見出し画像

井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た #16

習い事選びのもったいない②
(16) 観察におけるいくつかの「邪魔者」

 前回(#15)に続いて、「習い事選びのもったいない」について、です。

 親の観察を邪魔するのはどんなものでしょうか? 例えば、「小さいころに絶対〇〇を習うべき」「私がやってよかったので(よくなかったので)〇〇を習うべき(習うべきでない)」といった親の思い込み。

 「自分が〇〇をやっていて体幹が鍛えられたので子どもには絶対〇〇をやらせたい」といった考えも思い込みに入るかもしれません。ほかの習い事でも体幹が鍛えられるかもという可能性を頭から排除してしまっているからです。

 また、ただ不安にかられて「今やらせなきゃ手遅れになる」といった考えにとりつかれることも、親の観察を妨げます。あるいは、単純にそのときたまたま忙しくてイライラしたり、怒っていたりしていて、冷静な観察ができないこともあるでしょう。

 「こうした邪魔者の存在を知ったうえで、ただ子どもを観察することをお勧めします」と井上さんは提案します。「というのも、例えばもし親の心の底に『ピアノをやらせたい』という思い込みがあると、無意識に自分の望みを強化する方向に物事を認識してしまいがちだからです。実はわが子はほかのことにも反応しているのにそれは親の目には入らなくて、子どもがピアノに対して何らかの興味を示した瞬間だけを切り取って即座にピアノを注文してしまう、といったケースです」

 「観察」はとても難しいスキルですが、その後の子育て人生でもずっと必要です。習い事選びは、親の「観察力」を鍛える練習にもなりそうです。

 「いろいろなことをやってみないと好きなことは分からないじゃないか、という意見もありますが、先にやらせることで親が子どもの『好き』を『上書き』してしまう可能性もあります。あせらず、その前にできるだけ子どもを観察できるといいなと思います」

 音で喜ぶ、音に合わせて体を動かすのが好き、歌をずっと歌っている、物語の読み聞かせが好き、物を投げるのが好き、けるのが好き、走るのが好き、ブロックの組み立てが好き、絵を描くのが好き、色を塗るのが好き、パズルが好き――。好きなものが複数ある子もいるでしょう。

 「例えば、子どもが商店街で流れる音楽を聞いていつも踊っているなら、親の無理のない範囲で、音楽系やダンス系の習い事を複数選んで体験してみてはどうでしょう。体験した後で、『どれがやりたかった?』と子どもに尋ねて、子ども自身が惹かれた内容や子ども自身が合うと思った先生の習い事を子どもに選ばせるのがいいと思います」

(#17に続く)




書き手:小林浩子(ライター・編集者/小学生の親)

新聞記者、雑誌編集者などを経て、フリーランスのライター・編集者に。 自分の子育てをきっかけに、「学び」について探究する日々を重ねる。現在、米国在住。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?