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【集客】スタジアム観戦の価値 -プロスポーツにおいてホームタウンが重要な理由-

前回のnoteで何人もの方からリアクション頂いて、改めてスタジアム観戦の価値を深く考えることが出来ました。


1.観戦動機に関する研究

プロスポーツの観戦動機に関する研究で「スポーツの観戦動機測定尺度(Sports Spectator Motivation Scale:SSMS)」があります。

スポーツの観戦動機測定尺度(Sports Spectator Motivation Scale:SSMS)の構成要素と定義 

●達成(Achievement)チームの勝利や成功と自分を結びつけて、達成感を得る●美的(Aesthetic)競技のプレーが持つ美しさ、華麗さ、素晴らしさを見る
●ドラマ(Drama)予測できないドラマテックな試合展開を見ることによって、興奮や緊張感を楽しむ
●逃避(Escape)日常生活から逃避し、さまざまなことを一時的に忘れる
●知識(Knowledge)競技の技術を学んだり、知識を深めたりする
●技能レベル(Skills)選手の技能レベルの高いプレーを見て楽しむ
●交流(Social Interaction)スポーツ観戦を通して、友人・知人や恋人と楽しく過ごすことができる
●所属(Team Affiliation)自分がチームの一員であるかのように感じる
●家族(Family)スポーツ観戦を通して、家族で楽しく過ごすことができる
●エンタテインメント( Entertainment)スポーツ観戦をエンタテインメント(娯楽)として単純に楽しむ
プロスポーツの観戦動機に関する研究 I : 観戦動機の構造と測定尺度の開発
(松岡ら,2002)から抜粋

そのすべてがスタジアムに来場する理由になり得ていますが、それぞれのスポーツや地域によっても異なります。

ここからは私の勝手な推測になりますが、上記の要素を便宜上4つに分類することにより、1つのスタジアムの中でも観戦する席の場所や、同行者の構成、そしてその人の来場回数によって要素の強弱が違ってくると思っています。

競技型観戦
●美的(Aesthetic)●知識(Knowledge)●技能レベル(Skills)

同伴型観戦
●交流(Social Interaction)●家族(Family)

劇場型観戦
●ドラマ(Drama)●逃避(Escape)●エンタテインメント(Entertainment)

参加型観戦
●達成(Achievement)●所属(Team Affiliation)

自分自身、いろいろなスポーツを観戦したり、多くのスタジアムを見たいという思いから、実際にチケットを買って(ファンクラブに入って)観戦に行くことがありますが、「球技型観戦」はある程度のそのスポーツの経験が無いと得られないと実感しています。
「同伴型観戦」も、私は1人で観に行くことが多いので、まわりにそのスポーツを観戦している人がいないと成り立たない(逆に言えば劇場型×同伴型が出来るとベストなのかも...)

そういった実体験からも、その競技、チーム、選手、スタジアムに興味・関心の薄い人(ライトファン、潜在顧客層)が、スタジアム観戦に至る動機は「劇場型観戦」×「参加型観戦」だと思っています。

2.「劇場型観戦」×「参加型観戦」

J1リーグの入場者数は1994年のJリーグバブルのあと大きく減少します。そして、2002年のW杯を契機としたスタジアム環境の整備と日本代表選手の人気により18,000人~19,000人まで回復しますが、2011年の東日本大震災の影響もあり、二度目の低迷期を迎えます。

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そこで、その第二低迷期の中で実施されたのが大会方式の改革(2015年に復活したJリーグチャンピオンシップと、2012年からに導入されたJ1昇格プレーオフだったと思っています。

「劇場型観戦」にとって重要なのは希少性です。

サッカーのワールドカップ予選、高校野球、高校サッカー、日本シリーズ、オリンピック。その試合がどれだけ重要な意味を持つのか。「勝つか負けるか」というスポーツを成立させる要素に、どれだけ重みを持たせることが出来るか(重みを感じさせることが出来るか)

ただ、どれだけその試合が重要かどうかは当事者にしか分からないですが、その競技、チーム、選手、スタジアムに興味・関心の薄い人を「当事者」にするのが「参加型観戦」です。

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日本人がオリンピックで日本を応援して、高校野球や高校サッカーでは自分の出身の都道府県の高校を無意識に応援する。

