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「暮らし観光」とは?僕らが鞆の浦でやりたいこと

こんにちは。コト暮らしの長田涼です。

東京から移住して、2年と2ヶ月。
このまちでやれることややりたいこと、まちへの貢献につながること、それらを考える時間がどんどん増えてきました。

「いろいろやっているね、考えているね」と言われがちなのですが、今やっている古民家カフェ「ありそろう」も含めて、今後やっていきたいことがすべて繋がっている考え方・ビジョンがあります。

それが「暮らし観光」

今回はその「暮らし観光」について、頭の中で考えていることや実際に感じていることを中心に記しておきたいと思います。

まだまったく形にできていないのですが、現状考えていることをここに書いてみます。正解を提示したいのではないので、あくまで僕たちが手探りしている様子を見てもらうような感覚で読んでいただけると幸いです。


暮らし観光とは何か?

名前の通り、暮らしを体感する観光のあり方です。そのまちに当たり前にある「暮らし」を感じれる体験をベースにして、まちの人や日常の流れを感じ、些細なところある豊かさを見つける観光。この考え方こそが、”国の光を観る“が語源である観光の原点に帰ることだと思っています。

これまでの観光は、景観や建築物などの観光名所を回ったり、観光客向けの飲食店や土産屋にて楽しむようなあり方がメインだったと思います。

鞆の浦という観光地に移住してきて強く思ったのが、「従来の観光のあり方のままでいいのか?」ということでした。鞆の浦は、年間200万人の観光客が訪れています。美しい景観、歴史的な建造物やまち並み、観光客向けの高級宿など、を目的に多くの方が外から足を運んでくれています。海外からも観光客も珍しくありません。

鞆の浦に広がる瀬戸内海
風情あるまち並み

まちの存続の意味では、たくさんの方に訪れていただき、たくさん消費してもらうことは大切なのでしょう。しかし、それがまちで暮らす人のためになっているのか?本当にまちのためになっているのか?と、疑念を抱いたのです。

それはこのまちを見ていて、明らかに観光事業者と地元民はお互い他人事という認識をされている感覚を感じましたし、観光客向けのお店が増えても地元民はいっさい足を運ばない。そんな場がたくさん増えていくところで、まちの人の豊かさには何もつながっていない現状が見て取れました。

また、私たちはたくさんの友人が鞆の浦に遊びにきてくれていて、2年間で100名ぐらいの人をまち案内してきました。僕らが案内するのは、まちで活動する人や暮らす人との交流の機会であり、ここに流れている日常のお裾分けです。そうなると、ひとつひとつの体験濃度が濃くなり、どうしてもちゃんと案内しようとすると2泊3日ぐらいはほしいのです。

その一方、周りを見ていると、ふらっと来た観光客は数時間の滞在で「こういう感じね」と「こんなもんか」という感じで帰っていってしまう。実際に、福山市で暮らす人はあまり鞆の浦に訪れていません。「鞆の浦って何かありましたっけ?」ぐらいなテンションです。

それらを受けて、なんだかめちゃくちゃもったいないと思ったんです。いや、もっと違うところにおもしろさがあるんだよ!と。せっかく来てくれたなら、このまちの本当の魅力にも触れていってほしいと。

鞆の浦というまちには、昔ながらの地域の付き合いや文化が色濃く残っていて、おせっかいな人もたくさんいて、みんなこのまちのことが好きなんです。異様に高いシビックプライド。そこに触れることで、多くの気づきを与えてくれます。東京からはじめてこのまちに来た時、それが衝撃でした。

その体験があったからこそ、僕らは今このまちにいます。きっと、同じように深い体験があったからこそ、何度も足を運ぶまちになり、関係人口となり、移住にもつながっていく。

でも、現状の観光のあり方では、そこにタッチするのはかなり困難です。環境としてまだまだ必要なものが揃っていないですし、観光事業者も個々で奮闘しているため、従来の観光の形を脱することができないでいる。

そういった現状を変えられないか?もっとまちの暮らしが豊かになる観光の形はないのか?そんなことをつい考えてしまいます。

暮らし観光の輪郭をつくむために、これまでの観光との比較をしてみました。


なぜ今暮らし観光なのか?

