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初心者、聞き専のためのClubhouse活用法

2021年はじめ急速に話題になり、その後あっという間に語られなくなった感のある招待制音声SNS「Clubhouse」。現在サービス内部においても一部で「さびれた」といった声があがっているが、私はいまの状態は一時の狂騒状態が落ち着き、ユーザー自身がこのメディアの実際的な活用法を模索しはじめたところなのではないかと思っている。近くAndroid版のリリースも控えるこのサービスの使い方を、これから使ってみようというひと、自分から話すのは億劫だけどおもしろい話を聞きたい、有用な情報を得たいと思っているひと向けに、おもに情報収集ツールとしての観点から解説してみたい。

Clubhouseは「オワコン」か

まず最初にClubhouseというサービスの基本的な使い方について確認しておこう。

Clubhouseはスマートフォンの携帯番号をキーとしてアカウントが割り当てられる招待制のSNSであり、すでに同サービス内でアカウントを持つユーザーからの働きかけがなければ参加できない。

提供されているSNSとしての機能自体はごくシンプルなもので、文字や映像によるコミュニケーションツールは各ユーザーが設定できるユーザー、Clubのプロフィール画面以外は提供されておらず、可能なのはほぼ音声チャットのみだといっていい。

つまり、参加したユーザーができることは「Room」と呼ばれるリアルタイム音声チャットに参加し、そこでの会話を「聞く」ことか、会話に参加し「話す」ことに限定されている。

したがってこのサービスに登録したばかりの新規ユーザーはまず自分が興味のある話題が語られている「Room」を探すことを求められる。

そこで問題になるのが、このアプリケーションでは現状は「Room」検索ができず(ベンダー側は「将来的には可能になる」といっている)、またユーザーのホーム画面にはその瞬間開かれているすべての「Room」が表示されるわけではないことだ。

このため、登録したばかりのユーザーのホーム画面には、必ずしも自分の興味のある話題が話されている「Room」が表示されるわけではない。

では、どうすれば自分に合った話題の「Room」を見つけることができるのか?

自分の興味関心に合った「Room」を見つけられないと、機能がシンプルな分ユーザーは有効な情報のキャッチアップやコミュニケーションができず、その結果がユーザーの「つまらない」「オワコン」といった評価につながることになる。

ユーザーFollowの重要性

じつは「Room」の表示に関して重要なのは、既存ユーザーへのFollowとClub(ユーザーが立ち上げられるサークルのようなもの。詳細は後述)への参加である。

Clubhouseはサービスの設計理念として、各RoomのModerator(部屋を立ち上げたユーザー)を「Creator」と位置付け、ユーザーの自主的な創造性を重視する方針を掲げている。

これは会話を主軸にしたSNSであるこのサービスにおいては、ユーザー間の関係性を重視する思想だと考えもいいと思うが、この思想が根底にあるため、ホーム画面における「Room」の表示は現状のアルゴリズムでは、そのユーザーがFollowしているユーザーとFollowもしくは所属するClubの情報に基づくものになっていると思われる。

要するに自分にとって興味深いプロフィールを持つ、あるいは似た関心領域を持つようなユーザーを積極的にFollowしていく(されるのではなく)ようにしないと自身のホーム画面表示がユーザーの興味関心に沿ったかたちにカスタマイズされていかない。

なお、初期段階でのこの点を補助する仕様として、Twitter、instagrmへの連携機能が挙げられる。

これはそれぞれのSNSでユーザーがフォローしているユーザーが既にClubhouseアカウントを持っていた場合、自動的にClubhouse内でもFollowしてくれる機能であり、Twitter、instagramでユーザーがそれまでに構築したアンテナや関係性を初期段階でClubhouseに移植できるため、「なにをすればいいかわからない」という初心者は初期設定でとりあえず連携しておくことをお勧めする。

Clubのメリット

先に触れたように、ClubとはユーザーがClubhouse内に立ち上げることのできるSNS内サークルのような機能である

Clubは個々のユーザーが自由に立ち上げることが可能で、特定のテーマや方針に基づいて他のユーザーにMemberやFollowerとして参加してもらうことができる。

Clubに参加するとMember限定のRoomの開催や参加が可能になるといったメリットもあるが、情報収集という観点からいえば、まず「テーマや方針が文字情報として公示されている」という点が重要だ。

