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86歳は「おじいちゃん」ではないと改めて痛感した日。『横尾忠則 寒山百得』展

過日、「東京国立博物館 表慶館」で開催中の「横尾忠則 寒山百得(かんざんひゃくとく)」展へ。

明治33年に建てられた表慶館。かっこいい。

中国・唐の時代に生きた伝説的なふたりの詩僧、寒山(かんざん)と拾得(じっとく)を独自の解釈で再構築した102点(それもすべて新作、書き下ろし!)を集めた展覧会。

寒山拾得といえば水墨画だけれど、
キュビズム調のキービジュアル。

それぞれの絵には日付が書かれていて、よく見ると翌日だったり、3日おきだったり。

一体、どんなスピードで筆を動かしているんだろう。

次々に違う作品のイメージが湧いてくるなんて、頭の中はどんなことになってるんだろう。

マラソン。なぜ、マラソン?

そもそもこんなに大きな作品、乾く前に次の絵に取り掛かり続けていたら、アトリエはゴタゴタなんじゃないかしら。
だんだん、よくわからない妄想で頭がいっぱいに。

86歳を迎えた横尾さんは、本展のインタビューで「アーティストをやめて、アスリートになろう、頭で考えるのをやめて体で考えることにした」と語ったそうだが、
確かにあれこれ、いちいち細かく考えていたら前に進むことはできないよな、と納得する。

伝統的な寒山拾得図では、寒山は巻物を、拾得はほうきを持っているそうだが、横尾さんが描くと巻物はトイレットペーパーに、ほうきは掃除機になったり。

ここまでくると寒山拾得ってなんだっけ、となる。
これがおもしろい。

なぜかマラソンをしたり、アルセーヌ・ルパンになったり、いつの間にか人ですらなくなったり。

共通するのは、どれも楽しそうなこと。
確かに、伝統的な寒山拾得図(検索するといろんな画像が出てきます)もニコニコ楽しそうではあるんだけれど、もっとぶっ飛んでる。

わたしのいちばんのお気に入り。
ちょっとエロくてかっこいい。

ハリー・ポッターシリーズに登場するフレッド&ジョージのようないたずらっ子か。
はたまた、B'zの稲葉さんと松本さんか。
時空を超えた冒険家か。

混然一体、という名前の作品だったと思う

すごいなぁ。
“年齢は記号に過ぎない”という言葉は、負け惜しみなんかではなく、本当だったんだ。

私自身は、これまで一度も長生きしたいと思ったことはないし、だれにも迷惑をかけないで済む内にひっそりとこの世を去りたい、と思っているのだけれど
どうせ長く生きるなら80代を過ぎても「これからアスリートになる」と宣言できるような、カッコいい大人になりたいなぁ、と思う。

最後に展示されていた作品(おそらく最新作)は
まばゆいほどの光に包まれていた。


そろそろ、頭で考えるのをやめてみようか。

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