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【代表インタビュー】 会社設立の経緯と想い

こんにちは。交交株式会社です。

私たちは島根県隠岐・海士町で自然エネルギー導入支援事業や地域の未利用資源活用支援事業を中心に事業をスタートします。本記事では、交交株式会社設立の経緯や背景について代表の浅井峰光と大野佳祐の想いをインタビュー形式でお届けします。

私たちが目指すゆたかであたたかな「交わり」とは何か。
なぜ、自然エネルギー導入支援事業や地域の未利用資源活用支援事業を中心に事業をスタートしようと考えているのか。これまで異なる分野で働いてきた二人がなぜ同じ船に乗ろうと考えたのか。

ご笑覧いただければ幸いです。そして、皆さん一人ひとりと、よりよい未来をつくる仲間として手を取り合うことができたら嬉しいです。




これまで島になかった発想の事業で、さまざまな「交わり」をつくる会社


―『交交株式会社』は、どのような会社なのでしょうか?

大野:島内には、まだまだ活かしきれていない魅力があります。足元に宝物がたくさん眠っているわけです。僕たちは、まだ活用されていないそういったひとつひとつを結んだり、繋げたりして、交わりをつくっていくことで、この島が掲げる「ないものはない」の本当の価値を事業化できるんじゃないかと思っています。


浅井:世の中には、ワクワクするような新しいテクノロジーや取り組みがたくさんあります。もしそれが、本土から遠く離れたこの島でも実現できればという妄想が起業の発端でした。
『交交』では、そういったテクノロジーや取り組みの一部をこの島で実現するために、地域側のハブとして、島外の企業やおもしろいテクノロジーを持っている人たちを島内の魅力や未利用資源と結んで、これまで島にはなかった発想で、みんながワクワクするような新しい事業を生み出していきたいと考えています。

そして、今の若い世代の子たちに、とくにこの島で学んだ子たちに、参画してもらえるような事業を手がけていきたいと思っています。また、彼ら・彼女らが新たに何かを仕掛けたいと考えたときに、その場所として、この島を選びたいと思ってもらえるような事業をつくっていきたいと思っています。


大野:
『交交』が生み出す事業を通して、人と人のあたたかな交わり、島内外の新たな交わり、未利用資源とテクノロジーの交わりなど、さまざまな「交わり」をつくることが一番やりたいことです。『交交』という名前には、そういう願いを込めてつけました。


浅井:
現在、具体的に進めているプロジェクトとして「電力のおすそわけプロジェクト」というものがあります。簡単に説明をすると、自然エネルギーで発電した電力と島の「おすそわけ」文化を融合して、島内で人と人の関係性が新たに生まれる仕組みづくりや、そこに脱炭素やSDGsの実現を目指す島外企業との新たなプロジェクトを生み出す交点を作ろうとしています。


『交交株式会社』が生まれたきっかけ


―大野さんの経緯をお聞きしてもいいですか?

大野:僕自身は隠岐島前高校の『高校魅力化』に取り組んできて7年、魅力化プロジェクトとしてはもう10年以上になるので、最初に卒業していった世代は今ちょうど30歳になっていたりします。なので、「その子たちがそろそろ島に帰ってくるといいなあ」と思っていたりするんですね。「そろそろ島に帰ってもいいかなあ」と思ってもらえる交わりをどう作り出すのか、僕としてはこれが『交交』への最初の大きなモチベーションだったと思います。

さらに去年から、教育から積極的にはみ出していったことで、「教育だけがうまくいったとしても、町がうまくいかなければ次へと繋がっていくことはない。この二軸がたえず循環するような仕組みをつくらないといけない」と改めて強く意識するようになりました。そうこう考えているうちに、実際に自分でも雇用を生み出す事業をつくってみたいと思うようになったというのが、経緯だと思います。


―浅井さんの経緯をお聞きしてもいいですか?

浅井:少し話は遡るんですが、海士町に来る前の前職では、経営者さんの伴走をするというのが仕事でした。そのときの経験で「想いをもつこと」と「その想いを実行していくこと」、その両輪があってはじめて人が本質的に変わり・事業も変わっていく、そういう姿を何度も見てきました。

その後この島に移住し、今は『株式会社風と土と』というところで、大企業に勤めている人たちに向けて研修をするという仕事をしています。日々の仕事の中では感じづらい「自分は本当に何がしたいのか」、「自分はどんな社会を望んでいるのか」、そういった個人の内なる想いを発掘するような研修です。

ここでの仕事ももう5年になりますが、どうしても、前職での経験から得た「発掘した想いを実際に実行していくこと」に大切さを感じていたので、研修参加者がもっともっとその想いを実現できる場があればと、ずっとそう思ってきたんですね。じゃあ、いっその事、自分でそういう場をつくってしまえばいいじゃないか。それが僕の『交交』をつくろうと思った最初のきっかけです。

研修で対象としているような大企業のみなさんが、仕事の一部として、発掘した自分の想いのトライアルを、この島で一緒にできれば嬉しいですし、さらにそれらがプロジェクトとして形になっていけば、Uターンにとっても、島外の企業に就職するよりもふるさとで仕事がしたい!って感じてもらえるんじゃないかって思っています。


―畑違いのお二人が、どうして一緒に始めることになったのでしょうか?

