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ほぼ漫画業界コラム7【就職氷河期世代】

### 校正後の文章

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本日のお題は【就職氷河期世代】。いわゆる【ロスジェネ】についてです。「なんや、漫画業界の話ちゃうんかい!」とお叱りを受けるかもしれませんが、自分自身、1977年生まれのロスジェネとして漫画業界を生きてきたので、漫画業界の話も絡むと思います。多分。指運に任せます。はい。

昨日、【#ばら撒き眼鏡】というハッシュタグがトレンドに上がっていました。インドや南太平洋諸国への経済援助が何兆円もあるのに、就職氷河期世代への支援が207億円しかないと岸田政権を批判するツイートです。個人的には、インドや南太平洋に投資するのは勝ち筋だと思っていますが、ロスジェネに対する扱いのひどさには心を痛めています。周りからも悲鳴が上がっているので、その代弁の気持ちも込めて、僕の体験したロスジェネの歴史を共有させてください。

1993年、僕が高校生だった時にバブルが崩壊しました。福井県の三国町という田舎に住む僕にとっても、それは大ニュースでした。親が株で大損したり、経営者の親が急に倒産したりという話が増えました。同級生が金銭の問題で大学進学できなかったという話もありました。

その後、インターネットが普及し始め、社会に出る直前の2000年にはITバブルが崩壊。当時、就職活動真っ只中だった大学3年生の僕も過酷な就職活動を余儀なくされました。僕はなんとかエニックス(後のスクウェア・エニックス)に滑り込むことができましたが、まともな就職ができず、その後ずっと非正規雇用で働いている同級生もたくさんいます。

そして、2001年に入社。当時は働き方も無茶苦茶で、一日18時間くらい働き、残業代もゼロで薄給でした。ヘトヘトで土日は家で過ごしていましたが、上司は土日に会社にいない僕を働きが足りないと叱責しました。当時の僕たちの世代はまさに奴隷でした。奴隷主はバブル入社世代の方々です。うん。本当に酷かった!書けないことだらけです。いつか絶対書く(笑)

近年では、うつ病など社員のメンタルに気を配るのが当たり前ですが、僕たち世代の新入社員はメンタルが壊れているのが標準仕様だったので、目立ちませんでした。理由なく涙が溢れたり、「死にたい」が口癖だったりするのも普通でした。ただ、休むことも逃げることも許されませんでした。生活ができなくなるからです。他に働き口はなかったのです。

それでもなんとか仕事を覚え、ようやく会社員として一人前になった2008年。リーマンショックが起きました。当時、ロスジェネは家族を作り始め、子供が生まれ始めた時期でした。再び大不況が襲います。ロスジェネは「年越し派遣村」で炊き出しをもらっている同世代を横目に将来を不安視していました。ただ、そんな中、成立した「子ども手当」は僕たち世代にとって希望でした。毎月子供一人につき26,000円の支給。まさに天恵。しかし、一瞬で廃止されました。制度に不備があったのを政権批判のネガティブキャンペーンに使われましたが、それは最悪の手だったと思います。制度を手直しして、続けていれば「誰も少年が読んでいない少年誌」は生まれなかったはずです。今さら少子高齢化を危機として政府が叫んでいるのは何だったのでしょうか。

2011年の東日本大震災を経て、ロスジェネは働き盛りの中間管理職世代になりました。2015年から2019年には様々な労働基準法の改正に合わせた複雑な労務管理改革に四苦八苦しました。いわゆる働き方改革の始まりです。パワハラ、セクハラで飛ばされる中間管理職も増えました。若い頃、ロスジェネ世代にえげつないハラスメントをしてきたバブル世代は、役員などに上がり安全なところから見下ろしているだけです。そんな中で必死に現場を回し、新しい働き方をロスジェネたちが作り上げました。

そして2020年、コロナショック。すでに進学を控えた子供たちを持つロスジェネ世代は苦境に陥ります。手当を減らされ、出勤日を減らされ、たくさんの子供を抱えながら日々減る貯金口座を見つめる日々です。ようやく2023年、コロナが明けました。経済が復活し始めましたが、新しく回り出した社会にはロスジェネの顔が見えません。ミレニアム世代が育ち、会社の運営は彼らに任せられるようになったからです。デジタルデバイスを使いこなすZ世代も育ち始めています。しかし、定年を迎えるはずだったバブル世代は会社を去らず、未だ社会の中枢に居座っています。こうしてロスジェネは社会から必要とされなくなったのです。

僕の同級生たちの中では、入社以来働いていた工場から見知らぬ土地に飛ばされた…という話で溢れています。家族を置いてアラフィフが突然の単身赴任。断ることはできません。

多くのロスジェネには権力がありません。金もありません。デジタルネイティブでないため、新技術にも疎いです。若い頃の激務のせいで身体にもガタが来ています。ロスジェネ男性は若い女性から「おぢ」なんて呼ばれ、人間以外の珍妙な別生物として認識されている可能性すらあります。ロスジェネにはもう価値がないのでしょうか。

今、僕の周りのロスジェネたちが次々と会社を飛び出しています。フリーに転身する人、外資に転職する人、起業する人。必要とされなくなった社会を見返すために彼らは動き始めました。僕もその一人です。

ロスジェネには時代の転換期と苦難を乗り越えてきた経験と根性があります。大ヒットドラマ『半沢直樹』の原作である池井戸潤先生の『ロスジェネの逆襲』という小説があります。ロスジェネの皆様、その中の台詞を共に口にしようではありませんか!

「この借りは必ず返す。やられたら倍返しだ。」

ちなみに、弊社コミックルームの作品で唯一のWEBTOON作品に『サラリーマンテイク2』という作品があります。途中で作画が変わったり、色々な事情で『サイコミ』だけで配信されています。サイコミではあまり人気がありませんが、僕が人生で唯一「売りたい作品」ではなく「書きたい作品」として作った作品です。ロスジェネ男性がZ世代の身体に転生するが、元の身体である自分もなぜか生きていて、40代の自分と20代の自分が協力して会社でのし上がるというストーリーです。初期のWEBTOONで読みにくいところもあると思いますが、途中からコマ割り演出が分かり読みやすくなります。読んでいただけたら幸いです。URLはこのツイートの返信で。30話まで完全無料、その後も待てば無料。基本全話無料で読めます。58話でサクッと完結する快作です。読んで感想をいただけたら非常に嬉しいです。

ロスジェネ必読のWEBTOON『サラリーマンtake2』はこちらから。



本当に人生を頑張ってきたロスジェネたちにエールを送ります。株式会社コミックルームはすべてのロスジェネの皆様を応援する会社です。


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