区分所有法 第69条(団地内の建物の建替え承認決議)

←区分所有法第68条 区分所有法第70条→

条文

(団地内の建物の建替え承認決議)
第69条 一団地内にある数棟の建物(以下この条及び次条において「団地内建物」という。)の全部又は一部が専有部分のある建物であり、かつ、その団地内の特定の建物(以下この条において「特定建物」という。)の所在する土地(これに関する権利を含む。)が当該団地内建物の第65条に規定する団地建物所有者(以下この条において単に「団地建物所有者」という。)の共有に属する場合においては、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める要件に該当する場合であつて当該土地(これに関する権利を含む。)の共有者である当該団地内建物の団地建物所有者で構成される同条に規定する団体又は団地管理組合法人の集会において議決権の四分の三以上の多数による承認の決議(以下「建替え承認決議」という。)を得たときは、当該特定建物の団地建物所有者は、当該特定建物を取り壊し、かつ、当該土地又はこれと一体として管理若しくは使用をする団地内の土地(当該団地内建物の団地建物所有者の共有に属するものに限る。)に新たに建物を建築することができる。
一 当該特定建物が専有部分のある建物である場合 その建替え決議又はその区分所有者の全員の同意があること。
二 当該特定建物が専有部分のある建物以外の建物である場合 その所有者の同意があること。
2 前項の集会における各団地建物所有者の議決権は、第66条において準用する第38条の規定にかかわらず、第66条において準用する第30条第1項の規約に別段の定めがある場合であつても、当該特定建物の所在する土地(これに関する権利を含む。)の持分の割合によるものとする。
3 第1項各号に定める要件に該当する場合における当該特定建物の団地建物所有者は、建替え承認決議においては、いずれもこれに賛成する旨の議決権の行使をしたものとみなす。ただし、同項第一号に規定する場合において、当該特定建物の区分所有者が団地内建物のうち当該特定建物以外の建物の敷地利用権に基づいて有する議決権の行使については、この限りでない。
4 第1項の集会を招集するときは、第66条において準用する第35条第1項の通知は、同項の規定にかかわらず、当該集会の会日より少なくとも二月前に、同条第5項に規定する議案の要領のほか、新たに建築する建物の設計の概要(当該建物の当該団地内における位置を含む。)をも示して発しなければならない。ただし、この期間は、第66条において準用する第30条第1項の規約で伸長することができる。
5 第1項の場合において、建替え承認決議に係る建替えが当該特定建物以外の建物(以下この項において「当該他の建物」という。)の建替えに特別の影響を及ぼすべきときは、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める者が当該建替え承認決議に賛成しているときに限り、当該特定建物の建替えをすることができる。
一 当該他の建物が専有部分のある建物である場合 第1項の集会において当該他の建物の区分所有者全員の議決権の四分の三以上の議決権を有する区分所有者
二 当該他の建物が専有部分のある建物以外の建物である場合 当該他の建物の所有者
6 第1項の場合において、当該特定建物が二以上あるときは、当該二以上の特定建物の団地建物所有者は、各特定建物の団地建物所有者の合意により、当該二以上の特定建物の建替えについて一括して建替え承認決議に付することができる。
7 前項の場合において、当該特定建物が専有部分のある建物であるときは、当該特定建物の建替えを会議の目的とする第62条第1項の集会において、当該特定建物の区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、当該二以上の特定建物の建替えについて一括して建替え承認決議に付する旨の決議をすることができる。この場合において、その決議があつたときは、当該特定建物の団地建物所有者(区分所有者に限る。)の前項に規定する合意があつたものとみなす。

解説

 建物を建替える時は、土地の権利者の承諾が必要である。団地においても同様である。団地において土地を共有せずに、一棟の専有部分のある建物と土地の所有者がその区分所有者のみである時は、第62条の建替え決議だけで建替えができる。団地を構成する戸建て等の建物の建替えも、その土地がその戸建ての所有者のみの所有である時は団地の承認決議は不要である。この条は、複数の建物所有者でその所在する土地を共有している場合の建替えの話になる。

全部又は一部が専有部分のある建物

 土地を複数の建物所有者で共有していなければならないが、「全部又は一部が専有部分のある建物」で土地を共有している時に使える条文である。すなわち全てが戸建てなどの専有部分のない建物が所在する土地をその建物所有者で共有している場合は、この条文は使えず、その建替えには、民法に従い土地を共有している全員の合意が必要となる。あくまでも団地内の専有部分のある建物の区分所有者を共有者として含む土地に立っている団地内建物の建替えに関する規定である。

建替え承認決議に至るまで

 このように、建替え承認決議とは、土地所有者によるその土地上の建物の建替えを承認するかしないかに対して、民法では土地所有者全員の同意のところ、区分所有法により多数決の原理を持ち込んだものである。建替え承認決議の前には建物を建替えたいという意思表示が必要である。建て替えたい建物が専有部分のある建物の場合は、棟の建替え決議かその区分所有者の建替えに対する全員の同意が前提、専有部分のない戸建てなどはその所有者の建替えに対する同意が前提である。

 その建て替えたいという意思を受けて、土地所有者である団地管理組合が建替えの承認のための決議を出すが、この決議は団地の管理とは異なり、あくまでも土地の所有者としての行為であるため、その承認決議における議決権は団地管理規約で別段に定まっている議決権数ではなく、その土地の持分の割合になる。民法では土地所有者全員の同意であるが、区分所有法では団地集会において土地の持分割合の4分の3以上の賛成による決議で建替えの承認決議が行える。ただし、専有部分のある建物の建替えの承認決議においては、その建替え決議に反対した区分所有者は建替え承認決議には賛成したものとしてみなされる。これは建替え決議に賛成しなかったらその専有部分と敷地の権利は売渡請求の対象であり、売渡請求の買受者は建替え事業に賛成する立場になるためであろう。建替え決議に賛成しなかった人が所有する、建替え対象以外の建物に関する土地の権利による議決権行使では、建替え承認決議で反対しても構わない。

建替え承認決議の集会

 建替え承認決議の集会は、2ヶ月以上前に招集通知を出す。その招集通知には議案の要領とともに新たに建築する建物の設計の概要を示さなければならない。この2ヶ月の期間は規約により伸長することができる。建替え決議とは異なり、説明会は不要である。

 また、その建替えが建替えない他の建物に特別な影響がある場合は、建替え承認決議において、特別な影響のある建物が専有部分のある建物の場合は、その区分所有者の4分の3以上が建替え承認決議に賛成し、特別な影響のある建物が専有部分のない建物の場合はその建物所有者が建替え承認決議に賛成しなければ、決議できない。特別な影響とは日照や通風などのことではなく、新たな建物の使用する容積率によって、他の建て替えない建物の将来使える容積率が減ったりすることである。

二以上の建物の建替え承認決議

 団地内の建物の建替えにおいて、二以上の建物の建替え承認決議を同時に受けたいときはそれらの建物の所有者の合意があれば一括して建替え承認決議が行える。建替える建物が専有部分のある建物の場合、建替え決議の行われる集会において、一括して建替え承認決議に付す決議(区分所有者数及び議決権数5分の4以上の賛成)を行える。

画像1


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?