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「BROTHER MOON」Mono-Musica

自粛、なんてすっかり嫌な気分にさせられる言葉になってしまったから、好きなものの話をします


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こちら、演劇のDVD。「BROTHER MOON」。

Mono-Musica(モノムジカ)という劇団さんを応援していることは、

先達ての記事でちらりと触れたのだけど、そちらの劇団さんのDVD。こちらはどっひゃいなことに6年前に上演されたもので、DVDで見たころにはすっかり時が経ってしまい…。ツイッターで今更言うのも、という変なためらいで感想を心に留めていたので、こっそりここにしたためようと思います。

全寮制の学校・ギムナジウムが舞台で、大人と子供の狭間にいる18歳の少年たち4人の物語。登場人物はヨハン(演:弥生)、マルコ(演:杏)、ルカ(演:MIKU)、レビ(演:マナ)


↓以下、ネタバレを含みます。




この作品で私がとても印象的だったのが、マルコとヨハンの煙草のシーンだ。

マルコというキャラクターは少年の中にどこか大人を持ち合わせていて、敬虔なギムナジウムに居ながら上手く「悪いこと」をしている。それの1つとして登場するのが煙草。暗転の中ぽっと火が灯り、その後薄暗く照明が点いて煙草だと分かるのが、とても美しい。

その煙草を吸っている場面をヨハンに見られる。ヨハンが黙っているから僕にも吸わせてくれと言うのだけど火がない。そこでマルコが火を分ける。それを世では「シガーキス」というらしい。

少年同士のシガーキスが果たしてBLというのか、というのはこのジャンルに精通していない私は判断できないのだけど、その立場的に言えばBLなのかなとも思う。だけどそう断言するにもちょっと具合が違うぞという部分もあり、その曖昧さが魅力の1つでもあると思うので、そこはご自身の目で確かめてください案件。

話を戻して。

シガーキス。とても美しくてかっこいいなと思った。火をわけあうという行為が、私には義兄弟の契りというように感じたのだけど、本編ではこれを「共犯」と呼ぶ。そしてその「悪いこと」を、嬉しそうに口にするヨハン。嬉しそうにということは、つまりそういうことで、なんだかそれをそのもの言うのは無粋に感じる。

それに気付いているのがもう2人の登場人物、ルカとレビ。

ルカはマルコをとても大事に思っていて、レビはヨハンをとても大事に思っている。口にするのが無粋に感じるようなヨハンの気持ちを、冒頭から予感させたのはルカのヨハンへの敵対心だった。また、ヨハンがマルコをずっと見ていたように、レビはヨハンをずっと見ていた。

ルカとレビ、2人の気持ちが同じものかは、分からない。似ているけど、多分少しずつ違うもののように感じる。人の気持ちとは、思いとは、カテゴリに分けられるものではなく、そして言葉を尽くしても表せられないものだと、つくづく感じた。


もう1つ。

この作品には「サンクチュアリ」(=聖域)という曲があり、ファンにも人気なとても綺麗な曲だ。悲しいことが多い作品だけど、この「サンクチュアリ」はその時の思い出を、感情を、空気を、そのまま内包してそこにあり続けてくれるそんな曲だ。そしてそれは誰しも持っているものだとも思う。彼らが特別、綺麗で尊いものだからじゃない。心の中にある、誰にも踏み込めない汚くもあり綺麗でもあるサンクチュアリは、誰の心の中にもあると私は思った。

「サンクチュアリ」という曲に何を覚えるかは、その人が過ごしてきた人生できっと変わる。



あっそうそう。ちょっとクスッとする場面もある。ヨハンとマルコのシーンだ。杏さんと弥生さん、中の人お2人の関係性が結構表れている気がして、個人的にお気に入りです。

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