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コンシーラの私(第五章)

あるバイト

大学も落ち着いてきて、時間もできてきた。ショッピングをしていると、あるセレクトショップで見つけた、手作りのコートが目に飛び込んできた。「これ、欲しい。」

刺繍もちゃんとしてあって、ウール100%のコート。コートから温もりを感じた。でも、値段が10万円。さすがにお父さんやお母さんにおねだりできる価格ではない。それだったら、バイトを始めよう。わたしは、昔から人見知りだったから、うまく人付き合いできない性格だった。

だから、Uber Eatsに決めた。

時間も自由に使えるし、お昼限定で、大学の近くにあった、貸し出し電動自電車を借りて、バイトを始めることにした。まず、Uber Eatsを始めるにあたって、必要なものを買いに行く。

バックは、Uber Eatsからリースだけど支給されるから、あとは、スマホを自転車にとりつけるためのケース、それと一応女の子だから、Go Proを防犯カメラがわりに買って、バックにつける。

バイトが、始まった。準備万端で挑んだけど、始めの10回くらいのオーダーには
ちぐはぐになってしまった。注文がいっぱい入ってくるから、どのオーダーを選ぶべきかすごい悩む。あまり遠くにもいけないし、近くでもお金があまり入らない。だから、その中間くらいのところを選びたいんだけど、なかなか難しい。遠くに行くんだったら、近くをグルグル回ることにしたんだけど、マンションだったりすると、自転車を降りて、お客さんのところまで行くのに、32階とかだと、エレベーター待ちとかで、すごい時間を取ってしまう。ナビも奥まったりしてる場所だったりすると、お客様の家がわからなくなってしまったり。だから、極力、10回目くらいからは、中〜長距離を選ぶようにした。

そんなこんなで、バイトをしていると、良い時もあれば、悪い時もある。

良いことと言えば、ある一軒屋のおうちにお伺いしたとき、奥様から、「Uber Eatsは便利よね!私は、母の介護をしているから、あまり外にでることができないの。こうやって届けてくれる人がいると、本当に助かります。ありがとう。」と言われたこと。感謝されたことって、家族くらいしかなかったから、私にとってはすごく新鮮だった。

社会に出ることって感謝されることなのかな。感謝されるような、仕事につけば、なんとなく社会に出たことになるのかな。社会は、感謝でできている。そんな気がした。

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