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濡羽色

俺は通勤に、バスを使っている。
いつも使う時間帯の、いつも乗るバスの車両ナンバーまで、覚えてしまうほど。

「また、だ」

どれだけ空いていても、どんなに混んでいても…いつも同じ席に座っている、女性がいる。
濡羽色の長い髪は、ゆるいウエーブがかかっていて、ちょっと目を惹く。

俺が乗るバス停より前に乗って、俺が降りるバス停より後に降りるらしいので、俯いている姿しか知らない。

ある日。
どうにも彼女が気になって、遂に終点まで行ってみた。
一目、顔を見たい。

他の乗客は我先にと、次々降りて行くのに彼女はジッと座ったまま。
…一番最後に降りるルールとか、あるのかな?
よし!彼女が動くまで、俺も動かないぞー…

そう思っていると、運転手が振り返って俺に声をかけた。
「お客さん、最後の一人ですよ。降りてください」

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