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ペルソナの納得感ってどう作る? 知見聞いてみ隊 vol.1

こんにちは、コンセントのUX/UIデザイナー荻原です。

おぎわら かなプロフィール:UX/UIデザイナー。専門学校桑沢デザイン研究所卒業。ウェブサイトやロゴ制作など、媒体問わずコミュニケーションデザインに関わる。近年はUX/UIデザイナーとしてデジタルプロダクト開発プロジェクトに参加することが多い。趣味は切り紙とチラシ集めだが、どちらも収納方法に悩んでいる。

「勉強会や本で知識を得たつもりでも、いざ実践してみると『え、これってどうやるの…?』と手が止まってしまう…」

いざ実践した時にぶち当たる壁。本には書いてないし調べても出てこない正解のない問いや疑問。


今日はそこにスポットを当てた社内の取り組みである、「知見聞いてみ隊」で学んだことをお話しします。

テーマは「どうしたらプロジェクトメンバー全員がペルソナの納得感を得られるの?」です。

「知見聞いてみ隊」とは?
UX/UI初学者(以下、質問者さん)から実践して感じた「正解のない問いや疑問=お悩み」を収集。質問者さんと共に経験値のある人(以下、経験者さん)へお話を聞きに行く。お悩みに対して、経験者さんなりのやり方や対処法を聞いてみるのが目的です。

取り組みの性質上、記事の内容が必ず正解ではないこと・初歩的な学びも含んでいることを念頭に読んでいただけると幸いです。

取り組み内容の説明図:質問者が、経験者に「これってどうやるの?」を質問する。経験者が、質問者に「自分だったらこうする」を回答する

登場人物

登場人物の説明図。質問者(うさぎアイコン)、コミュニケーションデザイナー・アートディレクター。エディトリアルデザインやブランディングデザイン業務に従事することが多かったが、近年UX/UIデザインに挑戦している。オカヤドカリを飼育中。 経験者1(ねこアイコン)、サービスデザイナー。一昨年より山形からリモートワークで勤務中。餃子やハンバーグなどの加工肉は大好きだが、ステーキなどの焼肉の固形肉、エビや貝類など生き物らしい食べ物が苦手。 経験者2(パンダアイコン)、サービスデザイナー。今年コンセントに中途入社、前職では事業会社でUXデザイナーとして働く。好きなものはお笑い、ラジオ、フォートナイト、ミスチル。

どうしたらプロジェクトメンバー全員が
ペルソナの納得感を得られるのか?

質問者さんから経験者さんへ共有したお悩みは以下です。

🐰質問者さんのお話
あるプロジェクトで、ユーザー理解のためにインタビューを実施することに。「どんな人をインタビュイーとしてリクルーティングするべきなのか?」を明確にするため、ペルソナを作成しました。

■どこまで細かく書き下すべきだったのか?
→名前や性別など詳細に設定したが、細かく設定することで何か違いが生まれるのか?

■想像で書いたが、本当にそのまま進めてしまって良かったのか?
→決めたことが間違っていた場合にどんな影響があるのか?

周囲にサポートしてもらいうまく進みましたが、今後自分がメインで進めることになったとき、どんなことに気をつけたらいいのか気になっています。


ペルソナとプロトペルソナの役割の違い

質問者さんが作成したペルソナはインタビュー前のもの。一般に言われるペルソナとは少し位置付けが異なる、「プロトペルソナ」であるということを教えてもらいました。

ペルソナとは?
調査から得られたファクトをもとに合成人格を作っていくもの。「こういう人いるよね」をモデル化していく。

プロトペルソナとは?
インタビュー前などに作成する、仮説のペルソナ。 ターゲットを決める前のリクルーティングでは、対象者の条件を決める際に必須条件/任意条件を決めることも。条件を決める前に対象者の解像度を上げ、絞り込むためにプロトペルソナを作る。


プロトペルソナについて

1.対象ごとの違いを見極めることができるか?で項目の捉え方が決まる

一番のお悩みである、ペルソナを「どこまで細かく書き下すべきだったのか?」「詳細に設定することで何か違いが生まれるのか?」についてはこんなお話をいただきました。

😺経験者1さんのお話
ペルソナの項目は、プロジェクトごとに必要不要を決めるものです。
捉えたいインタビュー対象や、市場ユーザーのセグメントを切り分ける項目として、「その項目が重要か」を私はいつも考えます。

