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「黒歴史に学ぶ任天堂の強さ WiiUなどネットサービス終了」に注目!

黒歴史に学ぶ任天堂の強さ WiiUなどネットサービス終了 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

任天堂は9日、携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」と据え置き型の「Wii U」のオンラインサービスを終了しました。今後はインターネット通信を使った遠隔での対戦などができなくなります。任天堂の業績は両機の苦戦により一時低迷しました。販売不振は「黒歴史」である半面、デジタル対応のてこ入れでコアなファンを取り込み、高収益体質を築く転換点となりました。

「今は全然遊んでいないけどサービス終了はさみしい」。3DSとWii Uのオンラインサービスが終了した午前9時過ぎ、X(旧ツイッター)には3DSやWii Uで遊んだ約10年前の思い出が多く投稿されました。

2023年3月に実施したゲームソフトのオンライン購入サービスの停止に続く措置で、両機のオンラインサービスは一部の例外をのぞいて終了しました。遠隔対戦やゲームスコアの順位表の閲覧ができなくなりました。オンラインサービスは現在の主力機「ニンテンドースイッチ」でのみ原則利用できます。

3DSは「ニンテンドーDS」の後継機として2011年2月、Wii Uは「Wii」の後継機として2012年12月にそれぞれ国内で発売されました。累計販売台数が1億台を超えたDSとWiiのようなヒットが期待されましたが、3DSはDSの約半分の7594万台にとどまり、Wii Uは任天堂の主力ゲーム機のワーストレコード(1356万台)を記録しました。

画面の3D表示機能が売りの3DSは目の疲れを嫌って3D機能をオフにして遊ぶ利用者が多かったです。発売の約半年後に希望小売価格を1万円下げたことが響き、2012年3月期の最終損益は1962年の上場以来初の赤字に転落しました。液晶画面付きのコントローラーを採用したWii Uは、仕様が複雑で多くのゲーム会社がソフトの開発をためらいました。

もっとも、3DSとWii Uが主力だった時代の業績低迷は両機の苦戦だけが理由ではありません。当時の任天堂はデジタル対応が遅れていました。スイッチの発売直後にあたる2017年3月期のソフトの売上高に占めるダウンロード版の比率は15%。プレイステーションを手掛けるソニーグループ(27%)に比べ12ポイント低いです。

東洋証券の安田秀樹シニアアナリストは2社の比率について「当時の利用者層の違い」を理由に挙げます。「任天堂は年に1本ソフトを買う程度のライトユーザー、ソニーはコアなゲームファンが主な利用者だった」(安田氏)

1983年発売のファミリーコンピュータを機にゲーム事業を拡大した任天堂は伝統的に「家族や友達が誰かの家に集まってみんなで遊ぶ」ソフトに強いです。ソニーは「オンライン上で集まったファン同士が連携して攻略を目指す」ソフトのヒットが目立ちます。

当時は「パズル&ドラゴンズ」(2012年)や「モンスターストライク」(2013年)といった個人や見知らぬ人同士で楽しむスマホゲームが台頭した時期でした。スマホを手に自宅で夜中にゲームを遊ぶ利用者が増える中、「集まって遊ぶ」を伝統とする任天堂の優位性は薄れていました。

2018年6月就任の古川俊太郎社長はこの課題と向き合いました。2018年9月に定額課金型(月額300円、当時)のオンラインサービスを開始。スイッチで歴代ゲーム機の旧作ゲームを楽しめるようにしたほか、本格的なオンライン対戦の環境を任天堂として初めて整えました。

2021年には人気ソフトの追加コンテンツを遊ぶことができる年間4900円の上位プランを導入しました。同じゲームでも飽きずに繰り返し遊んでもらえる仕組みをつくり、2023年3月期のデジタル売上高を4052億円と2017年3月期の12倍にしました。

また、自社以外のゲーム会社の不評を買ったWii Uの失敗を踏まえ、個人や中小零細のゲーム会社がソフトを開発できるよう、スイッチは簡単な仕様に改めました。てこ入れにより、ソフトの売上高に占めるダウンロード版の比率(2023年3月期)は48%に上がりました。

任天堂の2023年4〜12月期の連結純利益は前年同期比18%増の4080億円でした。4〜12月として過去最高を更新した好決算の裏には為替の円安だけでなく、ダウンロード版だけで9000以上のソフトが遊べるスイッチを中心としたデジタル改革があります。ライト層とコアなファンを同時に取り込み、スイッチは1億3936万台の大ヒットとなりました。

ただ、ソニーのソフトの売上高に占めるダウンロード版の比率は67%(2023年3月期)と任天堂の上をいきます。近年の好業績をけん引するスイッチは発売8年目に入り、2025年3月期は前期より販売台数を落とすことが確実視されます。スイッチの後継機を見据えつつデジタル改革を一段と進めなければ、画像などの高性能化が著しいパソコンゲームにファンを奪われます。

任天堂はゲーム専用機に加えて、モバイル・IP関連収入等として、任天堂IPに触れる人口の拡大にも力を入れています。スーパー・ニンテンドー・ワールドでは拡張エリアとしてドンキーコング・カントリーがオープンし、フロリダ州オーランドではスーパー・ニンテンドー・ワールドがオープンします。

また、スーパーマリオやゼルダの伝説の映画も制作しており、今まで任天堂に触れていない層へのアプローチも行っています。

今後も、幅広い層に任天堂が届くことを期待しています。

※文中に記載の内容は特定銘柄の売買などの推奨、または価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。