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【集客】”サッカー観戦の沼”にハマる人と、その沼にハマらない人の違い。

サッカー観戦のメイン顧客はファミリー層だと思っていたのですが、そのアプローチは本当に難しい…と最近改めて思うことが多くなってきました。。
特に自分が幼稚園と小学生の子供を持つ親になってきたからこそ実感することも増えてきています。

●ファミリー層がサッカーを観に来る動機は何?

スポーツの観戦動機測定尺度(Sports Spectator Motivation Scale:SSMS)について過去のNoteでも書いたのですが、大きく分けて4つに分類されます。https://note.com/comospo/n/n93ad92de0eaf

調査をしたわけではなく個人の所感なのですが、その4つは、サッカー観戦時のスタジアム座席(配席図)にも違いが表れている気がします。

  • 分類:参加型観戦 → 座席:ゴール裏
     観戦動機:達成、所属

  • 分類:競技型観戦 → 座席:メインスタンドやアッパー席(上層階)
     観戦動機:美的、知識、技能レベル

  • 分類:劇場型観戦 → 座席:ゴール裏(もしゴール裏が完売なら他でもOK)
     観戦動機:ドラマ、逃避、エンタテインメント

  • 分類:同伴型観戦 → 座席:バックスタンドやアッパー(比較的単価の低い席)
     
    観戦動機:交流、家族

今まで、多くのJリーグクラブのホームタウン招待や夢パス(子供招待)におけるメインターゲットは子供連れのファミリー層でした。
個人的にも、「サッカーをプレーしている子供のいるファミリー層」は、サッカー観戦にもっとも興味・関心が高くて、スタジアムに来てもらいやすい人達だと思っています。

ただ、その人たちが何を求めてスタジアムに来ているのかを考察すると、「家族で週末にどこに行こうか?」という選択肢の1つとしてサッカー観戦が選ばれており、スポーツの観戦動機測定尺度では「同伴型観戦」や「劇場型観戦」が当てはまるのではないでしょうか。

●「家族との時間」や「エンタテインメント」が動機だと選択肢(競合)が多すぎる問題

ただ、家族の中にサッカーをプレーする子供がいたとしても、特定のチームや選手に愛着がある訳ではありません。
また、父親や母親がサッカー日本代表の試合をテレビで観ているようなファミリーも同じです。

その人達は、学校や地域で配られるチラシや招待券(最近であればデジタル広告など)をキッカケにスタジアムに来場します。

もともとサッカーが好きな人向けの施策なので、もしそのクラブに日本代表選手などの有名選手がいれば「0→1」の初来場のハードルは高くありません。
鈴鹿ポイントゲッターズに移籍した三浦選手(カズ)の効果で集客が3倍になったのも、同じ現象だと思われます。

元日本代表FWの三浦知良選手(55)が加入した鈴鹿の開幕戦。 会場となった四日市市中央陸上競技場には大勢の観客が詰め掛け、先発出場した「キング・カズ」のプレーを堪能した。 発表されたこの日の観客数は4,620人。 鈴鹿のホーム戦で最多だった2019年の1,308人から一気に三倍超に膨らんだ。

2022/03/15中日新聞

ただ、同伴型や劇場型観戦は長続きしません。

その理由として、同伴型や劇場型観戦の動機は、他のサービスでも代用可能で、「家族との時間」や「エンタテインメント」でサッカー観戦を選んでもらうには他の選択肢(競合)が多すぎる問題があるからです。

しかも、サッカー観戦は品質が本当に不安定です。
応援していたチームが負けてしまうだけでなく、無得点での引き分けだったとしても試合の満足度は低下します。そして、それに加えて冬場や雨の観戦であれば、寒い中2時間もずっと耐え続けていなければいけなかったり、夏場でも日差しが強すぎて満足に試合が見れないスタジアムもあります。。
アクセスも車であれば大渋滞、公共交通機関も満員で入場制限。
家にいれば好きなコンテンツやゲームが、好きな時に快適に遊べてしまう。友達や家族と一緒に遊ぶにしても、ショッピングセンターやレストランで過ごす2時間のほうが、残念ながらサッカー観戦より快適です。

●参加型観戦もしくは競技型観戦へシフトしてもらえるか(3回の壁)

