社内向けプレゼンのつくり方-8.本番までの準備
敢えて社内向けにフォーカスした、プレゼンのつくり方を詳説する試みの第8回は、本番までの準備について。
※ある仕事で、社内プレゼンの作り方をレクチャーするにあたり、頭の整理を兼ねて、記事にまとめています。
ブラッシュアップする
一通りのスライドを完成させたら、相手に伝わりやすくなるように、磨き込む。
文章は、前の項で述べたように、以下の観点でブラッシュアップしてみるといい。
見出しや冒頭文が見やすく、パッと見て頭に入るようレイアウトされているか
表現が簡潔で、分量は適当か
田舎の母親/小学4年生でも分かる、平易で明快な言葉で書かれているか(但し、相手に応じて、効果的に伝わるように、漢語・英語や専門用語とバランスも意識する)
論理構成が明快で、思考の自然な流れに沿っていて、納得感があるか
定量・定性の事実や推論などが、客観的で正確な材料から構成されているか
数字や固有名詞などを用い、人による解釈の相違が生じない、客観的な表現になっているか
図表は情報やデザインが絞られていて、見やすく簡潔か
図表はメッセージを裏付けるものになっているか
その際、聞き手の視点でチェックすることを意識する。
ターゲットから予想される質問に答えられるか
立場や前提知識などが異なる人にも理解可能か
そういう人からの質問にも答えられる内容になっているか
余計な疑問の発生を回避できるようにできないか
ブラッシュアップしやすくする方法
以上のような視点を意識しても、スライドを眺めているだけでは、なかなか穴は見つけられない。自分で作り上げ、長い時間目にしているので、見慣れてしまっているからだ。
よって、目や頭を強制的に切り替えるいくつかの方法を試して、更に伝わりやすいものにする。
通しで話してみる
実際のプレゼンのように、一通り話してみると、改善点に自分で気づくことが多い。
話の流れが悪い、冗長
話とスライドが一致してない
表現が分かりにくい
要素が抜けている
何回か話した上で、スクリプトも書いて、視覚的に、論理や表現をチェックしてもいい。
ZoomやTeamsなどのオンライン会議ツールで、自分のプレゼンを録画して見返すのも効果的だ。
これも更に文字起こしして、視覚的にチェックすると、さらに改善点が見えてくる。
想定質問をつくる
株主総会の準備のように、さまざまなキーパーソンや、あるいは、全く前提知識のない人に成り切ってみて、その人が質問するであろうことを、文章に書き出してみて、その答えを書いてみるのもいい。
そもそもの関心から核となる質問をリストアップした上で、資料の1枚1枚に、読み手視点で細かくツッコミを入れていく。
目的は、質問をたくさん出すことではなく、聞き手の頭にすんなり入るようにすることなので、以下の観点でスライドや説明自体をブラッシュアップする。
質問に対して、回答できる材料があるか。
その材料が、スライドに分かりやすく盛り込まれているか。
そもそも、そのような疑問を生じさせないようにスライドや説明を工夫できないか。
もちろん、全ての質問に答えられるように情報を盛り込むと、資料が煩雑になるので、質問自体が本質的なものか、瑣末なものか、きちんと分別した上で、必要と判断したもののみ、スライドや説明に反映する。
フィードバックをもらう
以上は自分でできるものだが、どう工夫したところで、自分ひとりの視点や思考の切り替えには限界がある。
よって、他人にレビューしてもらい、改善点を教えてもらう。
的確なフィードバックをするには、案件概要やキーパーソンの関心などの前提がわかっている人でなければならないので、現実的な協力者は、上司や、同じ案件に携わるメンバーに限られるだろう。
何の説明もせず、先入観なく、感じたことを教えてもらうのもいいかもしれないが、前提知識やキーパーソンの関心などを改めてインプットした上で、どんな観点で、どんな点を、どのようにフィードバックしてもらいたいか、伝えた上でレビューしてもらう方が、効果的だろう。
事前説明と根回し
プレゼンはあくまで目的を達成するためにやるので、意思決定者たるキーパーソンがYesと言いやすくする地ならしや、聞き手の面々から本筋と関係ない質問が出て、議論が混乱するようなリスクの回避は、しておく方がいい。
ターゲットにしっくりこない内容や構成のまま、資料を磨き込んでも無駄になる。少し粗くても、ターゲットの関心や感覚に合うプレゼンにする方が、目標達成という観点では有効なことが多い。
いかにもサラリーマン的ではあるし、こういうことを良しとしないといわれる会社もあるが、大半の普通の会社では、根回しが必要で、案外効果的だったりする。
つくる前の方針立案のための情報収集段階で、関心などはある程度把握しているはずではあるが、時間がたてば、状況が変わっているかもしれない。
それ以上に、作成者も聞き手も、最初のヒアリングの時と比べて、前提知識もあるし、内容も具体的になっているので、説明や意見がより的確になる。
なので、直前に改めて事前説明をして、感触を探りつつ、内容も理解しておいてもらうことが有効なのだ。
資料は、相手が見慣れていて、好みに合っていて、頭に入りやすいか
説明に対する感触はどうか
どこがなぜ引っかかり、どんな質問が出るか
キーパーソンが他の参加者を説得するシナリオ(他の参加者につっこまれそうなところをどう想定し、どう備えようとしているか)
事前説明は、キーパーソンに対してできれば一番いいが、それができなくても、スタッフにインプットして、感触を探ったり、改善点を教えてもらうようにする。
フィードバックの内容によっては、スライドをゼロから構成し直すことだって、検討した方がいい。
ロジ確認
これもまた、つくり始める前に確認したことを、再度確認する。
忙しく我の強い人々を調整する会議であるほど、色々な変更が直前まで生じるので、最初に聞いたことから変更になっていることも少なくない。また、会議の開催が迫って、会議室やその設備など、具体的になることも多い。
以下で、特に資料のつくり方やプレゼンに影響する変更がないか、よく確認しておこう。
持ち時間
資料の枚数、構成、形式の指定
参加メンバーとその役割・関係
プレゼン後の資料の使われ方
実施形態(対面、オンライン)
配布資料の有無・形式
視聴環境
資料やプレゼンの修正が必要な変更があれば、それも対応する。
練習
上記により、いよいよ最終版が出来上がったら、あとは本番に向けて練習する。
通し練習をして、時間通り収まるか、ペース配分を確かめるところから、話す内容をこなれさせるまで、効果的にターゲットに伝わるためのブラッシュアップを重ねる。
前に述べたように、スクリプトを書いたり、録画して見返したり、それをさらに文字起こししたりすると、さらにブラッシュアップの精度が上がる。
人に聞いてもらい、フィードバックもらうのもいいだろう。
気持ちの余裕を持ち、堂々と話し、受け答えできるようになることも、説得力を増す点では、効果がある。
話し方のポイント
この内容は、元アナウンサーでスピーチコンサルタントの阿部恵さんに教えてもらったノウハウで、私も意識して実践している内容です。
母音と語尾ををはっきり発音
一文を短く
トーンを高く
表情、アイコンタクト、身振り手振りを意識
トーンの目安は「ドレミファソ」の「ソ」の音といいます。
通常話をする声の高さでは、ボソボソと暗く聞こえるため、感覚的にいうと、普段より2音階くらい高くします。特に男性は声が低いので、強く意識する方がいいです。
準備と練習を重ねたら、あとは、練習の通り、本番でプレゼンをします。
次回、最終回は、プレゼン後のフォローアップと改善について。
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