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目指せネットゼロ、世界は既に動いてる

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2050年カーボンニュートラルを政府が打ち出す前から、すでに、世界は動いていました。「やるか、やらないか」ではありません。「いつやるか」です。そのために必要な情報を、提供していき…
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記事一覧

ICVCMの目指す「Additional」とは?(2)

前回から、特定の再エネクレジットがCCPラベル認証対象外となった理由である「Additionality」について考えています。 前回はこちら。 対象外とされたのは、再エネクレジットが8種類と、SF6排出削減クレジットが1種類。 根拠資料としているのが、ICVCMが公開した「カテゴリー評価に関する見 再生可能エネルギー」という文書なので、再エネクレジットについてのみの説明になります。 この文書で議論しているのは、「再生可能エネルギープロジェクト」が「クレジットによる支援

エアラインは飛び立てるか?

つい先日、「理想論を議論する段階は過ぎ去り、具体的な削減活動を起こすフェーズに来ている」というnoteを書きました。 そんな折、タイムリー(?)に、ニュージーランド航空が2030年中間目標を撤回するというメディア報道がありました。 ニュージーランドヘラルドの記事には、併せてSBTiへ提出しているNear-term目標も撤回するという記載があったので確認しましたが、まだステータスは「TARGET SET」となっていました。 このように、Near-termで認定されている削

Washingを恐れてHushing?

みなさん、「Green Washing」はよくご存知ですよね。 noteでは、昨年早々に記事にしておりました。 このような背景の下に、既存のボラクレは、登録済みのプロジェクトを精査したり、方法論をアップデートしたりと、「Legacy」に対する対応に追われていました。 また、ウォッシュ批判を受けて「高品質なクレジット」の要求事項が上がっていても、なお、「クレジットを創りたい」という要望が多く寄せられたことを踏まえて、このようなnoteも書きました。 クレジットの収益が目的

SBTi Scope3 discussion paper の衝撃?!(1)

7月30日、SBTiが、Corporate Net-Zero Standard(CNZS)の改訂プロセスの初期段階として、4つの技術的成果を発表しましたが、このニュースで、サステナ界隈が少しザワザワしているように思います。 リサーチした訳ではありませんが、ポジティブな意見には、強い肯定的な感情を示すものが多かった一方で、ネガティブな意見は、比較的穏やかなトーンで表現されている傾向かなと。 地域としては、欧米企業やNGOからの発言が目立ち、アジア地域からの発言は比較的少なか

SAFプレミアム共有プラットフォーム?(2)

成田空港をプラットフォームに、7社が合同で、SAFの環境価値を証書化、取引することを通じて航空輸送の脱炭素化を図る実証試験に着手することを発表したことを受けて、内容を簡単に紹介しております。 前回は、実証試験の概要をお届けしましたが、今回は、スキームを確認した上で、個人的な見解も交えてご案内しようと思います。 この実証試験は、プレスリリースでは次のようなポンチ絵で、取引スキームを紹介しています。 プラットフォームの左側に「航空会社」と「燃料供給事業者」が入れ替わった2つ

Additionalityに基づくICVCMの判断

ICVCMが、既存の再生可能エネルギー方法論に基づいて発行されたクレジットに対して、CCPラベルを付与しないことを発表しました。 CCPラベルとは、「高品質なクレジット」の証左とも言えるラベルで、次の2つのレベルで認証が行われます。 簡単に言うと、CCP-Eligibleは、クレジットプログラム(VCS、GS、ARTのようなボラクレスキーム)を認証するものであり、CCP-Approvedは、方法論(森林吸収やバイオ炭などのプロジェクト)を認証するものです。 詳細について

SAFプレミアム共有プラットフォーム?(1)

2023年8月2日、成田空港をプラットフォームに、7社が合同で、SAFの環境価値を証書化、取引することを通じて航空輸送の脱炭素化を図る実証試験に着手することを発表しました。 今回の実証試験における各社の役割、このようになっています。 証書というと、「非化石証書」あるいは「グリーン電力/熱証書」が馴染み深いかと思いますが、基本的に同様で、CO₂を排出しないというScope3環境価値(プレスリリースでの表現)を分離させたものです。共通のプラットフォームを通じて売買するというプ

