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【インタビュー vol.3 / 秋のショートコース】~自然体であること~

Compathは北海道東川町で、デンマークのフォルケホイスコーレをモデルに大人の学び舎をつくっています。コースを準備するにあたって、改めてCompathのプログラムの価値ってなんだろうを考える時間をとっています。これまでCompathのプログラムに参加してくれた仲間たちがどんなことを感じたのか知ることで、あり方をじっくり考えたいという気持ちから、インタビュー企画をはじめました。

今回はショートコース編。2020年9月に開校した秋のショートコースに参加してくれたみっちーにインタビューしました。フォルケホイスコーレは未完成の学校。参加者がいてはじめて完成します。2020年の秋「森100年、人100年」をテーマに開催した秋のショートコースは、Compathがはじめて開催した7日間のプログラムです。「一緒に学校づくりしてくれる方大募集!」と呼びかけて集まってくれた仲間たちと共につくりあげたあの時間を振り返りながら、みっちーが紡いでくれた言葉を紹介します。

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■ 話者
みっちー

大阪府出身。東京在住。社会人10年目。総合コンサルティングファーム勤務。現在は自社のエンプロイーエクスペリエンス向上や幸福経営の実践に従事。Compath共同創業者の香とは、慶應義塾大学SFCのゼミ友だち。気づけば、卒業後もちょくちょく会って近況報告をする仲となっていた香からCompathを創業したこと、Compathへの想い、東川町の魅力、そしてCompath初のプログラム「秋のショートコース」を開催すると聞き「これは訪れなければ!」という想いに駆られ、フォルケに参加。
■聞き手
さき

Compath共同創業者。4年前にデンマークのフォルケホイスコーレに惚れ込んで、モデルにした大人の学び舎をつくりたいと北海道東川町に移住。設立に向けてのいろいろ実験中。参加してくれた仲間たちとの対話をヒントに学校づくりをしていきたい。2021年の目標はおいしいあんこを炊くこと。


ギリギリまで迷って参加したフォルケ

―― お久しぶりだね!みっちーが参加してくれた秋のショートコースからあっという間に半年かあ。まずみっちーがフォルケに参加するまでのお話をききたいです。ギリギリまで行けるか悩んでたよね。

そうそう。友だちの香(Compathの共同創業者)に声をかけてもらってプログラムを知ったんだけど、ショートコースの時期やりたいことが色々あったんだよね。休みがとにかく貴重だから時間の使い方にすごい迷って...。どこか新しいところにいくより、将来のための勉強や読書に時間を使いたい気持ちと北海道の自然の中に行きたい思いがぶつかって、どうしよう!って悩んでた。でも香の「プログラムに参加して会ってほしい人がいっぱいいる」っていう言葉をきいて、一人で旅行に行くときには絶対会えない人に出会える機会なんだろうなって思って「よしっ!参加させて!」って伝えたね。

―― かおるの言葉が最後の後押しだったんだ。それでも確か調整が難しくって、前半だけ参加する予定だったよね。

仕事を休むのは申し訳ないし、上司にも迷惑かけたくないって思って最初は4日間だけの参加って言ってたんだよね。でも参加したら面白くてもっといたくなっちゃって。上司が休みを推奨するタイプだったし、プログラムの内容も共有してたから、休みとりなよ、絶対参加したほうがいいよって後押ししてくれて結局7日目の午前中までいたね。

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ときめきで始まり、現実と向き合ったフォルケの時間

―― プログラム中に後半も参加できるって決まったとき拍手がおきたもんね。みっちー最後までいられるの〜!って (笑)  すっごく悩んだ上でフォルケに参加してくれたプログラムだと思うんだけど、なにが印象的だった?

全部印象的だよ。全部語れる (笑) でもやっぱり1日目かな。森についた瞬間、心が踊ってジャンプしたのを覚えてる。森の中で名刺作りをしたんだけど、パソコン仕事じゃないことをしているのがとにかく楽しくって。無邪気に木と自然と向き合えたのがとにかく嬉しかった。

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森を探検して集めたものでつくった名刺 (みっちー作)

2日目の養鶏家であるファームレラ新田さんとの対話テーマ「一人ひとりの選択で社会が作られている。被害者でもあるし加害者でもある私たちは、どういうふうに生きるべきか?」っていう言葉も、インパクトが大きかったな。はっとさせられたのをすごい覚えてるし、今でもこの言葉が片隅に残ってる。仕事をしてお金を稼ぐことが良いことっていう世界では、やっぱりどこか傷つけている部分があると感じて、自分の生きている世界や自分がしていることをふりかえる良い機会になったなと思う。

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―― 7日間を振り返ってみて、自分にとって大事な時間だったなと思う時間ってある?

最後の2日間でみんなのいろんな心の葛藤を見れたことに感動してた自分がいたかな。プログラムがはじまって最初は自分の感性が溢れ出てときめいてたけど、最後の方はみんなが現実と向き合ってたんじゃないかなって気がする。

現実と向き合う中で、ちょっとモヤモヤが残ったのも印象的。6日目に色んな材料をつかって「どういう社会をつくりたいか」を表現するワークをしたけど、現実戻ったときに本当に実行できるかっていうと難しいなあって。あの2~3時間でぱっとありたい姿をを描くことはできるけど、やっぱり現実はうまくいかないし、現実って生活費はどうする?仕事どうする?どこに住む?って、生きる上でどうするのっていうところに直面するよなって考えてた。

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あの場では「こうありたい」って表現してみたものの、実は自分って今の状態に満足しているんじゃないかって思ったりもして...。ありたい姿を描くのって現状を否定することにもなるよね。今の状態で満足している私もいたから、振り返ればちょっと消化不良な部分もあったかなって思う。


サステナブルな自分のありかた

―― なるほどなー、最後の綴じ方はもっと考えたいなあ。ユートピアみたいな理想を語るだけだと今の否定になって辛い部分があるよね。フォルケを終えて日常に戻ったあとも、大切にしていることってあったりする?

