マンション標準管理規約 平成28年改正点④専有部分の修繕、共用部分の保存行為、開口部の改良工事

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 専有部分の修繕(第17条)は、修繕希望の申請を理事長に出し、理事会の決議を受けて承認不承認を理事長が行う流れだが、その理事会の決議を行う際の参考とすべき資料として、標準管理規約別添2など、参照とすべき考え方が標準管理規約改正で多く追加されている。また、承認は不要だが騒音や出入りする業者など他の住戸の生活に影響が出そうな工事の届出制も追加された。

 共用部分の管理は管理組合が行うのが原則であるが、専用使用部分の日常生活にかかる清掃等の保存行為はその専有部分の区分所有者が行うと「保存行為」が明記された。また、区分所有者が前記以外の共用部分の保存行為を行いたい時は第17条を準用する形の申請で行えるようになった。

 窓ガラスや玄関扉の改良を管理組合が速やかに行えない時は区分所有者で行うことが出来るが、その改良工事の申請についても、改正前標準管理規約だと細則に従うが、改正後は第17条の申請を準用している。

 このように第17条、第21条、第22条ともに申請方法は第17条を準用しており、すべて理事会の決議により承認不承認を決定し、理事長が伝える形となっている。第22条だけの細則を定めている組合は、第17条、第21条、第22条の申請を合わせた細則を作成する必要がある。

標準管理規約第17条(専有部分の修繕等)

(専有部分の修繕等)
第17条 区分所有者は、その専有部分について、修繕、模様替え又は建物に定着する物件の取付け若しくは取替え(以下「修繕等」という。)であって共用部分又は他の専有部分に影響を与えるおそれのあるものを行おうとするときは、あらかじめ、理事長(第35条に定める理事長をいう。以下同じ。)にその旨を申請し、書面による承認を受けなければならない。
2 前項の場合において、区分所有者は、設計図、仕様書及び工程表を添付した申請書を理事長に提出しなければならない。
3 理事長は、第1項の規定による申請について、理事会(第51条に定める理事会をいう。以下同じ。)の決議により、その承認又は不承認を決定しなければならない。
4 第1項の承認があったときは、区分所有者は、承認の範囲内において、 専有部分の修繕等に係る共用部分の工事を行うことができる。
5 理事長又はその指定を受けた者は、本条の施行に必要な範囲内において、修繕等の箇所に立ち入り、必要な調査を行うことができる。この場合において、区分所有者は、正当な理由がなければこれを拒否してはならない。
6 第1項の承認を受けた修繕等の工事後に、当該工事により共用部分又は他の専有部分に影響が生じた場合は、当該工事を発注した区分所有者の責任と負担により必要な措置をとらなければならない。
7 区分所有者は、第1項の承認を要しない修繕等のうち、工事業者の立入り、工事の資機材の搬入、工事の騒音、振動、臭気等工事の実施中における共用部分又は他の専有部分への影響について管理組合が事前に把握する必要があるものを行おうとするときは、あらかじめ、理事長にその旨を届け出なければならない。