これまでの観光のあり方にはいくつかの課題がありました。

まず、基本「外の人に消費してもらう」というスタンスを持っていて、そのために地域資源を使うという構図です。短期的に見れば、儲けることにもつながるため意味のあるものでしたが、外的要因に左右されてしまう持続可能性の低いものです。

また、観光事業者とその地域をつくっている暮らすひとの間には、明らかな分断が起こっています。住民にとっては観光というものはどこか他人事。観光事業者も、まちで暮らすひとのためという視点もなかったでしょう。これまではそれでよしとしてきたかもしれませんが、人口減少が進む現代において、まちを存続させていくためには、手を取り合うことが大切になります。

暮らし観光がつくる未来とは、まちで活動するひとや暮らすひとの関係性を構築するものであり、観光客とまちの関係性を構築するもの。ただ消費するだけの観光を脱却し、共に未来をつくる共創の観光を築くこと。それが暮らし観光の本質だと考えています。

消費的な観光から、共創的な観光へ。


暮らし観光を実現するために必要なこと

これらの暮らし観光を実現するためには、いくつかのピースが必要なのでは?と感じていることを整理してみたいと思います。

①まちと外をつなぐコーディネーターの存在

自然と暮らしと観光が混ざることはなかなかに難しく、その間をつなぐ役割を持つ人が必要です。地域というコミュニティをマネジメント、コーディネートしてくれるスキルを持った個人または組織が必要不可欠です

②関わりが持てて、シンボルとなる拠点の存在

「ここに行けばそれが体感できるかもしれない」そんな期待を持たせてくれて、かつ実現してくれるリアルな拠点の存在も欠かせません。それがシンボルとなることで、まちの方々への発信にもつながります

③中長期滞在が可能な宿と仕組み

暮らし観光には、中長期滞在をしてもらうことが求められます。そのためには、そこそこのプライスで泊まれる宿が必須ですし、なるべく中長期滞在しやすい仕組みを構築しなくてなりません

④外へ伝え、共感者を集えるメディア

この価値観や世界観を伝え、ちゃんと共感してくれたひとに届くこと。特定多数のひとへ届ける術は、観光である以上大切な役割です。そういったことが可能なメディアとしての存在・機能があること

⑤官民連携

民間業者だけでは、その土地に根ざし切ることはなかなかに難しいと思います。どうしても行政との連携が必須になるタイミングが来る。それを見越して、官民連携の関係性を構築しておくことも、とても大切な要素


具体的にやろうとしていること

そんな「暮らし観光」を実現するために自分たちは何ができるのだろうか?

現在走り出している企画も含めて、大きく2つあります。

ひとつは、暮らし観光を真ん中に置いた銭湯をつくろうとしていること。そのためにも、自社企画として「わたしのまちで銭湯をはじめるスクール」をやっています。

まちにある暮らしの延長上にあり、かつ観光も入り交じれる空間や機能とはなんなのか?それを考えた時に、銭湯がとてもいいバランスを持っていることに気がつきました。

もともとは、自分たちが銭湯のある暮らしを送りたい。という出発点だったのですが、暮らし観光の構想も交えて考えた時、このまちでやる意味を強く感じたんです。(銭湯構想についての詳細はまた別の機会に)

もうひとつは、私たちの目線で魅力を届ける鞆の浦雑誌をつくること。先ほどあげた要素でいう、メディア的なものにあたる取り組みです。

友人のライター 阿部光平さんが函館でつくった、「生活圏」。パブリックではなく、私的な目線を大切にしてつくったガイド雑誌です。この本のあり方に感銘を受けて、阿部さんにも協力をいただきながら、雑誌制作を進めています。

完成後は、この雑誌を起点とした人の流れを作れればなと考えています。


最後に

縁もゆかりのない土地に移住をして、このようなことを考えて活動しているのは、シンプルに僕らが鞆の浦というまちを好きになっていて、この好きを共有したいから。そして、このまちと個人の関係性がよいものになっていくいいなと思っているからです。

さまざまな事件や出来事があった上で、今の鞆の浦が成立しているからこそ、これからの未来は関わっていくひとはまちのこれまでを尊重した上で、適した関係性を築いていければいいなと思います。

まちのひとたちはまちへの愛着が強いからこそ、このまちをただ消費してほしくないという姿勢を持っていて、消費の匂いには敏感なところがあります。(他のまちでもそうかもしれませんが)

だからこそ、消費的な関わりではなく、共に価値を生み出していく共創的な関係を築いていく環境や仕組みや文化をつくっていきたいんです。その実現のために、暮らし観光があるのではないか?というのが現在の仮説です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!妄想していることを実現できるように、一歩ずつ前進して参ります。

それでは!


●暮らし観光に興味を持ってくれた方は、ぜひ島根県石見銀山で活動している「石見銀山生活観光研究所」をチェックしてみてください!生活観光に取り組む、大リスペクトしている皆さんです


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長田 涼
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