見出し画像

雑感

・夢を見た。僕は号泣しながらキリンジの「エイリアンズ」を歌っていた。頭からサビまで誤らずに歌えた試しなどないが、夢の中では正しく歌えていたのがおかしかった。目が覚めてまぶたをこすってみたが、涙は出ていなかった。思えば、何年も涙を流していなかった。フロイトいわく、人は夢の中で無意識の欲望を満たすらしい。僕は泣きたかったのかもしれなかった。

・あたりまえのように、会社にいるときは会社員としての顔をしていること。それは自分に嘘をついていることと同義だ、と思っていたが、たぶんそうではなかった。恋人に対して、友人に対して、家族に対しても専用の顔を持っていて、そのすべてが嘘っぱちなのだった。そして、自分自身というものも嘘でできているのだ、と思った。誰かといるときは、その誰か専用の顔をすればいい。でも、自分ひとりのときにどんな顔をすればいいかわからない。ひとりのときは、さまざまな仮面をツギハギしたような、ぐちゃぐちゃの顔をしている。そんな気がした。

・僕は心の核のようなものを求めていただけだった。それだけが本当でありえるような、大義のようなものを求めていただけだった。生きる理由、行動する理由を欲しがっていただけだった。だが、言葉で表せる大義や理由など、結局フィクションに過ぎないのだと思った。その核があれば、僕は仮面を使わないで生きていられるのだと信じた。でも、あんなに嫌いだった「社会」に、僕はこんなにも簡単に迎合してしまっている。あるとき信じた大義や理由も、簡単に捨てられてしまうのだと、そんなものは無気力から一時的に身を守るための薬にすぎないのだと、身を持って証明してしまったような気がした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?