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アルムナイのコラボがもたらす「価値」

私はソニーの有志アルムナイを立ち上げ、2年半で1,000人を超える規模にした後、健全に発展する企業アルムナイが増え、活発に活動して価値を共創していく後押しをしたいと考え、企業アルムナイの運営者を繋げるボランタリーなコミュニティをFacebookグループで立ち上げました。

自主的に回っているアルムナイの運営者を繋げる

現時点で次のアルムナイの運営者(卒業生だけでなく、現役社員の場合もあり)が、Facebookの非公開グループに登録してくれています。

1.ソニー, 2.Yahoo, 3.ビズリーチ, 4.JAC, 5.DeNA, 6.IBM, 7.SBIグループ, 8.Google, 9.NSSOL, 10.三井物産, 11.電通, 12.経産省, 13.Sansan, 14.SMBCベンチャー会, 15.ニトリ, 16.双日, 17.パーソル

(2023年12月7日現在)

卒業生が自主的に運営していて活発に活動し、メディア記事などで世に発信されているアルムナイの運営者に、個人的なつてを駆使してアプローチして、とりあえず入ってもらいました。なお、誤解なきよう説明しておくと、あくまで、運営メンバーの一部が個人としてグループに参加しているもので、各アルムナイとして公式に連携しているというわけではありません。

現状の関わりについては当然濃淡があります。この活動が参加者、すなわち各アルムナイ運営者にとっての価値やROIを高めるには、アクティブで自律的なコミュニティにする必要があり、これが主催者がこれからなすべきことと自覚しております。

本稿でお伝えすること:参加者観点での課題解決と価値

このコミュニティは、アルムナイが必ず陥り、単体では解決がしづらい問題の解決策となり、アルムナイ参加者・運営者共に価値をもたらすものであると考えています。

本稿では、まずは参加者にとっての価値の観点で、以下を説明します。

  1. アルムナイが本質的にもつ、継続を難しくさせる特性

  2. 企業グループや業界の枠を超えた、異なる企業アルムナイのコラボが、上記課題を解決するメカニズム

企業アルムナイの運営に携わる人に役立つ内容となっておりますので、該当する方はぜひご覧下さい。

コミュニティ4つの死因

筆者は17年近く複数コミュニティの運営に携わってきた実践家で、かつて「コミュニティ4つの死因」というタイトルで、コミュニティ崩壊の典型的なメカニズムを「がん・心停止・老衰・脳死」という4つの原因に喩えて説明した記事を書き、コミュニティ界隈の人に大いにバズったことがあります。

簡単に説明すると以下のようになります。

  • がん:場の趣旨にそぐわない人が混じって増殖し、本来残って欲しい参加者層が離れていく

  • 心停止:規模や人の種類が拡大するにつれ、主催者にとって運営上の煩わしいことが増え、楽しく続けられる臨界点を超えて心が折れる

  • 老衰:内向きな文化や非合理的な階層意識が蔓延り、新しい人が定着せず、残ってほしいリピーターも離れ、暇人だけが残る

  • 脳死:趣旨を見失い、継続自体が目的化して、価値もない集まりをダラダラ続けている

アルムナイがもつ、継続を難しくさせる「特性」

参加者の立場に立てば、アルムナイのイベントなどに継続的に参加したくなるためには、自分にとって何かしら新しい価値があり続けることを期待します。

しかしアルムナイは、その特性上、以下の問題を必ず抱えます。

1. ニーズが分散するため、マッチング確率が低い

同一のアルムナイの参加メンバーに共通するのは「出身企業」という属性で、目的や関心の異なる人が混ざります。ニーズが分散すれば、それを満たすマッチングの成立確率が低くなります。

活動に参画しても自分の期待する成果が得られないことが続けば、もういいか、となるでしょう。

2. 卒業生しか参加できないので、規模や成長に限りがある

アルムナイは、卒業生でなければ参加できないのが一般的です。その規模は過去の卒業生の人数であり、それは企業の規模や継続年数の掛け算に、加入率や対象となる属性の割合(ソニーの有志アルムナイの場合、ビジネス等で現役であることが要件)が加わります。今後の対象者の増加は、退職者数(従業員数x離職率)となります。