クレジットを安心して購入したい

これまで、何度か、クレジットが一般の商品になってきたという話を、noteでご案内してきました。 ここで、クレジットの普及へ向けて、開発・導入されているサービスをまとめておこうと思います。具体的には、次の5つかなと。 それぞれ説明していきますね。 「1.レーティング」はクレジットの「格付会社」。 例えば、「BeZero Carbon」が挙げられます。 株式と同じで、詳細な情報を入手するには契約が必要ですが、後ほど説明するACXとコラボしていているので、ACXが毎週リリー

GHGPのLSRガイダンス 25Q1にV1.0リリース予定

GHGプロトコルが開発中の、Land Sector and Removals Guidance。 23年Q2の予定が24年Q2へ一年延期されたあと、さらに遅れることが判明した際、ご案内していました。 目標設定のデファクトスタンダードである、SBTiのFLAGセクターガイドラインは22年9月28日にリリースされていながら、肝心の算定方法のデファクトスタンダードであるLSRGが当初予定よりも遅れていたことから、それに併せて、「アップデート」される事態にもなっていました。 そ

目標設定から移行計画へ

2050年ネット・ゼロを目指すに当たって、中間目標年である2030年が近づくに連れて、計画段階から、リアルな削減を行い、実績を出していく段階に移行すべきというnoteを、書きました。 この文脈で、アップルの例が思い出されましたので、私なりの意見を述べておきたいと思います。 アップルが昨年、Apple Watchの特定モデルでカーボン・ニュートラリティを達成した旨を公表。マークをお披露目したり、Lisa Jackson (VP, Environment, Policy an

クレジット活用の強い味方(2)

前回から、購入を後押しするクレジット向け保険の紹介をしています。 今回は、Swiss Re Corporate Solutionsとgoodcarbonが共同で立ち上げた、「保険対象クレジットの現物交換を提供する初の長期炭素クレジット購入保険」の紹介から。 この保険は、「高品質の炭素クレジット供給へのアクセスを提供するだけでなく、重要な生態系や脆弱なコミュニティに恩恵をもたらす自然ベースのプロジェクトへの資金流入を容易にする」ものだそうです。 なお、goodcarbon

SBTi参加企業数アップデート

毎月定例のSBTi参加企業数、2024年7月度。 毎週木曜日にアップデートされますので、2024年7月25日現在です。 前回はこちら。 SBTiは5月から、Legacy版と並行して、Beta版のTarget dashboardを運用し始めています。 昨年5月にBetaの運用は開始済みでしたが、データのフィルタリング方法が変更となり、これまでのグラフ等との継続性が保てなくなるので、当面Legacyを使用していました。 しかしながら、Beta版では認定済み組織(Target

中小企業の脱炭素経営状況は?

日本商工会議所と東京商工会議所が共同で「中小企業の省エネ・ 脱炭素に関する実態調査」を実施し、レポートを公開しておりました。 個人でコンサルしておりますので、非常に助かります。 検証人としては「エビデンスに基づいて」と呪文のように唱えておきながら、他方では何の根拠も無く現状を論じることはできませんから。 で、内容はというと「想定内」でした。 が、それを確認することも重要。 検証時「少量なので算定対象外にした」との説明を受けることも多いのですが、「少量の定義(例えば全体の

クレジット活用の強い味方(1)

2年前、NCSAが、6つの森林吸収プロジェクトを「Lighthouses」に指定したことをご紹介しました。NCSA(Natural Climate Solutions Alliance)は、自然気候ソリューションと炭素市場への投資の機会と障壁を特定することを目的とした、マルチステークホルダーグループです。 Lighthousesは、「灯台」という名前が示すとおり、指定されたプロジェクトは、NCSAの厳格な基準に合致しており、実施地域の自然資源、生活環境の保全・改善に寄与する