彼岸の風景と、ふたりの時間
明日は今年の「秋の彼岸入りの日」。この言葉を聞くと、子どもの頃に家族で訪れたお墓の風景が浮かんできます。小さな手には、おはぎとお線香、そして母の温かな手の感触。
「暑さ寒さも彼岸まで」とよく言いますが、今年はまだ夏の名残を感じる日が続いています。それにも関わらず、秋の彼岸を迎える心の準備はじっくりと整えていきたい。この特別な時期は、「此岸」の喧騒から少し離れ、自分を見つめ直す機会となります。
明日、9月20日は母の命日。そして、7回忌を迎えます。あの日、彼岸の入りに母が旅立っていったことは、まるで天と地を繋ぐ架け橋のように感じられました。彼岸は、煩悩と悟りの狭間に位置し、その時期を通じて、私たちは修行のような日常を送ることになります。そして、私の修行の中で、最も大切なことは、愛する人の想いを胸に、心を清めることだと感じています。
あれからの時の流れは早く、その間に父も母の元へと旅立ちました。二人ともにこの世を去ったことで、私の心の中には深い寂しさが広がりましたが、同時に彼岸の時期が近づくと、天国で二人が仲良く過ごしている姿を思い浮かべることができます。きっと、母の手作りのおはぎを一緒に味わって、昔話をしながら笑っているのでしょう。
私たちの日常は「此岸」の中で過ぎていきますが、お彼岸の時期だけは、あの世とこの世が繋がり、愛する人たちと心を通わせることができるように思います。母と父、そしてすべての先祖たちに、この時期だけは特別な感謝の気持ちを伝えたいと思います。
今年も、お墓の掃除をして、お線香を手向ける。仏壇には、母の手作りに近いおはぎをお供えします。そして、ひとしずくの涙を流しながら、天国の二人に優しい秋の風を感じることを願います。