EUのしたたかさ? 国境炭素調整措置

CBAM 略語が多すぎる状態を「アルファベット スープ」などと呼ぶことが多いですが、環境関連の用語についても同じ状態に陥っています。 CDPやSBTi、RE100、TCFDなどが代表例ですが、これも覚えておいた方がよいかもしれません。 the Carbon Border Adjustment Mechanism 国境炭素調整措置(国境炭素税) "シーバム"と読むことが多いようです。 EU域内の事業者がCBAMの対象となる製品をEU域外から輸入する際に、域内で製造した

非化石価値取引市場 盛り上がってます

先週、21年度第4回目の非化石証書の開札が行われました。 21年度からは、FIT電源の非化石証書については、これまでの小売電気事業者に加え、需要家や仲介事業者も参加することが可能となりました。仲介業者の方がメインとなっているようですが、順調に参加者は増えています。 エネ庁のアンケートによると、回答事業者(52社)中、43社が145の再エネメニューを販売しており、そのうち約半数がFIT証書を用いたメニューとのこと。みなさんも、「再エネ電力」をPRする新電力が増えたことにお気づ

素朴な疑問シリーズ〜排出権?排出量?

平成20年「福田ビジョン(覚えてます?)」に基づき、排出量取引の国内統合市場の試行的実施が開始されました。 1.試行排出量取引スキーム 2.国内クレジット 3.京都クレジット この3つを「統合」した国内市場を設け、クレジットの売買をする構想。 カーボンプライシングの一翼として再び議論されている「排出量取引」市場が、国内で産声を上げたのです。 まぁ、「知る人ぞ知る」ではありますが、一応、新聞やメディアで報道されたので、記憶にある方もいらっしゃるかと。 ですが、新たな概念