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花の座 伝芭

 「伝芭」とは、『楚辞』「九歌」のうち“礼魂“の詩にみられる言葉。“礼魂“は、祭りが終って神を送る送神曲。願いが届き、その音信が届いたことを祝い、太鼓に合わせて巫女たちは手から手へと花を手渡し、受け取った花を持ってかわるがわるに舞う。美しい巫女たちは歌いながらゆったりとやわらかく舞う。それを「伝芭」という。巫女が伝芭する花は春には春蘭、秋には菊、それぞれ香り高く、人を清浄に清めてくれる花だった。
 花は神への依代として捧げられ、音信を聞くものであり、また願うものの身や場を清めてくれるものでもある。それを持って歌い舞うことで廻る年月を、巡り合いを祝い、花の巡りも人の巡りも願い送る。


+「花を依代に “魂“について それぞれの心身で感じること」

 花を活けるという振る舞いと、植物の手ほどきでそれぞれ異なる身体で、あらゆるクリエイティブに関わる人々(ということは全ての人間)が、花(植物)に再び近づく。
 めぐりくる季節の花を標に、神話を始め、古くからの歳時記の植物にまつわる記述、編まれている歌を読み、同じ座の中で「めぐり花」という花の連句を体験し、自分の身体で、心で、その花を、めぐる季節を、過ぎゆく時を感じる。
 自らを、関係性の中で発掘し、結社という座の中で照応しあっていく。ここで別世を過ごし、別世が日々に混ざっていく。同じ自分だけど別の自分と出会える場を人は必要としている。ともすると自分を囲い込んでしまいがちだから。
 一瞬一瞬が深みを持ち、丸く膨らみ、内と外の境界が薄くなり、たましいがゆたかになること。言葉、歌と花で天と地と、その間で生きるものたちとの綻びを繕い、結び直していきたい。

 人それぞれたくさんの自分を持っている。「多様性」というが、たくさんの自分がそもそもいるのだ。その一つとしてかつて芸能や芸術にまつわる連とか座はあった。人心を調律し、和する調和の結社が必要だと思う。


+「めぐり花」
 めぐり花は、めぐる季節の中で、めぐる季節のシンボルである花を愛で、めぐり合いに感謝し、まためぐりあうことを祈って、花に仮託した想いを放ち、切り結ぶ振る舞いです。ほんのささやかな“今ここ“との逢瀬ですが、儚い分その思いが重力となり、磁場を持ちます。花を改めて天地の間に立てることで、目には見えない世界との音信を試みます。活けた花が「依代」となることができれば、その場は生々として、音ない(訪れ)を感じます。役目を果たした花は、またいつかめぐり逢えることを願って送られます。現代において、ともすれば消耗品になりがちな花、何度も身体を通すことで、彼らが教えてくれることがあります。

 「めぐり花」には儀礼性、演劇性があります。見るもの見られるものがかわるがわるで、「花野世」に触れては戻りを繰り返します。まるで舞台袖から躍り出るダンサーたちのように。胎内から光の世界へ、何度も何度も繰り返し生まれ変わって、円環的に踊り、素直なからだで軽やかに舞います。

「めぐり花」は花の連句で、共創する「まつり」です。その空間は花による荘厳を待っています。自ずと立ち上がっていく物語に身を任せ、花の側なる生命を感じましょう。

+花の祝祭
日本列島に暮らしていると、微かな尊いものたち=「か み」の声はあまりに微かで、倍音の乗数で、僕たちはそれが聞きとれない 聞き分けられない。見えない音楽は、歌声は、いつも境界に顕れる、何かの意思として、訪ないを持って、闇に光ります。その最も美しく、儚いものが“花“です。
花を活ける人々は、そんな花を引き寄せ、八百万の神々の徴である花ばなを、床に立てるのです。たっぷりとした水は母なる海、羊水、子宮です。そこに花は立つのです。それは虚構ですが、虚構を超えて行くものです。別の世であり、そこに屹立する世界樹。世界の始源。同時にその場は、素直になれる場所で自分の本来も立ち上がります。

*当面(2022年4月ー8月)は赤坂のSansaさんのスペースをお借りすることができました。毎年塚田も11月のお店の記念日にお花を生けさせていただいてきました。小規模ながら皆さんとの学びのスタートにふさわしい空間と思っています。場所は時々変わって、場所に応じて花や人々との出会いを楽しんでいくようになるかと思います。

内容 歳時記などを参考に、めぐり花でその時手元にやってくる花について多様な見方
   や表現を学びます。その後めぐり花をすることで、自分の身体感覚とのズレやシ
   ンクロを感じ取っていただけるのではないかと思っています。

場所 Sansa
   東京都港区赤坂 2-20-19 赤坂菅井ビル1F
日時 2022・4・23、5・28、6・25、7・23、8・20、9・17 いずれも土曜日
   13時半〜15時半くらい(13時から準備、お店の営業があるのでお掃除も含め
   16時に撤収)
講師 塚田有一 赤坂氷川神社花活け教室「はなのみち」

年会費
   いずれ「結社」として年会費も想定し、ZINEなど制作したいと思っております 
   が、未定

会費 7700円(1回あたり/税込)
   花材費、場所代、テキスト製作費など含む

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