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ハードルを下げることと対象を広げることは違う〜集客の落とし穴

セミナーで最も悩みが多い「集客」。人数を増やそうとするあまり、女子学生向けの就活イベントで「転職希望の中年男性まで対象を広げよう」というような、本来の目的から外れた策を打ってしまいがちです。そんな失敗をしないための、考え方の道筋について書いてみます。

この記事の主旨

複数コミュニティ運営13年・イベント企画約600件の実践に基づく方法論を、誰もが使えるように言語化します。オンラインセミナーの方法論全般は下記書籍に詳説したので、よろしければご参考ください。

目的、ターゲット、コンテンツ、打ち出しを整合させる

集客で最初に考えるべきは「目的」です。最終目標が「買ってもらうこと」とすれば、それまでいくつかの段階に分かれており、段階ごとに目的や形態も異なります。

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多くの人に知ってもらうには、対象を一般に広げ、幅広い人が関心を持つテーマ、著名な登壇者を呼んで、大量の広告を投入するなどして、数十万人の目に触れ、数百人が参加するようなものが目的に合致すると言えます。

自社商材のターゲットになりうる潜在顧客層にリーチして、商談につなげたり、将来的な商談に繋がるよう継続的コンタクト可能なリストを作りたいならば、本来のターゲットのみが反応・参加する内容と打ち出しにするのがいいでしょう。

気をつけることとしては、まだ情報収集や比較検討の初期段階なら、ターゲットの関心分野全体の情報が求められているため、自社商材の話だけをすると「学びの名目で人を集めておきながら、得るもののない営業セミナーだった」との悪印象を与えてしまうことです。

一方、すでに商談が進んで健在顧客化している相手には、一般論の「お勉強」は不要で、買うことを思い切るために必要な、自社商材に関する個別具体の詳細情報や課題解決が求められます。

ゴールから逆算してターゲットを絞る

商材には「勝てる土俵」があり、自ずとターゲットが決まるものです。事業創造のためのデザイン手法を実践するプログラムを、セミナーを通じて売っていた際は「大手企業の事業創造部門のマネージャークラスで、デザイン思考の導入をしてみたものの成果が出ず、方法論的としての課題を感じている人」というように、自分たちが最終的に売りたいが検討の俎上に乗った時、自ずと勝てるターゲットを定義していました。

対象を絞る根拠は、中小企業では予算や課題感がミスマッチ、トップマネジメントでは先進的な方法論より実績・知名度のある少し古いものを好み、現場担当者では決裁権がない、デザイン思考をまだ試していなければ方法論の課題を感じいないため刺さらない、といったことです。

これらは、何回か実施して、参加者の属性や生の反応をみることで、自ずと解像度が上がっていきます。

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参加人数=母数xリーチx申込率x参加率

母数は一般的な内容ほど広がります。ホテル業界の最新事情より、恋愛や収入UPのような、一般人の人生に関わるテーマの方が自ずと関心は高まりますが、テーマを一般化してターゲットを広げると自社のターゲットと関係のない人が混じります。対象を広げる場合は「それが本当に目的達成に繋がるか」明確な根拠が必要です。

リーチは、既存のリストやフォロワーなどのアセット、広告やPRの物量と精度、発信自体の波及力によります。アセット過去の蓄積、広告は資金量とノウハウ蓄積、波及力はターゲットの課題の深刻度とそれへの刺さり具合で決まります。「バズ」は狙ってできるものではなく、チューニングしながら確率を上げ、運の後押しをもらう感じでしょう。

申込率は、リーチと同様、ターゲットの課題の深刻度とそれへの刺さり具合が重要です。ターゲットに刺さる企画ができればリーチと申込率が高まり、一気に申込みが増えるということです。いきなりホームランということはあまりなく、チューニングと改善を継続して打率を高めていくのが現実的でしょう。

案外見落としがちなのが参加率です。無料や当日払いのセミナーは参加数/申込数が一般的に6割と言われますが、事前フォローなどで関係構築をすることで9割までは上げられます。折角申し込むというアクションまでしてもらっているので、この割合を上げるだけでも成果は変わります。

「純度」を上げてコンバージョンを高める

参加人数に対して期待する事後アクションを取った人の率をコンバージョン(CV)率とするならば、参加者に占める本来のターゲットの割合(純度)を高める方が合理的です。

CVはターゲットの課題に対してコンテンツが課題解決になっているかの合致度と、そのことがターゲットに的確に伝わるかの伝達度で変わるでしょう。伝達度は講師の力量や資料の出来栄えなどの質的要因と、一人一人の参加者への対応時間という量的要因に依ります。

ターゲット以外の層が交じると、本来のターゲットへの対応時間が減ることに加え、特にオフラインだと「場違い感」を感じさせてしまうため、基本的には好ましくないのです。

「最小催行」「最適人数」達成のためにハードルを下げる

理想は純度100%かもしれませんが、そうは言っても人が集まらなければイベントが成立しない、成立しても必要な人数がいなくて参加者満足度が高まらない、という状況もあるでしょう。

そんな場合、対象を実施目的との齟齬が起きない範囲で広げる以外に、ハードルを下げるという方法もあり得ます。例えば以下のようなことです。

・申込の負荷を下げる
(志望動機必要→不要)
・内容自体の負荷を下げる
(ワークや課題提出あり→なし)
・内容の難易度を下げる
・案内をより平易な言葉に
・参加費を下げる、無料にする

ただ、実際にテコ入れするかはよく考えた方がいいかもしれません。すでに申し込んでいる人を失望させるかもしれませんし、そもそも企画自体がうまくターゲットにはまっていない可能性があるので、無理に人を呼んで失望させてしまうよりかは、内容や打ち出し自体を見直して仕切り直した方がいいかもしれません。私は自分の企画に人が集まらない時に、無理には集客しないのはそのためです。

地道なことから始める方がいい場合も

ハードルを下げる前に個別勧誘などの行動量を上げる方がいい場合もあります。一般的に手数をかけると確実に申込は増えます。企画自体への評価を直接人想定ターゲットから聞くこともできるでしょう。まずは関係が構築できていて、ターゲットに合致する人何人かに、直接声がけをする方がいいと思います。

特に初期は、価値が自ずとターゲットに伝わる(起業で言うところの「Problem-Solution-Fit」)までは、ターゲットの生声を聞きながら、ターゲットとコンテンツの整合性とコンテンツや打ち出しの精度を上げていく方が良いでしょう。

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