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「解凍」される外国語

 こんにちは。ことばの本屋Commorébi(こもれび)の秋本です。

 先日、新井リオさんをお招きして開催した『英語日記BOY』(2020年、左右社)はおかげさまで満員御礼となり、本当に素敵な会でした。改めまして、新井さん、左右社の皆さん、お越しいただいた皆さん、そして新井さんのインスタライブでご覧くださった皆さんに心より御礼申し上げます。ありがとうございました。
 イベントについての所感は改めて書くとして、今日は外国語の「解凍」のお話です。

 私は、大学の第二外国語ではドイツ語を選択し、1年間勉強した後、さらに2年間、原典講読などでドイツ語に触れました。卒論のテーマに選んだのはフランス語で著述をした人物だったので、最終的には(当時は何も読めなかった)フランス語に縁ができたわけですが、それまでは、言うならば「ドイツ語の人」だったわけです。
 ですが卒業後は滅多にドイツ語に触れる機会もなく、せいぜいが時々、テレビで放映されるドイツ語のドキュメンタリー番組(もちろん字幕付です)を眺めるくらい。当然、以前なら読めていたものも読めなくなります。

 そんな状況を「なんだかなぁ」と思っていたのですが、最近、「もう一度ドイツ語に取り組んでみよう」と思うきっかけとなるできごとがいくつかありました。

 ①ドイツ語を音読する機会があったこと。

 昨年末に開催したこもれびよりVol.10「Les Petits Princes」で、いくつもの言語による『星の王子さま』を扱ったことは、これをお読みの多くの方はご存知かと思います(ご存知ない方のために、念のためイベントレポートへのリンクをお示ししておきます)。

 この時、たまたまドイツ語は扱わなかったのですが、会が終わった後、ご参加者のうちのお一人と塾長・志村と私とで、ドイツ語版の冒頭部分を音読してみたのでした。久しぶりに自分の口からドイツ語が出てくるのが思った以上に楽しく、まずこの時点でドイツ語への想いが芽生えました。

 ②『ファウスト』が面白いと聞いたこと。

 恥を忍んで告白しますが、ゲーテの『ファウスト』を呼んだことがない私。それこそ大学でドイツ語を勉強していた時に、当時はまだ上から下まで紀伊國屋書店だった新宿・サザンテラスのあのビルに行き、レクラム文庫が並んだコーナーで『ファウスト』を買おうかどうか悩んだ経験はあるのですが、結局買わずじまい・読まずじまいで来てしまいました。
 そんな縁があるようでなかった作品ですが、先日、ある友人と話をしていたところ、彼の口から「『ファウスト』は面白いですよ」との言葉が出てきたのです。あぁ、ファウスト!数年ぶりの再会!
 というわけで、「作品を読んでみる」という点からもドイツ語に接近する機会となったのでした。

 ③イベントに新井リオさんをお呼びし、お話を聞いたこと

 ここで冒頭の話に戻るわけですが、先日ことばの本屋Commorébiとして開催したイベントに、イラストレーター/デザイナー/ミュージシャンの新井リオさん(新井さんのWebサイトはこちら)をお招きしてお話を聞きました。これまで、新井さんのインスタライブを視聴したり、他のイベントにお客としてお邪魔したりしたことはあったのですが、自分自身が主催者となってお話を伺うのは初めてのこと。こもれびの空間で、なおかつ間近で聞く新井さんのお話はいつも以上に格別で、素直に「自分ももっと頑張ろう!」と元気をもらえるものでした。それは、「生きていく」という大きな事柄についてもそうですし、「勉強する」という身近な事柄についてもそうです。
 すっかり新井さんの熱量によって私のハートに火がつきまして、「よし、ドイツ語やるぞ!」という気になった次第です。

 これらのことで、誰か先生について教えてもらう、というわけではないですが、何かをドイツ語で読んでみるつもりでいます。

 そんな話をとある友人にした時のこと。その彼もかつてドイツ語を第二外国語として勉強していた経験があるので、良ければ一緒にやりましょうという気持ちでお話ししたわけですが、」「あぁ、良いですねぇ」と言った後に彼はこう言ってくれたのです。

 「半分冷凍されたドイツ語を解凍する感じですね〜」

 この「半分冷凍された」ものを「解凍する」という表現、とても印象的でした。
 こういうことを話す時、つい私は「錆びついてしまった」ものを「磨く」などという言い方をしてしまいがちです。ですが、それではあまりに寂しい気がします。なんというか、その言葉の裏には「錆びさせてしまった」という罪悪感が見え隠れするのです。ですがこれを「凍る」という動詞を使って言い表すと、もう少し前向きなイメージがするのは、私だけでしょうか。もしかしたらこれは、かつてフェノロサが薬師寺東塔を「凍れる音楽」と評した、ということが影響しているのかもしれませんが。

 そんなわけで、春になって氷が解けるように、近々ドイツ語を解凍するべく、原典を講読してみる会を始める予定です。指導役がいるわけではありませんので、自分たちの持つあらゆる知識を動員し、時には助け合いながら進むことになるでしょう。

 もし、ご興味がある方がいらっしゃいましたら、Twitter のDMや、メール( commorebi.books@gmail.com )にてご連絡いただけますと嬉しいです。

 それでは!

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