「名前や性別など詳細に設定したが、細かく設定することで何か違いが生まれるのか?」というお悩みへの回答ですが、ここに疑問が生じたのであれば今回のケースでは名前や性別が、そこまで重要な項目ではなかったのかもしれませんね。

大事なことはテンプレートに沿って情報を細かく記載することではなく、インタビューしたい対象の特徴やセグメントの違いを見極めること。

対象を見極めた上で細かい情報を肉付けしていく、という流れで作ると良さそうですね。

プロトペルソナの場合、プロトタイプ=仮の状態だからこそ「セグメントごとの違いを際立たせるために、ある程度内容を顕著に書くこともある」というお話も印象深かったです。


2.記載方法は、役割の違いで整理する

ここまでの話を聞くと、「人物像の細かい設定は不要なのか?」という疑問が湧いてきます。この点について、「セグメントごとの特徴の違いを書き出したもの」と「詳細な人物像までまとめたもの」では役割が違うので、どちらもあった方が良いとお話しいただきました。

😺経験者1さんのお話
詳細な人物像をまとめると共通認識を持ちやすくなるし、インタビュー前だった場合でも「最大限想像する」という行為につながります。クライアントとコンセント間のセグメンテーションに対する解釈違いも減らせますよね。

自分がなんのために、どんな目的で作成しているのかを考えることが大事ですね!

「セグメントごとの特徴の違いを書き出したもの」と「詳細な人物像までまとめたもの」を比較したイメージ画像。「セグメントごとの特徴の違いを書き出したもの」は、四象限のうち「値段かける能動的タイプ」を例として抜き出している。タイプの説明として「なるべく安く購入できるように、近隣店舗を見て回って比較検討する」と付記されている。もうひとつの「詳細な人物像までまとめたもの」は、その人の名前、キャッチフレーズ、年齢、家族構成、居住形態等の情報も含まれている。
「セグメントごとの特徴の違いを書き出したもの」(左)と「詳細な人物像までまとめたもの」(右)のイメージ


ペルソナについて

1.作成するのに一番重要なポイントは「軸立て」

そもそもペルソナは、インタビューの結果を受けてユーザーの属性・行為・価値観をモデル化する際のアウトプットのひとつです(他のアウトプットの例としては、カスタマージャーニーマップや価値マップなどがあります)。

ここでのモデル化の最終目的はアウトプットを使い、調査・分析の目的達成のために「機会領域」を特定していくことです。

では、ペルソナはどのように考えていくのか?経験者さんの普段行っている手順を教えてもらいました。

手順:

  1. インタビュー結果からユーザー属性を抽出する。

  2. ユーザーを語る上で顕著・特徴的だった部分を整理する。

  3. 整理した中でも、特に顕著・特徴的な部分で軸を立てる。

  4. 各セグメントに対し、ユーザー像を補強する情報を肉付ける。

  5. 「本当にこのようなユーザーはいるか?」内容をチームで擦り合わせる。

※2〜3の間に ユーザーの属性・行為・価値観のモデル化が入る。

「買い物をするユーザーの分類」の図。軸立ての例として、軸1「購入時に重視すること(値段か、機能か)」、軸2「購入への方針(能動的か、受動的か)」のふたつの軸を設けている。セグメントは、以下の4つに分かれる。1 値段重視で能動的、2 機能重視で能動的、3 値段重視で受動的、4 機能重視で受動的。
軸立ての例

手順3の「整理した中でも、特に顕著・特徴的な部分で軸を立てる」が一番大事かつ経験者さんでも難しい部分だと伺いました。

また、軸を立てることで「それっぽい」「なんか良さそう」とプロジェクトメンバー全員で認識を合わせることができ、納得感にもつながっていくとお話しいただきました。

軸の設定がずれてしまうと結局ペルソナを作成しても誰にも刺さらない、「本当にこの人だっけ?」という納得感のないものになってしまうということだと思っています。


2.価値観や行動を最も分ける軸は何か?が軸を立てる基準になる

軸の導き方について、具体的な事例もお聞きしました。

ある事例では、はじめに3つの軸を用いてペルソナを12に分類。ペルソナごとのカスタマージャーニーマップを作成し、行動の分析をしたそうです。しかし、モデル化した成果物を俯瞰してみた結果、似たような行動や価値観のペルソナがあることに気が付き、ペルソナを分類する軸を再検討することに。最終的には2軸を使って、ペルソナを4つにまとめることになったそうです。