大野:実際に、このマーケットの小さい2,200人の島で、どういう事業を手掛ければ人を雇用できるようなインパクトを生み出せるのかって考えたときに「結構、難しいなあ」というのが率直な感想でした。特産品を島外へ売るということを促進するような「地域商社」を軸に、と思ったりもしていたのですが、ちょうどそのときに、島のお金の流れを分析した資料(産業連関表)を見たんですね。

すると、島外で何かを売って稼ぐよりも、島内消費を高めて地域内経済循環を促進する方がインパクトを生み出せるんじゃないかということがわかりました。じゃあ何を外から多く買っているのかと言えば、電力だったんです。


浅井:
その頃、僕の方は役場からの業務委託で、Uターンを増やすために島で仕事をつくろうとしていたんですね。それが電力事業で、佳祐さんに力を借りようと話を持っていきました。


大野:
浅井さんからこの話を聞いたときに、すぐに、「あっ、これだ!」と思いましたね。渡りに船だったというか。その後、いくつかの経緯はありますが、これが『交交』を二人で始めることになった最初のきっかけです。

実は同い年の二人(未年です)


「なつかしさ」にこそ、新しい「未来」の種がある


―キャッチコピーの「the RETRO FUTURE」には、どのようなメッセージが込められているのでしょうか?

大野:たとえ島を未来へと繋げていけたとしても、先祖代々大事にしてきたものがないがしろにされるのは嫌だなあって思ったときに、改めて、その大事にしてきたことって、一体何だろうかと自分なりに考えてみたんです。

例えば、太陽光パネルを設置する際に、素朴な自然を台無しにすることや美しい海を覆い隠すようなことは絶対にしたくない、果たしてこの気持ちはどこからくるんだろうかって。

そこでイメージしたのは、田んぼの風景に流れてくる風を感じたり、鈴虫が会話するように鳴いているのを聞いたりすると沸き上がってくる、「ああ、こういうのなんかいいなあ」っていう言い知れない感情、心象風景とでも言うんですかね、そういったことでした。そのときに、ふと出てきた言葉が「なつかしさ」というものだったんです。

とはいっても、その「なつかしさ」をそのまま留めようとしても、この変化の早い世の中ではなかなか難しい話であって、それを未来に繋げていくには、やっぱり自分たちが変わらなければならないこともあります。その「変わらないために変わり続ける」必要があるという、ある種の矛盾を抱えながら進んでいかなくていけない。でも、その矛盾にこそ未来があると僕らは信じていて、それを「なつかしい未来」と矛盾したメッセージで表現できるんじゃないかなと思ったんですね。

コンセプトサイトの「the RETRO FUTURE」は、その「なつかしい未来」という言葉を、ちょっと英語で格好よく言ってみただけです(笑)


浅井:
違う角度から少し付け加えると、これまで地域には、例えば少子高齢化のような課題があって、それを解決することがビジネスチャンスだと言われてきたと思うんですね。
でも、僕たちはそうではなくて、便利になって失われていく「なつかしさ」、そこに感じる「幸福感」のようなものにこそ、企業が新しいモノやサービスを生み出していくヒントがあるんじゃないかと考えているんです。

ひとつの象徴的なものとして、島には「おすそわけ」文化があります。ここに住んでいると実感するんですが、町の人の幸福を支えているのは、物質的な豊かさやGDPには全く反映されない、そういう何気ない文化や習慣のひとつひとつであることがよくわかります。

僕たちは、従来のマーケティングでは考慮されることのない、こうしたお金には換算できないような見えない価値を事業に取り入れていきたい。そこにこれからの可能性を感じているんですね。そして、幸福度の高い島の人たちが、より幸福になるようなモノやサービスを生み出すことができれば、それは、これまでとは全く違ったイノベーションになるに違いないと思っています。

いま進めている電力事業では、脱炭素で新しい産業を生み出している企業と、お仕事をご一緒していますが、これまでの考え方であれば、単に太陽光パネルをたくさん置く方が利益を生み出せることは間違いないんです。
でもそうではなくて、僕たちが大事にしていきたい「交交らしさ」というのは、自然エネルギーで生み出した電力を使って、「どんな幸福を生み出せているのか」というところです。

こういったコンセプトにワクワクしてくれる企業と一緒に共創していければ嬉しいですし、また、新しい製品やサービスを生み出そうとしている企業にとっても、きっと新しいチャレンジになり得ると思っています。


日々の居心地のよさを丁寧につくっていくことが、未来をつくっていくことに繋がる


―海士町の取り組みを見聞きしていると、社会を先取りしたような事例が多いと思うのですが、お二人にも『交交』を通じて、「新しい未来や社会をつくりにいくぞ!」といった想いがあるのでしょうか?

