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2024年1月の記事一覧

時を漉く

水底で澱む昨日の死に滓で時を漉く。まだら模様の簀桁を天日に晒してから、あらかじめ干涸びさせておいた真新しい時をひろげる。おはようと書き込み空間を整える。

軟骨思想

こんないい天気の下でしゃがみ込む
茄子の乾燥させたやつ
言わなきゃ良かったやつ
這い出る うなだれて
腕にぶら下がっている重し
不快さの底を
もう一本の手で支えながら
バスに乗る 降りる 降りた
ここはその そういう所の
わかりにくい谷戸
あそこでは流れることがなく
溜まることばかりだった
沁み込ませるか 蒸発させるか
腐らせるか 忘れるか
冷たい風の中に立つ
叩かれて 揺られて
地面に突き刺さっ

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物語は風景の中に刷り込まれていた

煙突六本
すぐこの土手の下
どうぞ やあ
どうぞ やあ

物語は風景の中に刷り込まれている

はあ かまわんよ
ごくろうさんじゃの
やだよ
いいかげんにしないと酷いわよ

物語は風景の中に刷り込まれていた

やあ ありがと
おかえんなさい
ゆうべっからなにわぶしだよ
あずきアイスでもたべますか

風景がないと物語が見つからない

うん いいだろ
うん いらんだろ
ご機嫌よろしゅう
いたしましょう

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寝袋

毎晩柩としての寝袋に潜り込む
中でデバイスを光らせていると
ホタルブクロみたいだなと思う
小豆が石段をばらばらと転げ落ちる夢
私は死人宛てに遺言を書く
無数の誤謬の集積物
一括りの中身を溶かして均す
サナギみたいだなとも思う
ここだけ妙にあたたかい