この点ではユーザーのプロフィール画面も同様だが、実際に話を聞く以外にそれが自分の関心に沿った「Room」であるかを判断するための参照情報が極端に少ないClubhouseでは、文字情報としてテーマやトピックが記載されているClubの説明は貴重である。

先にも述べたように、何についてのどういう方針を持ったClubに参加するかはホーム画面における「Room」表示の基準にも直結するため、マンガ、アート、スポーツ、地域振興など「自分が聞きたい話題」が話されている「Room」を見つけるためには、該当のテーマ、トピックをプロフィールに記述しているユーザーをFollowすると同時に、サークルの趣旨説明としてそれらを挙げているClubに入っておくのが早道になる(参加すると参加Club開催の「Room」情報のメンションもおこなわれる)。

Clubhouseというメディア

おそらく以上の点について気をつけて使えば初心者が「聞き専」的なアプローチでClubhouseを利用した場合にも興味の持てる「Room」が探しやすくなるはずだが、やはりこのサービスの最大の利点は直接的な対話によるコミュニケーションをリアルタイムにおこなえる点にある。

特に海外在留のひとたちとClubhouse経由なら海外通話料金等のリスクなく会話できることは大きなメリットだろう。

Zoom等の電子会議システムもそうだが、こうしたインターネットを介した音声、映像によるリアルタイム通信サービスの普及は確実に世界の距離を縮めている。

また、このサービスに感じる魅力は理系、人文系の研究者や各種メディア関係者、俳優やマンガ家、イラストレーターのようなクリエイターに至るまで、自分とは異なる多様な専門性を持ったひとたちと直接言葉を交わせる点にもある。

Clubhouse内で別なライターさんがおっしゃっていた発言から、「まったくその通りだな」と感じた表現をお借りしていえば、この体験は「原稿にする必要のない取材」のようなものである。

カジュアルに質問可能なかたちで、専門性の高い話を(のちのちアウトプットする必要もなく)聞けるのは、単純に気楽で楽しい。

これはこのSNSに限らず、どのようなウェブサービスであっても同様だと思うが、そのサービスの自分なりに有効な利用法を見つけだすためにはユーザー自身がある程度の試行錯誤をする必要がある。

使ってみて水が合わなければ無理に使う必要もないが、あまり安易に「熱い」とか「終わった」といったネット世論レベルの論評に飛びつかないでほしいなと思う。

有用なClub

最後にClubhouse内でおこなわれている活動が具体的にイメージ出来るように、個人的なお勧めしたいClubをできるだけ利用規約に配慮したかたち(Clubhouseには同意を得ずにRoom内の会話を外部に公表することを禁じる利用規約があるため、Club単位での活動内容の紹介に限定した記述になる)でいくつか紹介しておきたい。

クラブハウス創業者トーク: Clubhouseの創業者が定期的に開催するTownhall meetingの情報を日本語ユーザーの目線から伝えてくれるClub。新規サービスのリリースや仕様変更、利用規約の変更などのビビットな情報を速報的に教えてくれるだけではなく、弁護士等の専門家が法的観点からの解説もおこない、また、仕様や利用規約の変更点について行間を読むレベルで議論をおこなってくれるため、サービスの現状について理解するためにとてもありがたい。
イラストレーションクラブ: 海外クライアントと仕事をしているイラストレーターを中心に「イラストレーターの海外進出」に関するきわめて具体的、実践的な発表、議論がなされるRoomを定期的に開催しているClub。ものすごくためになる話が聞ける。
日本ミュージッククラブ: クラブ単位でJASRACと包括契約をおこない、クラブに所属していればJASRAC管理楽曲を自由に演奏できるという意欲的な試みをおこない、2800人を超えるメンバーを集めたことで、結果的にJASRACのClubhouseとの包括契約への動き促すことになった画期的なClub。基本的にメンバーは演奏家であり、開かれるRoomも弾き語り等のオンラインライブが多い。JASRACがClubhouseへの働きかけをはじめたことによって現在はClub単位での包括契約はできなくなってしまっているが、当面は各Roomを開くModeratorがJASRACと個人契約することでこれまでに近い運用を目指す方針のようだ。

他にもいろいろおもしろいことをやっているClubはあるので、ぜひ自分の趣味にあったClubを探してみてもらいたい。

なお、SNS外での活動内容の紹介をご了承いただいた上記Clubの運営者の方々に感謝したい。



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