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”採用”と”就活”の間

新年度スタートの4月ですね。
毎月1日更新の本企画、今回は企業にとっては”新卒採用”、学生にとっては”就職活動”のそれぞれの”想い”に焦点を充てていきたいと思います。

支援するキャリアコンサルタントの立場では、採用する側、応募する側のそれぞれの想いを聞くことができるのですが、両者の望むものと実際の就活ののやりとりでは大きなズレを感じます。

採用側も応募側も、より良い選択をしたいことには変わりありません。
前向きな会社の指針と、社会人になるに向けて頑張りたい学生の気持ちのベクトルの方向にそんなに大きな違いはないはずです。
けれどいざ就活・採用の現場に入るとそんな純粋な想いはどこかに追いやられ、企業側も学生側も上手くいかないストレスを感じて、キャリアコンサルタントの元へ相談に来られる方も少なくありません。

目的と手段が混ざり合って、自分の意図とは予想外の方向へ進んでしまう。
それが企業側も学生側もどちらにも起こっていて大きな歪になっているように思います。
それぞれの場合をみてみましょう。

新卒採用を考える企業側の場合


いざ就職活動が始まると企業側は採用するスタンスとして知名度が無い場合は広報に力を入れなければならなくなります。
どんなに良い福利厚生、研修制度、入社後のキャリア支援制度等を整備したところで、その企業の存在を学生が知らなければ意味がありません。
”学生に知ってもらうこと”を第一目標にしても、その第一段階さえなかなかクリアできないというのが最近の中小企業の採用の現場であり、企業人事から受ける相談の中で一番多いものです。

”自社に合った人財を選びたい”というのが本来の想いであっても、選べるほど募集人数が来ないのではどうしようもないというのが実情です。
結果、自社に合った人財を採用することは二の次になってしまうのではないでしょうか。
「結局、給与や待遇面の勝負になったら大手に勝てるわけがない」という中小企業の人事の方からの声もどこからともなく入ってきます。

就活をする学生側の場合

まず就職活動を始めようとすると「企業研究」をしなければなりません。
とはいえネットを使えばある程度の情報は集められるので、まず思いつく企業の新卒採用の募集要項を眺めてみることになります。
当たり前ですが知らない企業の名前が検索されることはありません。

学生が思い浮かぶ企業というのは超・大手企業です。
一般的な大学生が知る企業はほとんどがBtoC企業で、BtoBの企業になるとかなりの大手企業でも学生には馴染みがない場合がほとんどでしょう。

そんな大手企業には、エントリーするどころかインターンシップすらスケジュールが合わなかったり、既に募集を締め切っていたり、選考で落ちてしまう人も実際は多いのです。
今は人手不足の世の中だから就職活動はそんなに大変ではないと聞いていたのにと学生は困惑し、そんな状況にどんどんやる気も自信もなくなってしまいます。

就活の現場では

そんな両者が集まる就活イベントでは
とにかく学生を集めたい企業は、学生の注目を集めるために様々なPR活動をします。
その企業の説明会に参加するだけで特典があったり、入社後の待遇面、給与、キャリアアップ支援制度、プライベートの充実をバックアップする企業もあったり。
そこでは、本来その企業が欲しい人財がどういう人物像なのか語られる場面は残念ながら少ないです。
いかに自社が安定企業であるか、学生の求めるものを叶えられる企業であるかを語ることに終始してしまうことも少なくありません。

学生はと言えば、とにかく就活に前向きになれる人は多くないので、そもそもなかなか就活イベントに足を運ぶ気持ちになれません。
わざわざお金と時間、労力を使って就活イベントに行くメリットがあるようには思えないからです。

手探りの就活でなんとなくエントリーしやすそうな企業を選んで応募することを繰り返す中で、一次選考から二次選考へと繋がって、気づけば内定を得られていたなんてことも。
選ぶときの基準は「人事の方の対応が良かった」とか「安定していそうだった」、「親がいいといった」なんて人もいるのかもしれません。
心のどこかに「本当にこれでいいのかな」という不安も持ちつつ内定を受け入れるという人もきっと多くいるのかもしれません。

その先の展開は

実際のところ未来のことは誰にも分からないので、どの企業を選べば正解だったのかなんて答えはありません。
念願の第一志望の企業に入社したのに、思っていたのと違ったといってまた就活を再開する人は少なくありません。
むしろ入る前は不安だったけど入社したらとても良い人達に恵まれて仕事にやりがいを感じ始めたという人もとても沢山いるのです。
思い悩んだことも振り返れば結果オーライとなるのかもしれません。

大切にすべきこと

企業にとって新卒採用は長く一緒に働く同士を見つけるための活動です。
学生も安定的に長く働ける会社を求める人は多いです。
でも現実は入社3年以内の離職率は年々増加傾向にあり、現在は全体の3割を超えています。
それは企業にとっても大変な損失であって、離職を選ぶ人にとっても辛い決断でしょう。

人それぞれの生き方を応援するキャリアコンサルタントは様々な局面の方を支援します。これから就活を始める人も転職の人も、逆に採用に困っている立場の方の支援もあります。
どんな未来の選択にも間違いはありません。
正解は自分の中にしかなく、それぞれが真剣に考えて選択する未来はその人だけの大切な軌跡になっていくものだと思います。

本当の自分の望む生き方は案外自分でも分からないものです。
たくさんの情報や環境に翻弄されて自分の本当の望みは見えにくくなるからです。
会社も人の集まりなので本当に大事なことが見えにくくなって目的と手段が入れ替わってしまうことがあります。
それぞれが大事なことを見失わないよう、時々立ち返ってみてほしいなあと思います。





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