授業の音読で、マラソン並みに脈が上がっていた私【ビブ人名鑑#9:河野亜美さん】
ビブリオバトル普及委員会で活躍中の方へのインタビュー企画、「ビブリオバトル人(ビブ人)名鑑」。
今回のゲストは、皇學館大学でビブリオバトルサークル「ビブロフィリア」の部長を務め、今年ビブリオバトル普及委員会の理事としてビブリオバトル・シンポジウムを担当することになった、河野亜美さん。
河野さんは、ビブリオバトルを通し、自身が大きく変化していました。
河野 亜美(かわの あみ)さん
ビブリオバトル普及委員会理事。皇學館大学国文学科4年生。三重県在住。2020年7月まで、皇學館大学ビブリオバトルサークル「ビブロフィリア」部長を務める。Twitter: @syobon1018
月に2回の開催を続けるビブロフィリア
ー 河野さんは、ここ最近どのようにビブリオバトルと関わっていらっしゃるんですか?
皇學館大学のビブリオバトルサークル、ビブロフィリアで、7月まで部長をしていました。
月に2回ビブリオバトルを行っていて、私は司会進行をすることが多かったですね。
また、2020年6月からは、ビブリオバトル普及委員会の理事も務めさせていただいています。
ー 月に2回って、なかなかの頻度ですよね。
私がいたときで部員が20人いて、5名程度のバトラーが持ち回る形なので、発表の頻度としてはそこまで多くはないですね。
基本的に、部員のメンバー内で繰り返しビブリオバトルを行っています。
ー ビブロフィリアの活動としては、他にどのようなものがあるんですか?
月に2回の開催のほかには、年に一度の倉陵祭という学園祭で、公開のビブリオバトルを行っています。
また、三重県の教育委員会の方々にお声がけいただき、要望のある小・中・高校に出張して、ビブリオバトルの説明や実演をしていますね。
去年は3回出張しました。
2012年に設立されたので、今年で9年目になるサークルです。
ー 歴史が古いですね!
授業の音読で、マラソン後並みに鼓動が上がる
ー 河野さんがビブリオバトルを知ったきっかけは何だったんですか?
高校2年生で図書委員をしていたんですが、学校司書さんが図書委員全員参加のビブリオバトルを企画してくださったことですね。
そこで私の紹介した『和菓子のアン』がチャンプ本を取ったことで、県大会の予選・本戦にも出場することになり、ビブリオバトルに興味が湧きました。
ー 初めてのビブリオバトルでチャンプ本だったんですね!もともとプレゼンがお得意だったんですか?
全然逆です(笑)
自分が好きなものについて、知り合いにおすすめすることは好きなんですが、人前に立つのは何より苦手でした。
授業で音読の順番が近づいてくるだけで、マラソンした後くらい鼓動が速くなるほどで(笑)
ー それで5分間の発表はかなりハードルが高いですよね。
図書委員で行ったときはまだ身内なのでよかったんですが、県大会の方は知らない方ばかりだったのでぶるぶる震えていました(笑)
高校ではその後ビブリオバトルをする機会にあまり恵まれなかったこともあって、ビブリオバトルは「楽しいけど、できれば何回も行うのは遠慮したいもの」というイメージでした。
入部早々、存続の危機
ー 大学では、どうしてビブリオバトルのサークルに入ることにされたんですか?
ビブリオバトルを経験して、「楽しかったな」という思いがあったことと、県大会で司会進行をされていたのがビブロフィリアの先輩方だったので、親近感を持っていたからです。
でも入ってみたら、その年の入部が私一人で、前年度入部もいなかったので、部員は学年が二つ上の先輩と私だけ、という状態でした。
ー いきなり存続の危機!でも今の部員さんは20名ほどとおっしゃってましたよね。
一時は部員が3人にまでなったんですが、そこから呼び込みや新歓をがんばって、持ち直したんです。
それだけはちょっと自慢ですね(笑)
新歓では、ビブリオバトルをしていた大学図書館のプレゼンテーションスペースの場所が込み入っていたので、入学したての新入生がたどり着けないケースがあることがわかったんです。
なので地図つきのチラシを配布したり、行き方の動画を作ってTwitterで流したら、新刊に来てくれる学生さんが急に増えたんですよ。
ー 人が来なかった原因に対して、うまく対応できたんですね!
河野、人前が平気になったってよ
ー ビブロフィリアに入ってから、ビブリオバトルに対する印象は変わりましたか?
大きく変わりましたね。
高校では、県大会を中心にビブリオバトルの予定を組むこともあって、一年に一回行う催し、という印象でした。
一方ビブロフィリアでは月に二回、見知ったメンバーで行うので、大会とはずいぶん違う心構えというか、気楽にできるものになりました。
また、繰り返しているうちにメンバーの気心が知れていくので、「あの子はこれが好きだろうなあ」みたいな視点が入ってくるんですよ。
「私はこの本が好きだから!」という思いで発表することももちろんあるんですが、見知ったメンバーならではの本の選び方もするようになっている、と気づきました。
ー 大会とサークル内では、ゲームの雰囲気も変わりますよね。発表のときの緊張については平気になったんですか?
