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2022年7月の記事一覧

意味について

竜頭機能変遷の歴史と耳捻る行為が生じさせる意味について考察中の紳士が、白鶺鴒がチチンと鳴きながら波状飛行をする清らかな水辺で釣りをしている。先日潰された面目を清算するために顔には丸い穴があいている。無い筈の目が浮きの沈下を認めた瞬間に紳士が上空に釣り上げられた。当然の報いだった。

灯し火

抱きしめていたものを手放しました
灯し火が消えたとき煙に乗せて送りました
宛名なしでも届くでしょう

乾燥ナメクジ

目薬を差せば差すほど
目ヤニが硬い結晶に変わる
日差しも受け取り瞼から
細かいカケラがキラキラ落ちる
気を付けて、
擦ると傷つくよ、
角膜。
洗ったほうがいいよね、と思い
洗面所へ歩く
私のうしろに
乾燥ナメクジが通った跡の様な
琥珀色の道ができる
子供達が辿ってくる
なんだか、遠い

滲んでわかる

点じゃ見えない
意味がない
今が過去へと滲んで見える
流れ去るのとはちょっと違うね
今が未来へと滲んでわかる
伐り拓くのとはちょっと違うね
あなたも私も月も心も
滲んで見える
滲んでわかる

何かが余る

私はあなたの役には立たない
あなたは私の役には立たない
それでも会えば何かが余る
何かが少し増えるせいかも

残留物

ロングスカートの中身は夕焼けです
引きずりながら男子トイレに入ります
引きつりながら皆さんの顔
たまには教えてあげましょう
赤く発光する蛍は残留物です

私は探す

イヤホンのシリコンゴムが中耳を少しづつ痛めつけ、待ち草臥れたペットボトルの結露水が太腿あたりの日向を濡らしている。目の前で噴水が大きな飛沫を上げるたびに私は探す、探しているのはその皮膜の向こう側、緑色に瞬く人型の幻影。

書割の空

私の足型が出鱈目にしつらえられて
高級そうな革靴が組み立てられた
靴紐は廃され六角ボルトが採用されている
今日はアスファルトを引き裂きながら歩く
激しい靴擦れに耐えながら
言われた通り街中を分断して歩く
疑うことを悪者にして
信じることが正しいと洗脳する
書割の空が風に煽られ揺れている

どこかにつながってる

あの世も温暖化で冷気が足りないらしい
列車の連結器の近くのシートに座ってたら
目の前に汗だく幽霊が立ち
隣に蒸し蒸し幽霊が座り
白い布で互いをばたばたと扇ぐ
汗臭い
ふと、ここがかれらの通用口だと気付いて
席を立ったら
シートの奥角隅の隙間に吸い込まれて消えた
どこかにつながってる

すべてに休みが訪れる

すべてに休みが訪れる
ひと息ふた息、
やがて永遠の休息につく時には
私の喉笛がひゅうひゅうと鳴り
それさえ愛おしく思われる
少しばかりの水で湿らされ
その最後の冷たさに
ほんとうの優しさを知るのだろう
すべてに手が差し伸べられて
私はただ待つのだろう