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Tシャツ

最近、学校で個性的なTシャツが、流行っている。
僕も1枚でいいから、一目置かれるTシャツが欲しいなぁ。

「わっ!」

ぼーっとしていたから、マンションの隣の家の人が開けたドアに、ぶつかりかけた。
中から出てきた男は、僕を一瞥すると無言で立ち去ろうとする。

「あのっ!そのTシャツ、どこで買えますか?!」

男の着ているTシャツは、前から見ると普通の無地の白いTシャツ。
しかし背面には、表現し難い黒色一色で、芸術的な絵が描かれていた。
こんなの、見たことないっ!!

目を輝かせた僕に、男は一瞬驚いたようだったが、すぐにニヤリと笑って吐き捨てた。

「買えねーよ」

「え?なんで?」

「売るほど作れねーから」

「て、手作りなんですか?!いいなー…僕にもそんな才能あったらよかったのに」

「…作ってやろうか?」

「え?いいんですか!?」

「特別、な。んじゃ、入って」

「お邪魔します!」

男に促されるまま、僕は隣の部屋へ入った。

それにしても、どうやって描くんだろう?
生きた人間の表情を、そのまま写し取ったみたいな絵って。

その周りを囲む縄目模様も、複雑ですごく綺麗だ。
確かにこんな絵は、中々描けないだろうなぁ。
特別に作ってもらえるなんて、僕はすごくラッキーだ!

浮かれていた僕は、男が背後でロープを用意したことに、全く気づかなかった。

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