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わたしの家族 その2
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わたしの家族 その2

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父と母はよく喧嘩をしていた。それもちゃんと激しい喧嘩。
しかし意外なことに、二人が喧嘩している場面を見たことがない。
ただリビングの扉を開けると、二人の喧嘩の跡が残されていた。

あの日も、二人は喧嘩をしていたのだろう。

その日は、母の日だった。
母が仕事に行っているうちに、テーブルの上に置手紙と共にカーネーションを置いて、私は祖母の家に遊びに行った。

それから家に帰ってくると、テーブルに置いたはずのカーネーションは、栄養ドリンクの箱の中にぐしゃぐしゃになって詰められていた。

父と母はとても感情的な人だ。それ故,、喧嘩も激しく、いつも何かが犠牲になる。
その日は、私の愛情が犠牲になった。

そんな喧嘩ばかりの夫婦関係は、ある日突然終わった。
私が小学校3年生の時。冬の寒い日、父の部屋で両親とお互いの親族が集まって話し合いをしていた。
私と兄と姉はリビングでテレビを見ていた。

話し合いが終わると、父の部屋から出てきた母が、「ごめんね」と一言残し、荷物をまとめて始めた。父はそんな母を怒鳴りながら追いかけ、父に涙を流しながら謝る祖母の姿が、これから私たちに起こる全てを予感させた。

兄と姉は、何事もなかったようにテレビを見続けていた。
今思えば二人は、こんな両親のせいで、早くに大人になりすぎたようだった。
私は子どものまま、学校から貰った保護者のサインが必要な書類とペンだけを持って家を出た。
母を追いかけていい理由がそれしか見当たらなかった。

こうしてあの日から、母のこだわりが詰まったあの家は、母の帰る場所ではなくなった。
傾いていた私たち家族が、音を立てて崩れ始めた瞬間だった。
しかし同時に、私たち家族の始まりでもあった。

                  text/みさと

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