サッカーに興味・関心のある人達が1回スタジアムに観戦に来てもらったあと、3回目の壁にぶつかります。

年間来場回数が3回を超えると常連化するというデータがJリーグのデータ分析から導かれています。

なぜ3回目の壁にぶつかるのでしょうか?
もし「家族の週末の過ごし方」の選択肢がサッカー観戦しかなければ、恐らく多くの人が簡単に3回目の壁を超えてきます。
しかし、前述のように同伴型や劇場型観戦には多くの競合サービスがありますし、サッカー観戦は様々な理由から品質を安定させることも困難です。
(もちろん、品質を安定させるために「5つの不:不満・不安・不足・不便・不快」を解消させるアプローチも必要です)

では、その現状の中で3回目の壁を超えられるようになるためには、「参加型観戦」もしくは「競技型観戦」にシフトしてもらうことで、他の競合では提供できない価値をサッカー観戦で経験できるようになってもらうことが必要です。

●参加型観戦に必要なのは、「そのクラブまたは選手との接点を起点とした自分事化」

最近YouTubeやTiktokなどのSNSや、それに関する記事を見ていて興味を持ったキーワードは”推し活”です。
推し活には、「他社貢献」と言われる心理学的な背景があるようです。

自分はあまり高校野球には詳しくはありませんが、やっぱり自分の地元の高校が甲子園に出ると嬉しくなります(その高校に知り合いもいなくて接点がないにも関わらず)。
また、芸能人の顔と名前を覚えるのも本当に苦手なのですが、菅田将暉さんが大阪出身だということを知ってから、菅田将暉さんの名前と顔が一致するようになっただけでなく、出演しているドラマにも少し興味を持つようになりました。

Jリーグクラブでも、その地域出身の子供が大きくなって、そのクラブのトップチームに入団してJリーグで活躍して、さらには日本代表に選ばれるようなステップが理想です。
ただ、そんな理想形は20年前の一部のクラブで実現できていたのですが、多くの日本代表選手が海外のチームに所属している状況ではできません。
また、代表選手でなくJリーグで活躍している選手であっても、その多くが地元出身ではない(もしくは他チームからの移籍選手)という状況になっています。

そんな中、選手とお客さんの接点を作る試みがいくつかのクラブで始まっており、愛媛FCの「1市町1選手応援事業」や、水戸ホーリーホックの「ホームタウンPR大使指名ドラフト会議」が代表例になっています。

https://ehimefc.com/topics/topic21013.html

https://sports.yahoo.co.jp/official/detail/202203070024-spnaviow

また、ホームタウンという切り口だけでなく、その選手の人間性や内面を知ってもらって選手に”特別な想い入れ”を持ってもらうというアプローチは、サッカー以外の多くのスポーツでもファンを生み出すキッカケになっています。

恐らくアイドルも同じで「可愛いから」「カッコいいから」という理由だけで応援しているのではないと思っています。
そのアイドルを知っていく中で、自分との間に共通点や接点が生まれて、それが起点になって自分事になっているタイミングがあるのではないでしょうか。

それが推しになる瞬間。タイトルにも書いた”沼にハマる瞬間”だと思っています。


また、選手個人でなくとも、そのクラブが主体になることもできます。
横浜F・マリノスは「この街には、横浜F・マリノスがある」という言葉をずっと使い続けています。Jリーグが開幕した時は「日産」のチームでしたが、いまでは横浜F・マリノスから日産のカラーが良い意味で薄くなって、横浜市民におけるクラブへのロイヤルティが高まってきています。
横浜という共通点を起点に自分事化してもらうためのブランディングの成果だと思っています。


また、多くの本や記事でも取り上げられている川崎フロンターレも富士通が母体ですが、川崎フロンターレというブランドも「川崎>富士通」というイメージになっており、「フロンターレは川崎にとってかけがえのない存在である」という価値を生んでいます。

●ファンマーケティングで重要なのは「接点を明確にすること」と「伝えるためのコミュニケーション」なのかもしれない


1回→3回の来場の間に、「クラブまたは選手」と「来てもらったお客さん」との間に接点が作れるか。上に挙げたように「ホームタウン」は重要な接点ですが、それ以外にも接点があるかもしれません。

スタジアムでサッカーを観てもらったり、イベントなどのサービスを提供するだけでは接点は作れないと思っています。
「接点を明確にすること(クラブや選手のブランディング)」と、「それを伝えるためのコミュニケーション」のどちらも必要です。

コンテンツマーケティングやファンマーケティングとも呼ばれていますが、今の自分の仕事に置き換えてみても、サッカー観戦という領域以外でも重要なことだと実感しています。


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