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SAFプレミアム共有プラットフォーム?(1)

2023年8月2日、成田空港をプラットフォームに、7社が合同で、SAFの環境価値を証書化、取引することを通じて航空輸送の脱炭素化を図る実証試験に着手することを発表しました。

日本航空株式会社
伊藤忠商事株式会社
ENEOS株式会社
NIPPON EXPRESSホールディングス株式会社
株式会社みずほ銀行
みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社
成田国際空港株式会社

(共同リリース)航空の脱炭素化を目指してSAF利用促進プロジェクトを開始 より

今回の実証試験における各社の役割、このようになっています。

伊藤忠商事:SAFの供給とScope3環境価値の提供
ENEOS:SAFの供給とScope3環境価値の提供
JAL:SAFの使用に伴って発生したScope3環境価値の提供
NX:航空貨物輸送に係るScope3環境価値の購入、荷主へのScope3環境価値の展開
みずほ銀行:実証事業の運営及び取引体制の確認サポート
みずほリサーチ&テクノロジーズ:実証事業の運営及び取引体制の確認サポート
NAA:プラットフォーム運営・事業企画、従業員の出張に係るScope3環境価値の購入

(共同リリース)航空の脱炭素化を目指してSAF利用促進プロジェクトを開始 より

証書というと、「非化石証書」あるいは「グリーン電力/熱証書」が馴染み深いかと思いますが、基本的に同様で、CO₂を排出しないというScope3環境価値(プレスリリースでの表現)を分離させたものです。共通のプラットフォームを通じて売買するというプロジェクトですね。

(共同リリース)航空の脱炭素化を目指してSAF利用促進プロジェクトを開始 より

2023年10月19日、DHL Expressが、SAF生産および低炭素化ソリューションのリーディングカンパニーである米ワールドエナジー社と同様の事業を開始すると発表していますが、燃料供給事業者、航空会社、フォワーダー、空港会社などが参画する点で「世界初」の試みと謳っています。

エアラインはCORSIAのスキームの下、排出削減が求められており、その達成手段の一つが、SAFの利用です。ですが、SAFの製造には費用がかかります。これをお客様に転嫁しよう(協力してもらおう)というのが、狙いです。

利用者にとっても、悪い話ではありません。

まず、直接的な恩恵を受けるのは、フォワーダーなど、航空機の利用が不可避な企業。スコープ1を直接削減可能です。

また、一般的な大企業はもちろん、中小企業にもメリットはあります。

サプライチェーンに組み込まれていない企業は無いと言って良いほど、グローバル化した現在。程度の差はあれ、どんな企業にも、削減圧力はかかっています。

そんな中、この証書を購入すれば、上流・下流の輸送(カテゴリー4・9)、出張(カテゴリー6)における排出量を削減することが可能になるからです。

スコープ1・2であれば、EVの導入や再エネ電力の調達等、少ないながらも選択肢はあるところ、スコープ3については、決定打は中々無いことに鑑みると、バカにできない削減量となります。

以前、製薬会社の排出量算定の支援を行いましたが、UKに拠点を置くグローバル企業でしたので、出張における国際線利用時の排出量が特出していました。まさに「飛び恥」状態だったものの、各国に現地法人があるため、中々減らせず、悩んでいたことが思い返されます。

さて、じゃあ、この実証試験が終了し、本格的にサービスが開始されれば、誰でも自由に証書を購入して、自社の航空機利用による排出量を控除できるかというと、現段階ではNGでしょう。

その理由について、個人的な見解を、次回ご案内したいと思います。
お楽しみに。

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