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中2のピカソに涙した記憶。『ピカソ、天才の秘密 バルセロナ・ピカソ美術館展』

過日、上野の森美術館で開催された『ピカソ、天才の秘密 バルセロナ・ピカソ美術館展』へ。
過日といってももう20年以上前、2002年にまで遡る。
「人生でいちばん思い出深い展覧会は?」という問いに対して、真っ先に浮かんだのがこの展覧会だった。

ピカソの少年期から多感な青春時代にかけて、約14年間の間に描かれた作品200点を集めた企画展。
自画像や家族像、殴り書きのようなメモが添えられた素描など、その数の多さと絵の上手さに驚いたことをよく覚えている。

便利な時代に感謝。

オンライン古書店で図録を見つけたので取り寄せてみた。
「私が日記を綴るようにピカソは感情を絵に託していたのかなぁ」
「天から授かった才能って、こういうことか…」
ページを繰りながら、20年前の感情や記憶がワッと押し寄せる。
そういえば、素描が好きになったのもこの展覧会がきっかけだったかもしれない。

いちばん胸を打たれたのは、図録の表紙にもなっている《初聖体拝領》だ。
14歳6か月のときに描かれた、という解説を読んで度肝を抜かれた。

聖体拝領とは、カトリックの礼拝の際に聖体=キリストの体を象徴するパンを食べ、キリストと一体になる儀式のこと。
初聖体拝領は、自分の意思でキリストを信仰することを表明する=その後の人生を献げることを表明する、大切な儀式でもある。
少女の緊張しているような、でも喜びに満ちた表情や、傍で見守る少年侍者の慈愛にあふれた表情、やわらかな燭台の光、いまにも衣擦れの音が聞こえそうな衣装…教会の空気感そのものを切り取ったようなこの絵画と、
当時のわたしが知っていたピカソ(たぶん、キュビズムとか教科書で観ていたもの)とが結びつかず、圧倒されたし、ただただ感動した。

このほかにもキリスト教をテーマにした作品も多く展示されていて、いまになって思えば、ピカソが宗教画を描いていたことに意外性を感じる。

《ヘラクレス》。6歳でこんな絵を描いたピカソも
20年前のポストカードが手元に残っていることもすごい

ちなみに、このとき購入したポストカードは、6歳のときにピカソが初めて描いたとされるデッサン《ヘラクレス》のみ。
もちろん《初聖体拝領》のカードも売られていたのだけれど「こんなに小さくしてしまったら、あの絵の質感や空気はわからない」と買わなかったのだ。

今となっては、ちょっと惜しい。
いつかバルセロナのピカソ美術館で、もう一度《初聖体拝領》が観たい。

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