区分所有法 第70条(団地内の建物の一括建替え決議)

←区分所有法第69条 区分所有法第71条→

条文

(団地内の建物の一括建替え決議)
第70条 団地内建物の全部が専有部分のある建物であり、かつ、当該団地内建物の敷地(団地内建物が所在する土地及び第5条第1項の規定により団地内建物の敷地とされた土地をいい、これに関する権利を含む。以下この項及び次項において同じ。)が当該団地内建物の区分所有者の共有に属する場合において、当該団地内建物について第68条第1項(第一号を除く。)の規定により第66条において準用する第30条第1項の規約が定められているときは、第62条第1項の規定にかかわらず、当該団地内建物の敷地の共有者である当該団地内建物の区分所有者で構成される第65条に規定する団体又は団地管理組合法人の集会において、当該団地内建物の区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、当該団地内建物につき一括して、その全部を取り壊し、かつ、当該団地内建物の敷地(これに関する権利を除く。以下この項において同じ。)若しくはその一部の土地又は当該団地内建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地(第3項第一号においてこれらの土地を「再建団地内敷地」という。)に新たに建物を建築する旨の決議(以下この条において「一括建替え決議」という。)をすることができる。ただし、当該集会において、当該各団地内建物ごとに、それぞれその区分所有者の三分の二以上の者であつて第38条に規定する議決権の合計の三分の二以上の議決権を有するものがその一括建替え決議に賛成した場合でなければならない。
2 前条第2項の規定は、前項本文の各区分所有者の議決権について準用する。この場合において、前条第2項中「当該特定建物の所在する土地(これに関する権利を含む。)」とあるのは、「当該団地内建物の敷地」と読み替えるものとする。
3 団地内建物の一括建替え決議においては、次の事項を定めなければならない。
一 再建団地内敷地の一体的な利用についての計画の概要
二 新たに建築する建物(以下この項において「再建団地内建物」という。)の設計の概要
三 団地内建物の全部の取壊し及び再建団地内建物の建築に要する費用の概算額
四 前号に規定する費用の分担に関する事項
五 再建団地内建物の区分所有権の帰属に関する事項
4 第62条第3項から第8項まで、第63条及び第64条の規定は、団地内建物の一括建替え決議について準用する。この場合において、第62条第3項中「前項第三号及び第四号」とあるのは「第70条第3項第四号及び第五号」と、同条第4項中「第1項に規定する」とあるのは「第70条第1項に規定する」と、「第35条第1項」とあるのは「第66条において準用する第35条第1項」と、「規約」とあるのは「第66条において準用する第30条第1項の規約」と、同条第5項中「第35条第1項」とあるのは「第66条において準用する第35条第1項」と、同条第7項中「第35条第1項から第4項まで及び第36条」とあるのは「第66条において準用する第35条第1項から第4項まで及び第36条」と、「第35条第1項ただし書」とあるのは「第66条において準用する第35条第1項ただし書」と、同条第8項中「前条第6項」とあるのは「第61条第6項」と読み替えるものとする。

解説

 前条の建替えは各建物ごとに決定し、団地内建物をまとめて建替えを行うには、それぞれで建替えを決議(建替えへの同意)をして、一括建替え承認決議において決議する方法がある。一括建替え承認決議においては、建替え決議をした専有部分のある建物の区分所有者は全員が同意したものとみなされる。そのため全ての建物が専有部分のある建物の場合、建替え決議、建替え承認決議の二段階を踏むのは非効率的である。

 戸建てを含むことのできる団地において、戸建てまで一括建替え決議により建替えることができるとすると、個人所有の建物の権利を侵害することになりかねない。そのため区分所有法第70条の一括建替えができる要件が定められている。

一括建替え決議を行うための前提

一括建替え決議を行うためには
○一団地である。
○団地内の建物がすべて専有部分のある建物である。
○一団地内の土地が団地内建物の区分所有者の共有である。
○団地内の全ての建物が団地管理規約で管理することが定められている。

 上記の前提を踏まえて、団地集会を2ヶ月以上前に招集し、1ヶ月以上前に説明会を開催した上で、集会で全ての建物の区分所有者数と議決権数①のそれぞれ5分の4以上の賛成とその決議において各棟ごとに区分所有者数と議決権数②が3分の2以上をでなければならない。この決議における議決権数は、団地の議決権①は敷地の持分割合を、各棟ごとの議決権②は棟の共用部分の持分割合を用いる。同じ決議の中で扱う議決権の数が異なることに注意。

団地一括建替決議

一括建替え決議後

 一括建替え決議後は、ほぼ棟の建替事業と同様に進む(準用第63条)。

 決議後にその集会の招集者は賛成しなかった区分所有者に建替事業に参加する意思があるのかどうかを回答すべき書面にて催告。催告を受けた区分所有者は2ヶ月以内に回答。その催告に参加しないと回答した人、回答しなかった人は建替事業に参加しない人とみなし、決議賛成者、参加すると回答した人、買受指定者は建替事業に参加しない人へ売渡請求ができる。この売渡請求は棟を超えて行うことができる。A棟の団地一括建替賛成者はC棟の賛成者以外の者の区分所有権等に対して売渡請求ができる。