コメント第17条関係

② 修繕等のうち、第1項の承認を必要とするものは、「共用部分又は他の専有部分に影響を与えるおそれのある」ものである。具体例としては、床のフローリング、ユニットバスの設置、主要構造部に直接取り付けるエアコンの設置、配管(配線)の枝管(枝線)の取付け・取替え、間取りの変更等がある。その範囲、承認を必要とする理由及び審査すべき点については、別添2に考え方を示している。
⑦ 工事の躯体に与える影響、防火、防音等の影響、耐力計算上の問題、他の住戸への影響等を考慮して、承認するかどうか判断する。考え方については別添2を参照のこと。なお、承認の判断に当たっては、マンションの高経年化に伴い専有部分の修繕等の必要性が増加することも踏まえ、過度な規制とならないようにすること、修繕技術の向上により、新たな工事手法に係る承認申請がされた場合にも、別添2に示された考え方を参考にすればよいことに留意する。なお、工事内容が上下左右の区分所有者に対して著しい影響を与えるおそれがあると判断される場合には、当該区分所有者の同意を必要とすることも考えられる。
⑧ 承認の申請先等は理事長であるが、承認、不承認の判断はあくまで理事会の決議によるものである(第54条第1項第五号参照)。
⑨ なお、老朽化が進む等、近い将来に、建替え若しくはマンション敷地売 却(以下「建替え等」という。)が想定されるマンションにおいて、高額な費用をかけて専有部分の大規模な修繕等を行う区分所有者がいた場合には、その工事から数年後に建替え等の検討が始まると、当該区分所有者にとって二重の出費ともなりかねないほか、合意形成に支障が生ずる可能性がある。このため、近い将来に建替え等の検討の可能性があるマンションにおいては、修繕等について理事長の承認を求めてくる区分所有者に対して、近い将来に建替え等が検討される可能性がある旨の注意喚起を行うことが望ましい。なお、注意喚起があった上で、実際に修繕等を行うか否かはあくまで当該区分所有者の判断である。
⑩ 第5項の立入り、調査に関しては、施工状況を確認する必要があるものについて、工事中の現場で管理組合の理事等(又は組合から依頼を受けた技術者)が立ち会って確認することが考えられる。人手や工期などにより実際に立ち会うことが難しい場合には、抜き打ちで検査することをアナウンスしたり、工事業者に写真等の記録を取らせ報告させたりすることが考えられる。施工状況を確認する場合、図面の読み方や工事の進め方を知っている外部の専門家の協力が必要になる。確認が必要なものとしては、例えば、次のようなものが考えられる。
 ・全面リフォームを行う工事について、壁、床等をはがして耐力壁を撤去しないか、工事対象を確認する。
 ・躯体コンクリートにスリーブをあける際やアンカーを打ち込む際に、 鉄筋を探査してから穴をあけているか、手順を確認する。
⑪ 第6項は、第1項の承認が、修繕等の工事の結果、共用部分又は他の専有部分に生じた事後的な影響について、当該工事を発注した区分所有者の責任や負担を免責するものではないことを確認的に定める趣旨である。
 なお、工事を発注する場合には、工事業者と協議した上で、契約書に事後的な影響が生じた場合の責任の所在と補償等についても明記することが適切である。
 また、管理組合等が専有部分の修繕の記録を保管しておくため、工事業者から工事完了報告書等を提出させることも考えられる。
⑫ 第7項は、第1項の承認を要しない修繕等であっても、工事の実施期間中において、共用部分又は他の専有部分に対し、工事業者の立入り、工事 の資機材の搬入、工事の騒音、振動、臭気等の影響が想定されることから、管理組合が事前に把握する必要があるため、事前に届出を求めるものである。なお、第1項の場合と異なり、工事の過程における影響を問題とするものであり、工事の結果による事後的な影響を問題とする趣旨ではないことに留意する。また、他の居住者等に影響を与えることが考えられる ため、上記届出に加えて工事内容等を掲示する等の方法により、他の区分 所有者等へ周知を図ることが適当である。
 なお、上記届出を要する工事の範囲等の考え方は、別添2を参照のこと。
⑬ 本条の承認を受けないで、専有部分の修繕等の工事を行った場合には、第67条の規定により、理事長は、その是正等のため必要な勧告又は指示若しくは警告を行うか、その差止め、排除又は原状回復のための必要な措置等をとることができる。第5項の立入り、調査の結果、理事長に申請又は届出を行った内容と異なる内容の工事が行われている等の事実が確認された場合も、同様である。
⑭ 本条の規定のほか、具体的な手続、区分所有者の遵守すべき事項等詳細 については、使用細則に別途定めるものとする。その際、上述した別添2の内容についても、各マンションの実情に応じて、参考にするとともに、 必要に応じて、専門的知識を有する者の意見を聴くことが望ましい。