あることがきっかけで、大丈夫になりました。
2年生のとき、ビブロフィリアの活動で、ある中学校に先輩と二人でデモンストレーションをしに行くことになったんです。
毎年、図書委員の人の前で行うと聞いていたので、40名くらいの聴衆をイメージしていたんですが、前日の打ち合わせで「全校生徒を集めるので250名ほどです」と言われました。
体育館の舞台に登壇してビブリオバトルを行ったんですが、それ以来、その人数以下の聴衆ならへっちゃらになりましたね。
聞いている人は、別にあら捜しをしているわけでもなければ、発表者にものすごく関心があるわけでもない、ということがわかったんです。
全然緊張しなくなった勢いで、その後演劇部にも入部して、舞台にまで立つようになりました。
ー 授業の音読でマラソン並みの鼓動になっていた人とは思えない!(笑)
人との会話で緊張しなくなった、というのが、ビブリオバトルを通して自分が一番変わった点かな、と思います。
知らない人との会話に特に緊張していたんですが、むしろ知らない分気楽に話すことができるようになったので、大学の模擬授業の講義や、演劇の本番前などで、周りの友だちに驚かれるくらいくつろいでいるときがあります(笑)
全国大会ならではの発見
ー 河野さんにとって、一番印象に残っているビブリオバトルは何でしょうか?
3年生のときに出場した、全国大学ビブリオバトル2019ですね。
地区決戦を突破して、東京で行われた本戦に出場しました。
結局準決勝で敗退したんですが、本戦のバトラーさんの発表がとても聞きやすいだけでなく、会場の雰囲気も固くなり過ぎていなかったことが印象に残っています。
うなずき返してくれたり、積極的に笑ってくれたりする聞き手の方々に、とても勇気づけられました。
色んな地方から参加者が集まっているのも新鮮でした。
質問の内容から、発表の評価にも地域の特色が表れる気がして。
例えば、関東の方の質問は物語の内容や作者などの情報を気にされる方が多い気がするんですが、関西の方は全体的に場が盛り上がったかどうかや熱意が印象を左右しているように思います。
ふだんはされないような質問を受けるのも楽しかったです。
バトラーさんの方言がそれぞれ違うのも面白かったですし!
ー 全国大会ならではの発見もたくさんあるんですね。
ビブリオバトル・シンポジウム、計画中。
ー 河野さんのこれからの野望を教えてください。
今年は普及委員会の理事に加わり、ビブリオバトル・シンポジウムを担当させていただくことになりました。
感染症拡大の影響でオンラインになることもありますが、例年とは雰囲気が違うシンポジウムをお届けしたいと思っているので、ぜひ楽しみにしていただきたいです。
私は今年度で大学を卒業するので、来年以降どのような形でビブリオバトルに関われるのか不透明なのですが、どこかで普及活動に携わりたい、と思っています。
卒業論文もビブリオバトルを題材にする予定です。
実はすでに「三重県における高校生ビブリオバトルの参加側と普及側の立場から見てきたこと」(『図書館界』第72巻3号掲載予定)という題の論文執筆に関わらせていただきました。
卒論も、これまでの経験を活かして執筆したいと思っています。
バトラー同士が思いやることで、ビブリオバトルは成立している
ー 河野さんにとって、ビブリオバトルとは何でしょうか?
コミュニケーションの場、だと思います。
ビブリオバトルは、バトラー同士戦うゲームである一方、バトラーが互いに思いやることで成立している場でもあるのではないでしょうか。
全国大学ビブリオバトル2019の本戦のような大きな舞台でも、バトラーが相槌やリアクションをすることで、他のバトラーが話しやすいように気を配っていました。
そういった思いやりが自然に行われるようになることが、ビブリオバトルの効果なんじゃないかと思います。
また、相手の本の好みを把握して聞き手の気持ちを考えながら喋る場面や、質問が少ないことでバトラーが緊張すると気遣って自分が手を挙げる場面は、ビブリオバトルでは多いと思います。
これらはすごく高度なコミュニケーションの練習になります。
私が人前で緊張しなくなったのも、そのおかげですね(笑)
ー ありがとうございました!
ありがとうございました。
皇學館大学ビブロフィリアのサイト
「ビブリオバトル人名鑑」シリーズでは、ビブリオバトル普及委員会で活躍されている方々のインタビュー記事を不定期に掲載していきます。
どうぞお楽しみに!
お読みいただきありがとうございました。
インタビュー・執筆:益井博史
取材日・場所:2020年8月30日(日)Zoomにて
よければサポートお願いいたします。いただいたサポートは、(一社)ビブリオバトル協会の運営資金として、ビブリオバトルの普及活動に活用させていただきます。