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世界から猫が消えたなら

毎日書くなんて大口を叩いていながら、いつの間にか長い時間が経っていました。

今日は雨が降っていて、外に出る気力も起きず恋人の部屋においてあった
"世界から猫が消えたなら”を読みました。

あらすじ
郵便配達員として働く三十歳の僕。ちょっと映画オタク。猫とふたり暮らし。そんな僕がある日突然、脳腫瘍で余命わずかであることを宣告される。絶望的な気分で家に帰ってくると、自分とまったく同じ姿をした男が待っていた。その男は自分が悪魔だと言い、奇妙な取引を持ちかけてくる。
「この世界からひとつ何かを消す。その代わりにあなたは一日だけ命を得ることができる」
 僕は生きるために、消すことを決めた。電話、映画、時計……そして、猫。
僕の命と引き換えに、世界からモノが消えていく。僕と猫と陽気な悪魔の七日間が始まった。

私は、最近病気が見つかりました。手術をすれば治るし、大したことはない。けれど、私の身体は今までのように傷ひとつない綺麗な状態ではなくなる。全身麻酔をするので、2時間半だけ自分で呼吸ができなくなる。
生きている限り、絶対なんてないと強く感じていた矢先に出会った小説でした。

主人公は自分の死が着実に近づいていることを知り、恐怖を感じると共に自分の人生の価値を問い始めます。私がいなくなっても世界は何も変わらない。誰もが同じ気持ちを抱くであろう。一般化するのは大変申し訳ないが、少なくとも私は共感する。だから、世の中なんて大それたことを言わないまでも、誰かの希望になりたいと強く願う。私が存在した跡を残したい。

彼は命を一日延ばすために携帯、映画、時計をこの世から消します。周りを見渡してみると世の中にはなくても生きていけるものが沢山あります。今は、みんなが携帯を握りしめて一日を過ごしている。窮屈さを感じながら。携帯がこの世からなくなったらどんなに豊かに暮らせるだろうと想像する。画面とにらめっこして、誰かを羨むことなんてないだろうし。けど、小説で言っていた言葉が忘れられない。

「何かを選ぶことは何かを失うことなんだ。」(本が手元にないのでニュアンスです)

ああ、たしかに。携帯が無い世界を選んだとしたら、失うこともある。例えば、あと10分と言って延ばした真夜中の電話。方向音痴な私が迷わないで目的地につけるようにナビゲートしてくれるGooglemap。失ってから、愛おしいと頭を占領するのだからつくづく人間は面倒くさい。

時間だって、映画だって。消すときは、もう一生のお別れだと決心を固める。けれど、そう簡単に忘れるわけはないよね。

人生が最期って分かると、いろんな人に会いたくなる。初めて付き合った恋人や青春時代を一緒に楽しんだ同級生、4年前に亡くなった母親。会いに行ける人には無理してでもあったほうがいい。それぞれのエピソードがとても温かく、まるで夢を見ているかのようにふわふわとした心地で私を惹きつける。

まるで絵本のように、忘れかけていた大切なことを教えてくれる。小難しい言葉はないから、体に染み込んでいく。もう一回、時間をかけて読もうと思う。

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