標準管理規約 第21条(敷地及び共用部分等の管理)

(敷地及び共用部分等の管理)
第21条 敷地及び共用部分等の管理については、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。ただし、バルコニー等の保存行為(区分所有法第18条第1項ただし書の「保存行為」をいう。以下同じ。)のうち、通常の使用に伴うものについては、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければならない。
2 専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行うことができる。
3 区分所有者は、第1項ただし書の場合又はあらかじめ理事長に申請して書面による承認を受けた場合を除き、敷地及び共用部分等の保存行為を行うことができない。ただし、専有部分の使用に支障が生じている場合に、当該専有部分を所有する区分所有者が行う保存行為の実施が、緊急を要するものであるときは、この限りでない。
4 前項の申請及び承認の手続については、第17条第2項、第3項、第5項及び第6項の規定を準用する。ただし、同条第5項中「修繕等」とあるのは「保存行為」と、同条第6項中「第1項の承認を受けた修繕等の工事後に、当該工事」とあるのは「第21条第3項の承認を受けた保存行為後に、当該保存行為」と読み替えるものとする。
5 第3項の規定に違反して保存行為を行った場合には、当該保存行為に要した費用は、当該保存行為を行った区分所有者が負担する。
6 理事長は、災害等の緊急時においては、総会又は理事会の決議によらずに、敷地及び共用部分等の必要な保存行為を行うことができる。

コメント第21条関係

① 第1項及び第3項は、区分所有法第18条第1項ただし書において、保存行為は、各共有者がすることができると定められていることに対し、同条第2項に基づき、規約で別段の定めをするものである。
⑤ バルコニー等の経年劣化への対応については、③のとおり管理組合がその責任と負担において、計画修繕として行うものである。
 ただし、バルコニー等の劣化であっても、長期修繕計画作成ガイドラインにおいて管理組合が行うものとされている修繕等の周期と比べ短い期間で発生したものであり、かつ、他のバルコニー等と比較して劣化の程度が顕著である場合には、特段の事情がない限りは、当該バルコニー等の専用使用権を有する者の「通常の使用に伴う」ものとして、その責任と負担において保存行為を行うものとする。なお、この場合であっても、結果として管理組合による計画修繕の中で劣化が解消されるのであれば、管理組合の負担で行われることとなる。
⑥ バルコニー等の破損が第三者による犯罪行為等によることが明らかである場合の保存行為の実施については、通常の使用に伴わないものであるため、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。ただし、同居人や賃借人等による破損については、「通常の使用に伴う」ものとして、当該バルコニー等の専用使用権を有する者がその責任と負担において保存行為を行うものとする。
⑨ 第3項ただし書は、例えば、台風等で住戸の窓ガラスが割れた場合に、専有部分への雨の吹き込みを防ぐため、割れたものと同様の仕様の窓ガラスに張り替えるというようなケースが該当する。また、第5項は、区分所有法第19条に基づき、規約で別段の定めをするものである。
 承認の申請先等は理事長であるが、承認、不承認の判断はあくまで理事会の決議によるものである(第54条第1項第五号参照)。
⑩ 区分所有法第26条第1項では、敷地及び共用部分等の保存行為の実施が管理者(本標準管理規約では理事長)の権限として定められている。第6項では、災害等の緊急時における必要な保存行為について、理事長が単独で判断し実施できることを定めるものである。災害等の緊急時における必要な保存行為としては、共用部分等を維持するための緊急を要する行為又は共用部分等の損傷・滅失を防止して現状の維持を図るための比較的軽度の行為が該当する。後者の例としては、給水管・排水管の補修、共用部分等の被災箇所の点検、破損箇所の小修繕等が挙げられる。この場合に必要な支出については、第58条第6項及びコメント第58条関係⑤を参照のこと。
⑪ 災害等の緊急時において、保存行為を超える応急的な修繕行為の実施が必要であるが、総会の開催が困難である場合には、理事会においてその実施を決定することができることとしている(第54条第1項第十号及びコメント第54条関係①を参照。)。しかし、大規模な災害や突発的な被災では、理事会の開催も困難な場合があることから、そのような場合には、保存行為に限らず、応急的な修繕行為の実施まで理事長単独で判断し実施することができる旨を、規約において定めることも考えられる。更に、理事長をはじめとする役員が対応できない事態に備え、あらかじめ定められた方法により選任された区分所有者等の判断により保存行為や応急的な修繕行為を実施することができる旨を、規約において定めることも考えられる。なお、理事長等が単独で判断し実施することができる保存行為や応急的な修繕行為に要する費用の限度額について、予め定めておくことも考えられる。
⑫ 第6項の災害等の緊急時における必要な保存行為の実施のほか、平時における専用使用権のない敷地又は共用部分等の保存行為について、理事会の承認を得て理事長が行えるとすることや、少額の保存行為であれば理事長に一任することを、規約において定めることも考えられる。その場合、理事長単独で判断し実施することができる保存行為に要する費用の限度額について、予め定めておくことも考えられる。

