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古代緑地 Ancient Green Bert 第6話『やまんばの子産み桜』(むかし話より)


ずっとずっと昔のことです ある山奥に桜のきれいな里がありました

春には山全体が桜で埋まるほど見事なのです

中でも大岩を抱えて咲く枝垂桜は海からも見えるくらいでした


その村である年日照りが長く長く続いたことがありました 雨が一滴も降らず畑の作物は枯れ 森の草木もしな垂れてしまったのです

あの桜も黒い幹が立つばかり 

山に獣の気配はなく 鳥一匹飛んでいないのです 男たちは猟に出て何日も山をさまよったあげく 何も獲れず 草臥れ果てて 帰ってくるのでした 村の男たちは それぞれ長い経験を積んだ 猟師たちでしたが この年ばかりは皆 やるせない溜息をつくばかりでした このままでは赤ちゃんから100歳を超えるおばあちゃんまで 村人全員の命が途絶えてしまいそうです 

いよいよという日 腕の立つ猟師の3兄弟に 最後の望みが託されました

おんなたちはわずかに残っていたお米で握り飯を作って包みを渡しました

やまんば 1

それを受け取るやいなや すぐに長男のイサミが駆け出しました

山道を 勇んで いぐがいぐが行くと 

お化けのような枯れ木の立つ大岩の陰で呻き声がします 

見ると山姥が大きなお腹で倒れていました もうすぐ子供が生まれるようです 

「おお イサミよ どうかわたしに水を汲んできてくれないか 水が足りなくて子供が産めない」

イサミはそんなことより早く行きたいので急いで立ち去りました

「山姥は 怖いから やめとくよ 子供だって 何をするかわかったもんじゃない」


次にそこを通ったのは次男のカスミでした

カスミはカスミ猟の名人でしたが ちょっと計算高い男でした

森を抜けて いぐがいぐが行くと 岩にもたれかかった山姥がお産ができないでいるのを見つけました

「カスミ どうかわたしに沢から水を汲んできておくれ」 木の根にもたれたやまんばが力なく言いました

「いやいや 悪いが 俺は急いでいるんだ」

カスミはちょっと気が咎めたものの立ち去ってしまいました 

「みんなに早く俺の腕を自慢したい 水にかまっている暇はないというものだ」



最後に通ったのはタノミでした。

タノミは優しい男で あまり競争は好きではありません

二人より少し遅れて いぐがいぐが行くと 

大岩の下に寝そべる山姥の呻き声はもうか細く 死んでしまいそうでした 

タノミはお腹の大きな山姥を見つけると 駆け寄って 小さな声を 聞き取りました

「み 水を。。。水の湧く沢が少し先にあるが 歩くことができない タノミよ どうか取ってきてくれないか。。。」


タノミは鉄砲を投げ出して 矢のように山道を駆け下りました

言われた通り行くと タノミも知らない綺麗な泉がありました 

手持ちの筒では小さすぎると思い 周りを見ると 大きな大きな山蕗の葉が揺れています それを重ねて水を包み たっぷたっぷと運んだのです

やまんば蕗の水 1

山姥は よろこんで 葉っぱのいい香りのする水を ゴクゴクと飲みました

おいしい おいしいと たくさん飲みました

あの最後のおにぎりも食べさせてやりました


山姥は元気を取り戻し 肌ツヤも良くなりました それから 次々と子供を産んだのです タノミは 子供たちを取り上げました 子供達の数は数万にも登りました さすが山姥の子 すぐに独り立ちして山々に散っていきます

やまんばお産桃色


山姥は無事出産を終えました

息を吹き返した 山姥は言いました

「獣たちは西の谷筋に集まっている 好きなだけお前にやろう」

「それからな お前の家は これから先 食べるもので困ることはないだろう  お前の村の畑にも水を配ってあげよう」

そう言って大岩の中にすうっと消えていきました

タノミは俄かに明るくなったのを感じました 不思議に思って空を見上げると 岩を抱えた枝垂桜が さっきまでとは打って変わって それはそれは見事に咲いていました。


タノミが教えられた谷筋へ行くと 沢山の鹿が集まっていました

タノミは 鹿を村人が口にできる分だけ 獲りました


途中 イサミが行き倒れていました

カスミも 怪我をして動けませんでした

二人をソリに乗せ タノミは山を降りました


帰り道 あの岩のそばを通ると 桜は青空に 長い枝を広げ 心地よさそうに 花を震わせていました 小鳥がたくさん鳴いています

やまんばさくら 2


タノミを見つけると村人たちが大勢出迎え タノミを囲みました

村に笑顔が戻りました


兄のイサミとカスミはそれからずっと 寝たきりでしたが

タノミは兄を見ながら その名の通り 頼もしい長として 長生きしたそうです


山姥は 恵みをもたらす桜だったのです 村人は大岩の前にお屋代を作り 恵みをもたらしてくれた山姥を女神としてお祀りしました 

桜の咲く頃 村人はお花見をします 大いに歌い お囃子で踊り お酒を飲み交わし たくさんたくさん笑って めぐみを願うのです

もちろんお屋代には 握り飯とあの山蕗の香りのするお水のお供えは欠かしたことがありません

今でも桜は春になると山里をいっぱいの桃色に染め 命を育み続けてていることでしょう 


おはなしさいた


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むかし話の雛形がすごいと改めて思う 神話より古く もっと歌うように語られていたのだろう 桜はまだ緯度や標高高いところでは まだ見ることができる 桜は面影でいよいよ鮮やかだ 山姥とは山の女神 生と死をつかさどる むかし話を少し変えて絵をつけました 






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