note百物語2017-タイトル

【note百物語2017】かくれんぼ×かくれんぼ

 お友だちと、たくさん遊んどいで
 だけど、かくれんぼはやっちゃいけんよ―…
 けっして、かくれちゃあいけんよ


大きい山がいっぱいあるところに、1人で住んでいる、おばあちゃん。
ぼくとおかあさんが遊びに行くと、いつも大きな声でわらってくれる。

「遊びにいってくるね!」


ぼくはリュックサックを玄関におくと、ここでできた友だちに会うため、またすぐ出て行こうとした。


「覚(さとし)!かくれんぼは、やっちゃいけんよ!!」

「わかってるよ!おばあちゃん!!」


おばあちゃんの声に、ぼくは大きく手をふった。
これは、遊びに行くときの決まりごとみたいな感じ。
だって―…


「じゃあ、次。ゆうくんが、鬼ねー!!」


おんぼろ工場に集まって、いつもみんなでかくれんぼしてるけど、平気だもん!
ここは公園よりも大きくて、かくれるところがいっぱいあるから、楽しいんだ。
ちょっぴり暗いけど、それがまた冒険しているみたいで、ワクワクする。


「いーち、にぃーいっ…」


50数え終るまでに、かくれないといけないんだけど…ゆうくんには、いつもすぐに見つかっちゃうんだよなー。
今日はぜったいに、最後まで見つからないようにしないと。

奥へ奥へと走っていったら、ぐにゃっと曲がった鉄のかいだんを発見!
「これだ!」と、ぼくはひらめいた。

足音を立てないように、ゆっくりとのぼってゆく。
上につくと、かたむいたドアがあって…ぼくはその間から、中へ入った。
外の光が入ってこないから、ほとんど真っ暗。

ぼくはじっとして、目が暗さになれるのを待った。


しばらくすると、部屋の中にあるものがぼんやりと、見えてくる。
かくれられそうな場所を見つけて、ぼくはそこへもぐりこんだ。
小さくて、せまかったけど…ぼくなら大丈夫。


「ここなら、ゆうくんだって見つけられないぞ!」


きっと、ゆうくんは「覚ーっ!出てきてくれよー!!」って、おねがいするハズ!
はじめてゆうくんに勝てると思うとうれしくて、ぼくはぜんぜん怖くない!!
さらに見つからないようにと、体をまるくしてじっとする。

"けっして、かくれちゃあいけんよ―…"


ふと、おばあちゃんの声が聞こえた気がした。
そういえば、おばあちゃんはどこにかくれちゃいけないって、言ったんだっけ?
思い出そうとしたけれど、なんだかねむくなってきて、ぼくはそのまま寝てしまった。


数日後―…

「夕方のニュースです。
 2日前、かくれんぼをしていた男児が、遺体で見つかった事故。
 判明した死因は、老衰でした。
 今月は既に同様の事故が、6件起きており―…」



覚、お友だちと、たくさん遊んどいで。
だけど、かくれんぼはやっちゃいけんよ。

けっして、真四角の物の中には、かくれちゃあいけんよ。
その中は、時間が不安定になっとるけんね。
二度とウチに戻ってこられんようになるよ―…

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