標準管理規約 第22条(窓ガラス等の改良)

(窓ガラス等の改良)
第22条 共用部分のうち各住戸に附属する窓枠、窓ガラス、玄関扉その他の開口部に係る改良工事であって、防犯、防音又は断熱等の住宅の性能の向上等に資するものについては、管理組合がその責任と負担において、計画修繕としてこれを実施するものとする。
2 区分所有者は、管理組合が前項の工事を速やかに実施できない場合には、あらかじめ理事長に申請して書面による承認を受けることにより、当該工事を当該区分所有者の責任と負担において実施することができる。
3 前項の申請及び承認の手続については、第17条第2項、第3項、第5項及び第6項の規定を準用する。ただし、同条第5項中「修繕等」とあるのは「第22条第2項の工事」と、同条第6項中「第1項の承認を受けた修繕等の工事」とあるのは「第22条第2項の承認を受けた工事」と読み替えるものとする。

コメント第22条関係

④ 第2項は、開口部の改良工事については、治安上の問題を踏まえた防犯性能の向上や、結露から発生したカビやダニによるいわゆるシックハウス問題を改善するための断熱性の向上等、一棟全戸ではなく一部の住戸において緊急かつ重大な必要性が生じる場合もあり得ることに鑑み、計画修繕によりただちに開口部の改良を行うことが困難な場合には、専有部分の修繕等における手続と同様の手続により、各区分所有者の責任と負担において工事を行うことができるよう規定したものである。
 承認の申請先等は理事長であるが、承認、不承認の判断はあくまで理事会の決議によるものである(第54条第1項第五号参照)
⑤ また、第2項及び第3項は、マンションでは通常個々の専有部分に係る開口部(共用部分)が形状や材質において大きく異なるような状況は考えられないことから、当該開口部の改良工事についてもその方法や材質・形状等に問題のないものは、施工の都度総会の決議を求めるまでもなく、専有部分の修繕等における手続と同様の手続により、各区分所有者の責任と負担において実施することを可能とする趣旨である。承認申請の対象範囲、審査する内容等の考え方については、別添2を参照されたい。
⑦ 本条の規定のほか、具体的な工事内容、区分所有者の遵守すべき事項等詳細については、細則に別途定めるものとする。その際、上述の別添2の内容についても、各マンションの実情に応じて、参考にするとともに、必要に応じて、専門的知識を有する者の意見を聴くことが望ましい。

標準管理規約 第54条(議決事項)

(議決事項)
第54条 理事会は、この規約に別に定めるもののほか、次の各号に掲げる事項を決議する。
五 第17条、第21条及び第22条に定める承認又は不承認



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