それがプロスポーツにおいてホームタウンが重要な1つ目の理由です。

Jリーグのときに、ある静岡のクラブの方から「静岡には3つの国がある」という話を聞いたことがありました。確かに静岡県は横に長く、1871(明治4)年7月の廃藩置県を経て静岡県・浜松県・足柄県と分かれていた影響もあってなのか、静岡の「清水エスパルスと藤枝MYFC」、浜松のジュビロ磐田、足柄のアスルクラロ沼津と4つのJリーグクラブがあります。

自分が所属している(と意識的or無意識に感じている)カテゴリーの広さはそれぞれ異なります。その方は「ホームタウンは広ければ良いわけではない」というのが口癖だったのですが、「参加型観戦」を生むためには、そのチームが自分の所属するカテゴリーだと認識するために必要なホームタウンの大きさ(名称)が必要なのかもしれません。

おらが町のチームとして、そのクラブを応援する。そして、クラブがその町にあることが誇りとなり、その地域のかけがえのない存在になっている。そんな町をいくつも見てきました。

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3.ホームタウンが重要な2つ目の理由

当事者意識は所属するカテゴリーだけではなく、ある1つの事象をキッカケに繋がりができることにより生まれることもあります。

以前、ある飲み会で競泳選手と横の席になったことがありました。自分の不勉強で、その選手がオリンピック選考選手だということも知らなかったのですが、私よりも一回り若かったのですが礼儀正しくて、選手の視線からスポーツビジネスのことも興味を持って話してくれた本当に良い青年でした。それ以降、競泳のニュースを見るたびにその選手を探して応援しています。
また、スポーツではないですが、うちの奥さんと子供たちは音楽グループの「NiziU」に夢中です。奥さんに「なんでそんなにハマったの?」と聞いたところ、「オーディション番組からずっと見ていて、その中の●●は本当にオーディションの頃から…」と熱弁されました。。

参加型観戦はチームスポーツを対象としているため、「達成」「所属」という表現になりますが、自分とその選手(歌手)の間に繋がりが出来たことにより応援が始まりました。ホームタウン活動で、プロの選手が小学校や町の商店街に来てくれて、それが忘れられない思い出となり観戦に繋がることもあります。

ただ、応援が始まったからといって、その応援が「観戦」に繋がらなくてはいけない。4年に一度のオリンピックが盛り上がっても、その盛り上がりが、国内の競技スポーツや選手に還元できないのもそれが理由かもしれません。

応援している対象が自分の生活している商圏(流通)から遠いと観戦には繋がらないため、商圏としてのホームタウンが重要になります。

スポーツ観戦の難しいところが勝敗の非確実性です。またすべての試合が劇場型観戦に必要な「希少性」を持った試合ではない可能性もあります。その非確実性を繋ぎとめるのが、スタジアムの観戦環境の改善とデジタルマーケティングです。

・訃報 浜家さんのご冥福をお祈りします

改めて想うと、私がスタジアムやデジタルマーケティング、ホームタウンについて考えるようになったのはJリーグエンタープライズに入社してからでした。

そのJリーグエンタープライズで、私にCRM、ホームタウンの大切さを教えてくれた浜家拓也さんが2021年4月13日ご逝去されました。

ファン、サポーターとの関係性を繋ぐためのCRMの重要性だけでなく、海外のサッカーにも造詣が深く「J1昇格プレーオフ」の発端となったイングランドの「ブラックプールFC」の話を聞いたことも覚えています。Jリーグのクラウドファウンディングの先駆けだった「愛媛FCストライカーファンド」を始めたのも浜家さんです。

浜家さんは地元の愛媛FCの活動も長年続けられており、私の実家に「愛媛FCに元気をもらった」というサポーターの想いがつまった本があります。いま思うとSNSが無い時代にUGCを作ろうとしていたのだと思います。

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本当に愛媛が好きで、Jリーグが好きで、サッカーが好きな人でした。

浜家さんには、サッカーのことだけでなく「自分が動くこと」「発信すること」で、世界を変えることができるということも教えてもらいました。本当にありがとうございます。浜家さんのご冥福をお祈りします。

<愛媛サポートクラブのホームページにも浜家さんが愛媛FCで活動されていた記載がありURLリンクさせて頂きます>


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