プロトペルソナの項目検討と同様に、価値観や行動を分ける最も特徴的な、かつプロジェクトにとって重要な点はどこかをとにかく探索するということなのだなと理解しました。


3.軸立ては難しい! 作る・壊すを繰り返して考える

前述した具体事例を読むと察していただけると思うのですが、実際の軸立てはそうすんなりと導けるわけではないという現実も教えてもらいました。

軸っぽいものはいくつか出るし、出そうと思えば無限に出せてしまう。しかし、それが本当に良い軸なのか決めるのにこそ時間がかかる。

元の仮説をなかなか手放せなかったり、インタビューを行った分ユーザーの細かい部分が見えすぎてしまい切り口がたくさん出てきてしまうなど、最終的な決定をするまでには本当に紆余曲折があり悩ましいそうです。

🐼経験者2さんのお話
一回軸を作ってみて、一回進んでみて、例えばのアウトプットまで出してみて、「あれ違うな?」で戻って…そういうのの繰り返しが大変でも大事だと思ってます。

自分で考える時は、不採用になった軸をいくつ作れたか?を考えることを大切にしていたりしますね。

どんな軸がよいのか決めるのは、むずい!難しい!!!

だからこそ、作って壊すことを前提に進めることが大事、ということだと思いました。

ここをもっと効率化、手早くできる方法はこの会の中では出てきませんでした。今後、他の人の意見も聞いてみたい部分です。


4.想定外の調査結果も、一つの「発見」と捉える

必要な調査が、プロジェクト内で全て終わるとは限りません。

例えば、はじめに想定していたセグメントと、インタビューなどを経て導き出されたセグメントにズレが出た場合、話を聞ききれてないセグメントが出てきてしまうこともあります。

ここについて、経験者さんの「むしろそれが正しい」という言葉が心に残っています。

😺経験者1さんのお話
仮説で考えていた通りのペルソナができたらそれはそれで素晴らしいけれども、調査をしたことで新たな軸やセグメントが見えてきたら、それは一つの「発見」ですよね!

これまでアプローチできていなかった層を顕在化できたというリサーチ成果だと思います。

調査でアプローチできなかった層が重要なセグメントであれば、さらに追加調査を行えるとよい。そのためには、コンセントの支援が終了した後も、クライアントが自走できる状態になっているのがベスト。

なので「クライアントが、継続して調査のサイクルを回せるプロジェクトの建て付けや仕組みをつくることもまた、大事な観点である」というお話もいただきました。

その後のことにまで考えが及んだことがなかったので、この点は特に大きな気づきでした。「実際のプロジェクトへの取り入れ方、立て付け方」までは時間が足りず聞けなかったので、別の機会でお聞きしたいと思います。


まとめ

いきなりモデル化するのではなく、狙おうとしている市場のユーザーにはどんな特徴があるのかを分析して「知る」「理解する」。加えてそこに至るまでの過程が大事であり、その結果の積み重ねとしてアウトプットされるものがペルソナ(ユーザーセグメントをモデル化したもの)であると今回のお話しで理解できました。

同時にペルソナ作成に対してそもそも居そうな人物を作るのだ、という考えになってしまっていたと反省する部分もあり…。実際はターゲットの特徴的な部分を理解し見える化するためのモデル化(ペルソナ作成)であるという点がすっぽり抜け落ちていたと気づきました。

結局ペルソナがあることで何がわかり、次に何を行うのか?何を目的にペルソナを作っているのかということを忘れず、未来を見据えて作業することが大事なのだなと思います。



いかがだったでしょうか?

この記事を読んで、自分もここ悩みがち…、自分はこうしているなぁ…など少しでも共感したり、思ったことがあればぜひコメントに書き込んでいただけたら嬉しいです。

コンセントではデザイン分野が多岐にわたることもあり、キャリアを形成する上で新しい分野に挑戦する人が少なくありません。そして、その中には「最近UX/UIについて学び始めた」という人もいます。そんなUX/UI初学者に対して知見を開いていこう!という取り組みが「知見聞いてみ隊」です。

引き続き「UX/UIデザイン」にまつわるテーマで第2回も開催・記事化する予定ですので、お楽しみに!




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