自然体でいることかな。最後に参加者の方にもらったお手紙に「人間も不自然だとサステイナブルじゃないから、自然体でいることって本当に大事なんだね、ってみっちーを見ていて思いました」って書いてあったんだよね。

それを読んで、どこかでいつも無理している自分がいるよなっていうのを改めて感じて...。私はまわりの期待とか基準を気にしがちだったから、いかに自分を自然体でいさせられるか、ありのままでいれるかっていうのが今でも自分の中のメイントピック。だから定期的に自分らしくいれるか見直す時間が大事なのかなって思う。

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―― いい言葉。自然体でいられることって難しいよね。

とーっても難しい!最近なんで人って不満をもったり悩んだりするんだろうっていうことに着目しはじめたんだよね。悩むってなんで?って思ったときに、だれかの期待に答えようとしているとか、期待しちゃうことが1つの要因なのかなって思って。自分の中で勝手に、この人はこれくらいやってくれるだろうって思っちゃうんだけど、それができないときに自分の中でストレスを感じちゃうのかなって思う。

―― フォルケにいたときは、自然体に近かったんだ。

わりと自然体だったのかな。仕事ってどうしても期限とか役割があるから、それに答えられないと評価がさがる恐怖感があるんだよね。でもフォルケにいた時間はその恐怖感と戦わなくてよかったから落ち着けたかなって思う。

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Compathではみんながいっていることを ”受け止めよう“ っていう雰囲気作りをしていたよね。「判断を保留しよう」とか、前提のルールがあったからこそ、みんなが安心して自分の意見を言おうと思えたのかなって思う。あの7日間に集まった人ってみんな余白を求めていたり、人生について考えたいと思っていたり、普段なら流されがちなことを改めてみんなで考えてみたいって思う人たちが集まっているからこそ、ちょっとした疑問とか心の葛藤とかをしゃべれたんだなって思う。共通の認識があったっていうのが大きいだろうなって。

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背景がバラバラな人たちが「人生」を考える

―― いろいろ話を聞かせてくれてありがとう。どうだろう、1週間を読書に使うか、Compathに参加するか迷ったって話してくれていたけど、選んだだけの価値ってあっただろうか。

そこはほんと難しくて、どっちもいいんだよね。本には本の良さがあると思う。でもフォルケに行って本当によかったと思ってるのは人と出会えたことなんだよね。ウェルビーイング(Well-being)の分野でも言われるように、コミュニティを複数もつって人生においてすごく大事だと思うから、そういう意味でフォルケで人と出会うことで豊かになるなって思う。

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―― いま振り返ってみて、フォルケでの経験ってどうだったと思う?

フォルケで色んな人と出会えて良かった。いつの間にかまたいつもどおりの生活に戻ってたけど、今でもみんなと語り合う時間が続いているのはすごいって思う。フォルケのいいところはみんな背景がバラバラなこと。語り合う場って同じ職業やテーマをもっている人が集まりがちだと思うんだけど、フォルケでは色んなバックグラウンドをもった人が集まって、人それぞれ、人生について考えるのがいいなって思う。

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―― あー、とてもいいね。それは私もデンマークのフォルケで感じた!おじいちゃんが若者に人生相談をしたっていいし、医者が体の相談をしたっていいし。そういうのが面白いなーって思ったんだよね。

休んで人と人生について語り合うっていうのがいいよね。もやっとした人生っていうテーマについて立ち止まって考えようっていうのがすごい好き。Compathの「立ち止まって考える」っていうコンセプトを聞いたときに、人生においてすごく大事なことだなって思ったんだよね。日本はずーっと働かないといけないっていう概念がすごく強いじゃない。だからなんとか文化的に立ち止まる文化をつくれないかって思うので、応援したいな。

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聞き手のあとがき  fromさき
デンマークのフォルケホイスコーレ経験者にインタビューをしていると、「自然体な自分にチューニングする時間」というキーワードが出てきます。組織の期待や評価から切り離された空間で、個として出会い対話する機会。大事にしたいと思っていたフォルケの価値をみっちーの言葉で話してくれたことが心から嬉しくて。引き続き大事にしようと思った時間でした。

一方で私たちは、社会から完全に切り離されて生きることはできない。期待や評価もあるから生きていける部分もある。二項対立でどちらかではなくて、どちらもある社会の中での、フォルケホイスコーレの役割を研ぎ澄ませたいなあ。

「サステナブルな自分のありかたってなんだろう?」
まずは、この問いを定期的に持つだけでも、ちょっと変わるかも。
こういうの、これからもみっちーと一緒に考えていきたいな。

(ライター&編集者:Compathインターン/森山寛菜)


【お知らせ】2021.06.06 Compath Dialogue Dayを開催します

いま、Compathが持っている3つの問いを中心に据えて、Compathが一番対話をしてみたいゲストをお呼びして3つのDialogueをお届けします。

1)Dialogue1 “Compath -2020 to 2021-”
2)Dialogue2 “フォルケホイスコーレと市民の社会参画のデザイン”
3)Dialogue3 “豊かさが再定義される時代の学びと余白の価値とは”

・開催日時:6月6日(日)10:30-17:00
・開催場所:オンライン(Zoom)

いつも近くで応援してくださっている方にも、初めてフォルケホイスコーレやcompathについて触れる方にも、お楽しみいただけるよう、いろんなお話をお届けできればと思っております。


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