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消失する「スケール」と「フォーカス」のトレードオフ

これまで長いこと、マーケティングや経営学の世界では「フォーカス」と「スケール」はトレードオフの関係にあり、これを両立させようとすることは一種の「ないものねだり」だとされてきました。

しかし今日、このトレードオフは性質を変えつつあります。その変化を促進している要因がグローバル化とテクノロジーです。

たとえば日本国内というローカル市場において、出現率が5%しかないニッチセグメントにフォーカスを絞ってビジネスを行えば、潜在顧客は600万人(=1.2億人x0.05)しかいません。
一方で、出現率が50%のメジャーセグメントに向けてビジネスを行えば、潜在顧客は10倍の6000万人ということになります。ビジネスのサイズが10倍違うということになれば、原材料の購入やマーケティングの展開などにおけるスケールメリットも大きく異なってくることになるため、どうしてもフォーカスを絞ったビジネスはコスト面や展開力といった点でハンディを負うことになります。

必然的に、誰もが市場調査を用いて「大きな市場セグメント」という漁場を特定し、彼らの好みにおもねるようにして製品やサービスを開発する、というのが「マーケティングの定石」となったわけです。しかし、これが「同質化の罠」という泥沼へと日本企業を陥れていくことになります。

分かりやすい例が携帯電話です。日本の携帯電話メーカー各社からリリースされている主力商品を改めて確認してみれば、ほとんど見分けがつかないほどに似通っていることが分かります。
なぜこのような事態が起きたのでしょう。多くの企業が先述した「マーケティングの定石」に従って製品を開発したからです。大規模な消費者調査を行い、得られた調査結果を統計的に分析し、分析結果をデザイナーやエンジニアに正しくフィードバックしたところ、どの企業からも金太郎飴のように似通った「正解」が提案されることになったわけです。

分かりやすい例えですね。日本製のスマホ、欲しいんですけどね。
iPhoneには敵わない。(個人的感想)

経営というのは本質的に差別化を追求する営みですから、いくら論理的に正しい解答であっても、それが他社と大同小異であれば、そのような凡百な「正解」には価値がありません。

結果が全てを示しています。iPhoneの登場によってほとんどの日本企業は携帯電話事業から撤退することを余儀なくされました。そして皮肉なことに、アップルという会社は、市場調査をほとんどやらないということでもよく知られている企業です。そのような企業に、マーケティングプロセスをピカピカに磨き上げ、極めて論理的に「正解」を追求していた企業がことごとく、しかも産業史上に類を見ないほどの地滑り的な敗北を喫したという事実は、私たちに「正解に価値がない」という、厳しくも面白い時代がやってきたことを示しています。

アップルのやっている事が今後の主流になるんでしょうか。
自らトレンドを作る。そんな会社になりたい。

ここまで読んで頂きありがとうございます😊