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トラス英前首相が訪台、中国を「脅威」と位置付けるよう政権にはたらきかけると(BBC News)


イギリスのリズ・トラス元首相が台湾を訪問し、その中での演説で中国を「脅威」と位置付けるようリシ・スーナク現首相に対して強く働きかけると約束したというニュースは、近年の国際政治における重要なトピックである、中国と西側諸国との緊張の一部を示しています。

まず、トラス氏の台湾訪問そのものが重要です。中国は「一つの中国原則」に基づいて台湾を自国の一部とみなしており、外国政府が台湾と公式に接触することを強く反対しています。このため、イギリスの元首相が台湾を訪問すること自体が、イギリスが台湾と中国との間の問題についての立場を明確にし、中国に対して一定のメッセージを送る行為となります。中国は、この訪問を「危険な政治的スタント」と批判し、それがイギリスにとって有害であると主張しています。

また、トラス氏の演説では中国を「全体主義政権」と位置づけ、真実を語らないと述べ、中国と台湾の緊張関係をロシアによるウクライナ侵攻にたとえるなど、中国に対する強い批判を展開しています。さらに、中国を国家安全保障上の「脅威」と位置づけ、その立場を強化するために現首相のスーナク氏に働きかけるとしたことは、中国との関係におけるイギリスの強硬な立場をさらに強調しています。

スーナク氏自身も、中国は「イギリスに対する最大の長期的脅威」だと宣言し、中国が運営する孔子学院の閉鎖を約束するなど、中国に対する強い姿勢を示しています。孔子学院は、中国の言語と文化を教えることを目的とした施設ですが、中国政府によるプロパガンダの拡散や表現の自由の妨害、スパイ行為などの疑いがあると批判されています。

これらの動きは、中国の経済的・政治的台頭とその影響力の拡大に対する西側諸国の懸念を反映しています。中国は世界経済で強大な影響力を持つ一方で、人権問題、台湾や香港といった地域の自治問題、南シナ海での領土問題など、多くの議論の的となっています。

経済面では、トラス氏は、台湾が「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTTP)」に加盟することを支援し、中国の加盟を阻止すべきだと訴えました。CPTTPは、現在11ヶ国が参加する自由貿易協定で、台湾の加盟を支援することは、経済的影響力を通じて中国を孤立化しようとする戦略の一部と見ることができます。

さらに、「自由と、本当に自由な事業を支援する」、「経済的な北大西洋条約機構(NATO)」の創設を提案し、これには主要7カ国(G7)と欧州連合(EU)加盟国に加え、韓国とオーストラリアも含めるべきだと述べています。これは中国の台頭に対抗するための国際的な経済的連携を提案したものと見ることができます。

しかし、これらの提案に対する批判も存在します。一部では、トラス氏の台湾訪問と演説は「インスタグラム外交」であり、「パフォーマンスばかりで実質的ではない」との指摘があります。これは、具体的な行動が伴わなければ、強い言葉だけで中国との関係に対処することはできないという意味と捉えることができます。

このように、中国との関係はイギリスだけでなく、西側諸国全体にとって重要な課題となっており、それぞれの国がどのように対処するかが注目されています。

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