大野:これまでの海士町の15年間は、どちらかと言えば「未来をつくりにいくぞ!」といったテイストが強かったと思います。実際のところ、僕もそのビジョンに惹かれてやってきたし、たぶん浅井さんもそうだったんじゃないかな。

ただ、僕自身は随分と変わってきていて、今でも社会や未来をよりよくしたいという気持ちを持ってはいるんですが、未来に対してなりふり構わずコミットしたり、強烈なビジョンを掲げたりする必要性も感じつつ、最近ではどちらかと言えば、目の前のことを一生懸命にやっていくことが、結果的に地域や社会に資するのかもなあと感じている部分があります。

未来にコミットをするとき、よく「今日をないがしろにして明日をつくりにいく」みたいな話になりがちだなと思うんですね。すごく男性的で「ゴリゴリいきますよ」って感じとでもいうんでしょうか。

ここ数年、僕自身にも子どもが生まれて子育てをするようになったり、まだ真似事ですが田んぼをつくるようになったことで、日々の居心地のよさを地道に丁寧につくっていくことの価値の大きさに目を向けるようになりました。未来づくりに没頭することも大切にしつつ、日常という「今」も大切にしていけるような、その二つの間を上手く行き来できる芯のしなやかさが、幸福に生きていくための本質かもしれないと感じる体験だったように思います。

『交交』のプロジェクトでも、そのような価値を丁寧に結んで交じわりをつくっていけば、自ずと「なつかしい未来」の実現に近づいていく気がしているんです。そして、それがひいては未来をつくっていくということにも繋がるんじゃないか、そんなふうにアップデートしています。


浅井:
確かに仕事上ではブランディングとして、「未来をつくるために集った800人の移住者」なんていう表現を使ったりしています(笑)。でも、大野さんの言葉では「男性的」、僕の言葉でいうと「昭和的」になるんですが、ただ単に未来をつくっていきたいのであればこの島に来ていないですね。

直近の目標や目的だけを考えて、効率化と合理性を追求し、事業を拡大・成長させていくことによって人が幸せになれた昭和モデルはもう限界がきていて、何か違う価値観の軸で発想をしたり・創造したりしないといけないんだろうなと思っているからこそここにいて、そして「交交」をつくろうと思ったんですね。

先程から話しているような「幸福感」や「見えない価値」をどう現実に落とし込んでいけるのか、それはすぐには利益に結び付かないかもしれないし、直近では何も起きずに、現実を越えないかもしれません。だからこそ、こういうことをワクワクしながら、これまでにない新しいものを一緒に生み出すことを考えてくれる、企業やテクノロジーを持った人たちとの交わりを、地域側のハブとして、より一層つくっていきたいと思っています。


小さいかもしれないけど、島に旗を立ててみたい


―最後にメッセージはありますか?

大野:そうですね。海士町には「ないものはない」というコンセプトがあるんですけど、島内にもっとそのコンセプトを体感できる事業をつくっていきたいです。

そういう意味においても、繰り返しにはなりますが、まずは自分たちの足元にあるまだ活用できていない資源や魅力に、もう一度しっかりと目を向けることから始めたいです。そして、それらを上手く活かしたプロジェクトが評価されることで、そこがまた次の交点になっていく。そういうことが本当に事業としてできるのか、そこはすごく楽しみなところです。

この電力から始まるいろんな事業体への広がりが、最終的には海士町の知的財産となって、「『ないものはない」を体現するおもしろい会社だね」っていうふうになっていきたいし、それを機に、島にいろんな人が遊びに来てくれたり、学びに来てくれるようなことが起こせると、僕としては嬉しいかなあって思っています。それが結果的にはこの島の教育にも必ずつながってくるので。


浅井:
僕たちが先にプロトタイプを作るので、島の人や事業者さんに、心から喜んで使ってもらえるようなモデルが完成したら、そしてそれが地域で活用されたら嬉しいです。そういう新しいチャレンジがこの島で行われていれば、きっと、それを担うために帰ってきたいという人がいるんじゃないかなあって思うんです。


大野:
たぶん海士町は今、トランジションの時期を迎えているのではないかと思います。力の入った前のめりの状態から、少し力を抜いてもう一度周りを見渡す期間というか。そのトランジションを、僕らも促せるようにというと大袈裟ですけど、なんていうかなあ、小さいかもしれないけれど、一つ目印になる旗を立ててみたいっていう感じはあるかもしれないですね。

色々話はしたんですが、最終的にはシンプルに、「あの人たちがやっていることは、なんかいいことだよね」とか、「よくわかんないけど、なんかおもしろいよね」って言ってもらえるようになっていくといいなあって思います。

たくさんの縁がつながるよう縁側で撮影しました




最後までお読みいただきありがとうございました。

私たちが描く未来とそれを実現するための事業内容は、こちらのコンセプトサイトに表現されておりますので、よろしければご覧ください。

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