秋分;第46候・雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)
秋分。太陽は真西に沈む。彼岸は西の果てにあるから、彼岸の住人となった死者たちに想いを致す。お墓参りで花を供え、手を合わせ、いろんなことを話したり思い出したりしながら、植え込みのお手入れをしたり、清めてさっぱりとしてもらう。
はじめて今年、母と一緒におはぎを作った。餡子と黄な粉と胡麻。分量がおかしくて二人しかいないのに40個以上できた。手の中で炊いた餅米を丸める。丸めると心もまろくなる。ゆっくりとなる。まあるいということはこの星のかたち、たましいのかたち、丹田のかたち。命あるものは柔らかくまるい。命なくなると痩せて固くなる。花はまるい。
今通っている作庭現場はある大学の軽井沢寮だったところ。キリスト教系なので礼拝堂がある。礼拝堂はシェアオフィスに生まれ変わる。東北の角の窓辺り、たくさんの羽虫が事切れていた。哀しさと美しさがあった。
蝿も蜂も 名も知らぬ虫も
さっきまで網戸に掴まっていた蜂
2時間後に行ってみると落下していた。
複眼には空が映ってる。
澄んだ空。雷は遠ざかり。
どんなささやかな命もここへ帰っていく。
「死ぬにはいい日だ」
みんないつかこの世からさよならするとき、そう思えれば。
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