コミュニティが活性を維持するには、ある程度の新陳代謝、すなわち、新しい人が入り、新たな刺激をもたらすことが必要となりますが、その供給に限りがあれば、老化させる力が強くなります。

3. 出身企業が同じなので、人の多様性が絞られる

もう1つの問題が、似たような人ばかりになることです。長い間限られた数の事業しかやって来ず、職種も固定化している会社のアルムナイなら、いつ行っても似たような人しかいなくて、あまり刺激や学びにならないでしょう。しかし、人の多様性を広げようにも、過去は変えられません。

要約すると、1の問題はまだ人数が少ない初期に発生するミスマッチで、2と3は、人数や多様性が限られることで不可避に生じるマンネリ、ということです。

企業の枠を超えた連携で、コンテンツの幅が広がる

異なる企業のアルムナイが連携したイベントをやることで、上記の問題は解決できます。

1の「属性とニーズが分散することによるマッチング不成立」は、コラボによりより多くの人が参加すること、しかも、属性が異なる人々が来ることにより成立確率が高まることが期待できます。

2の「量の制約」も、単純に自分たちとは別の母集団から人が参加できることで解決します。

3の「母集団の多様性」についても同様です。例えば、ソニーとYahooのアルムナイでコラボしたところ、ソニーにはあまりいない、Web系のエンジニアやビジネスプロデューサーが多く参加して、普段とは違う話が聞けた、ということがありました。

人がつながる集まりにおいて、究極のコンテンツは「人」そのものです。あるアルムナイが他のアルムナイとコラボすることの価値は、そのような、新しく面白い人とのご縁のきっかけを提供できるということなのです。

大義名分や質を維持しながら、ベネフィットを享受できる

単に人数や多様性を増やすだけなら、「誰でも参加可能」とすれば十分でしょう。しかしアルムナイは、出身企業を同じくする人の集まりという大義名分があり、安易に誰でも参加できるとすると、いわゆる「異業種交流会」になってしまいます。

コミュニティに携わる人々の間では「混ぜるなきけん」という言葉があります。目的やレベル感などが違う人々を安易に混ぜてしまうと、両方に不満が残る、という意味で使われます。この点、出身企業は異なれど、趣旨や方針の基本は同じのアルムナイ同士であれば、参加者のふる舞いに大きな齟齬はないでしょう。

また、アルムナイがある企業は、それなりに規模や歴史があり、「辞めても好き」と思わせる求心力があるところです。多くは大企業で、短期間で大きく成長したスタートアップも散見されるようになりました。そういう会社を飛び出して、わざわざアルムナイに来る人は、それなりに勢いのある人も多いです。

次回:運営者が互いに支え合う場としての意義

今回は、企業アルムナイのコラボが、参加者にもたらす価値について、課題解決と価値創出のメカニズムも含めて説明しました。次回は、アルムナイの運営者同士が連携することでもたらされる価値について説明します。

ご案内:企業アルムナイ運営者コミュニティ

以下に該当する方はぜひご参加下さい。
お知り合いで該当する方がいたら、ご案内いただけると嬉しいです。

趣旨:企業アルムナイ運営者同士の知見共有やコラボを促進する
対象:以下に該当する企業アルムナイの運営メンバー
 1)一定以上の規模や活動実績がある
  *会社公式ではなくても、公認的に連携していればOK
 2)定常的に運営に関わる人
  *現役社員でもOK
参加方法:Facebookへの参加を申請し、質問に回答下さい
※非公開グループなので、申請→承認が必要です
・アルムナイ名(どの企業/団体の卒業生コミュニティか)
・アルムナイのURL(あれば)
・アルムナイにおける運営上の役割(卒業生か現役社員かも明記下さい)

よろしければTwitterもフォローください〜 https://twitter.com/Ryu_8cchobori