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企業アルムナイのつくり方-4.前提を整理する

ソニー有志アルムナイを立ち上げて1,000人規模にするなど、複数のコミュニティの立ち上げや運営に17年近く携わってきた実践家が、企業アルムナイのつくり方を詳説する連載企画。

今回は、中身のあり方に影響する、前提条件の整理です。

母集団を分析する

卒業生全体という母集団にどういう人がどれくらいいるかで、その会社のアルムナイのあり方、規模や価値の幅が決まるので、まずはその実態を把握する必要があります。

量:人数はどれくらいいるか

卒業生コミュニティであるアルムナイの規模は、まずは卒業生の人数に依存するので、その量的な側面に注目する必要があります。

  • 従業員数

  • 歴史の長さ

  • 離職率

また、そもそものところで、「卒業生」をどう定義するかも明確にします。

加えて、多くの場合、無職のシニア含めた全ての人が対象となる「社友会」とは別にアルムナイを立ち上げており、その場合は、卒業生であること以外に、「現役のビジネスパーソン」などの制限があることもあるでしょう。

  • 細かな要件:NGの辞め方、在籍期間、雇用形態(正社員、契約社員)、など

  • 範囲:グループ会社の定義や範囲

  • 「現役」の規定

質:価値のもとなる、個々人の要素

卒業生がアルムナイの活動に参画するには、時間を割く価値を感じてもらう必要があります。アルムナイの価値は、参加メンバーとそのつながりや活動の「質」に依るので、その要素についても分析しておきます。

創出される価値は、単純に人的なレベルの高さに限らず、起業家と投資家、採用側と人材など、補完的な要素も重要です。マッチング確率を高めるには、属性の多様性も必要です。

  • 水準:能力(入社時の資質、入社後の成長)、影響度、など

  • 多様性:業界・職種・部門、年代、ポジションなどの幅と補完性

例えばソニーは、長らく優秀な人材を惹きつけ、世界レベルで様々な市場を創出、リードする立場として成長機会を提供してきました。10数万人規模の大所帯でもあり、結果、外で活躍している人の頭数も少なくありません。

また、メーカーなのでハードウェアエンジニア、生産や調達など、IT系や営業系の会社にはない職種も多く、グループ会社もゲーム、音楽、映画、金融、インターネットなど多岐に亘り、多様性の点でも価値に繋がる要素がありました。

情:繋がりに影響する要素

人がいるだけではコミュニティは成立しません。参加者が互いに繋がることで、価値ある成果につながるので、繋がりに影響する要素も把握しておきます。

  • 会社に対する愛着、卒業生同士の一般的な繋がりの強さ

  • マインド:オープンネス、コミュニティマインド

この点でソニーなどは、「ソニーしか受けなかった」「他の会社では得られない機会をもらえた」「前向きな理由で新たなステップに進んだ」という人も多く、アルムナイを立ち上げた時に前向きに参加してくれた人がたくさんいました。

最近は、比較的若いスタートアップでもアルムナイを作るところがあり、オンラインで人とつながることが当たり前の世代が多いなりのやりやすさもあるようです。

参加者の属性とニーズの分類

価値は課題解決からもたらされます。一口に卒業生といっても属性は様々で、ニーズも当然異なります。よって、どんな層がいて、それぞれ何を求めているか整理してみます。

  • 属性の切り口と種類

  • 属性ごとのニーズ

  • 普遍的なニーズ

属性の切り口の例

切り口はいくらでもありますが、参加者価値や自身の目的にとって意味がある切り口を選別します。

  • 専門:エンジニア、人事・採用、企画、コンサルティング、営業、など

  • 属性:経営者、役員・管理職、一般社員、投資家、学術、専門職、等

  • 年代:若手、ミドル、シニア、セカンドキャリア、など

  • 志向:転職(ステップアップ、キャリアチェンジ)、独立、起業、等

マッチングの例

事務局が参加者に一方的に価値を提供し続けるだけでは、コミュニティの参加者は単なる「お客様」になってしまいます。

そうならないよう、参加者同士のマッチングを成立させ、自発的に活動する環境を整えると良いでしょう。

よくあるマッチングの例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 転職したい↔採用したい

  • 発注元を見つけたい(独立、副業)↔委託先を見つけたい

  • 協業相手を見つけたい

  • 投資家を見つけたい↔出資先を見つけたい

  • 創業メンバーを見つけたい↔︎創業に携わりたい

前に述べた属性とこれらニーズを紐付け、マッチングが成立する環境を整え、仕掛ていくと、やがて自発的なアクションが回り始めるようになるでしょう。

普遍的な欲求

あまり小難しいことを考えずとも、世にある活発なコミュニティやイベントを参考に、人が人と繋がろうとする動機や前提も見えてきます。

  • 繋がり:面白い人/役に立つ人と知り合いたい

  • 学び:面白い人/役に立つことを学びたい

  • 情報:役立つ機会について、先行的・優先的に知りたい

見ず知らずの人の集まりに新しく参加する時、人は一般的に「安心できる相手だろうか」「本当に役立つものだろうか」という不安を感じます。

その点アルムナイは、「ソニー出身ならそれなりだろう」「同じ会社の出身なら裏も取れるだろう」という安心感があり、これも、アルムナイというコミュニティのもつ優位性でしょう。まあ、絶対ではないですけどね(笑)

次回:目的や成果に合わせて、ターゲットを定める

これらを整理した上で、自身(会社、個人それぞれ)の目的や得たい成果に照らし合わせ、どのターゲットにどんなアクションをしてもらいたいかを明確にします。そうすると、活動のアウトラインも見えてきます。

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