 決議後2年以内に建替工事に着手しない場合は売渡請求を受けたものは、代金を支払い、自分へ売り渡すように再売渡請求ができる。

参照条文等

区分所有法 第5条(規約による建物の敷地)
 区分所有者が建物及び建物が所在する土地と一体として管理又は使用をする庭、通路その他の土地は、規約により建物の敷地とすることができる。
区分所有法 第38条(議決権)
 各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、第14条に定める割合による。
区分所有法 第14条(共用部分の持分の割合)
 各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。
2 前項の場合において、一部共用部分(附属の建物であるものを除く。)で床面積を有するものがあるときは、その一部共用部分の床面積は、これを共用すべき各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分して、それぞれその区分所有者の専有部分の床面積に算入するものとする。
3 前二項の床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による。
4 前三項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
区分所有法 第69条(団地内の建物の建替え承認決議)
準用後

2 前項の集会における各団地建物所有者の議決権は、第66条において準用する第38条の規定にかかわらず、第66条において準用する第30条第1項の規約に別段の定めがある場合であつても、当該団地内建物の敷地の持分の割合によるものとする。
区分所有法 第62条(建替え決議)
準用後

3 第70条第3項第四号及び第五号の事項は、各区分所有者の衡平を害しないように定めなければならない。
4 第70条第1項に規定する決議事項を会議の目的とする集会を招集するときは、第66条において準用する第35条第1項の通知は、同項の規定にかかわらず、当該集会の会日より少なくとも二月前に発しなければならない。ただし、この期間は、第66条において準用する第30条第1項の規約で伸長することができる。
5 前項に規定する場合において、第66条において準用する第35条第1項の通知をするときは、同条第五項に規定する議案の要領のほか、次の事項をも通知しなければならない。
一 建替えを必要とする理由
二 建物の建替えをしないとした場合における当該建物の効用の維持又は回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む。)をするのに要する費用の額及びその内訳
三 建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容
四 建物につき修繕積立金として積み立てられている金額
6 第四項の集会を招集した者は、当該集会の会日より少なくとも一月前までに、当該招集の際に通知すべき事項について区分所有者に対し説明を行うための説明会を開催しなければならない。
7 第66条において準用する第35条第1項から第4項まで及び第36条の規定は、前項の説明会の開催について準用する。この場合において、第66条において準用する第35条第1項ただし書中「伸縮する」とあるのは、「伸長する」と読み替えるものとする。
8 第61条第6項の規定は、建替え決議をした集会の議事録について準用する。
区分所有法 第63条(区分所有権等の売渡し請求等)
準用後

 一括建替え決議があつたときは、集会を招集した者は、遅滞なく、一括建替え決議に賛成しなかつた区分所有者(その承継人を含む。)に対し、建替え決議の内容により建替えに参加するか否かを回答すべき旨を書面で催告しなければならない。
2 前項に規定する区分所有者は、同項の規定による催告を受けた日から二月以内に回答しなければならない。
3 前項の期間内に回答しなかつた第一項に規定する区分所有者は、建替えに参加しない旨を回答したものとみなす。
4 第2項の期間が経過したときは、一括建替え決議に賛成した各区分所有者若しくは一括建替え決議の内容により建替えに参加する旨を回答した各区分所有者(これらの者の承継人を含む。)又はこれらの者の全員の合意により区分所有権及び敷地利用権を買い受けることができる者として指定された者(以下「買受指定者」という。)は、同項の期間の満了の日から二月以内に、建替えに参加しない旨を回答した区分所有者(その承継人を含む。)に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。一括建替え決議があつた後にこの区分所有者から敷地利用権のみを取得した者(その承継人を含む。)の敷地利用権についても、同様とする。
5 前項の規定による請求があつた場合において、建替えに参加しない旨を回答した区分所有者が建物の明渡しによりその生活上著しい困難を生ずるおそれがあり、かつ、建替え決議の遂行に甚だしい影響を及ぼさないものと認めるべき顕著な事由があるときは、裁判所は、その者の請求により、代金の支払又は提供の日から一年を超えない範囲内において、建物の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。
6 一括建替え決議の日から二年以内に建物の取壊しの工事に着手しない場合には、第4項の規定により区分所有権又は敷地利用権を売り渡した者は、この期間の満了の日から六月以内に、買主が支払つた代金に相当する金銭をその区分所有権又は敷地利用権を現在有する者に提供して、これらの権利を売り渡すべきことを請求することができる。ただし、建物の取壊しの工事に着手しなかつたことにつき正当な理由があるときは、この限りでない。
7 前項本文の規定は、同項ただし書に規定する場合において、建物の取壊しの工事の着手を妨げる理由がなくなつた日から六月以内にその着手をしないときに準用する。この場合において、同項本文中「この期間の満了の日から六月以内に」とあるのは、「建物の取壊しの工事の着手を妨げる理由がなくなつたことを知つた日から六月又はその理由がなくなつた日から二年のいずれか早い時期までに」と読み替えるものとする。
区分所有法 第64条(建替えに関する合意)
準用後

 一括建替え決議に賛成した各区分所有者、一括建替え決議の内容により建替えに参加する旨を回答した各区分所有者及び区分所有権又は敷地利用権を買い受けた各買受指定者(これらの者の承継人を含む。)は、一括建替え決議の内容により建替えを行う旨の合意をしたものとみなす。









この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?