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施されたら施し返す、恩返しだ【ビブ人名鑑#7:前濱則子さん】

ビブリオバトル普及委員会で活躍中の方へのインタビュー企画、「ビブ人名鑑」。

今回のゲストは、2018年から大阪府茨木市でビブリオバトルの開催を続ける、前濱則子さん。
前濱さんはどうやってビブリオバトルと出会い、なぜ開催を続けていられるのでしょうか?

前濱 則子(まえはま のりこ)さん
ビブリオバトル普及委員。大阪府茨木市を中心に北摂エリアでのビブリオバトル普及活動に従事。「茨木ビブリオバトル」主催。「Asobook2019」メンバー。グラフィックデザイナーと塾講師を生業とする。パンダをこよなく愛する。Biblobattle of the Year 2018 新人賞受賞。 Twitter: @ibarakibiblio

今、対面のビブリオバトルをするということ

ー 前濱さんは大阪府茨木市で積極的にビブリオバトルを開催されていますが、最近はどのように活動されていますか?

茨木ビブリオバトルとして、2018年から原則月に一度開催しています。

今年は感染症拡大の影響で開催できない月もあったんですが、4月と5月はオンラインで、6月からは感染対策を行った上での対面式で開催を続けています。

ー 感染症の影響で対面式のビブリオバトルの開催に踏み切れていない団体も多いですが、茨木ビブリオバトルではどのような対策をされているんですか?

会場をお借りしている、茨木市立男女共生センターローズWAMの方とも話し合って、

・定員を通常の半数(12〜13人程度)にし、参加者同士の距離を保つこと
・マスクを必着にすること
・消毒の準備をすること
・参加者の住所を把握できる状態にしておくこと
・休憩時間に換気をすること
・これまで行ってきた飲食の提供はしないこと

などを行っています。

幸い施設の方がこういったコミュニティ活動の持続に親身になっていただいていることがあり、工夫しながら継続できています。
ふだんより厳しい条件なのですが、参加者の方々が熱心にご協力くださっているのも非常に大きいです。

図書館などではまだ開催が難しい面があるかもしれませんが、個人開催の柔軟さを活かして、可能な限り開催を続けられれば、と思っています。
ただその分、感染を広げないぞ、という思いも強く持っています。

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出会いは疑いから

ー 前濱さんがビブリオバトルに出会われたきっかけはなんだったんでしょうか?

別のイベントで知り合った方が、SNSでビブリオバトルについて熱心に投稿されていて、気になっていました。

ただ、当時「本は一人で楽しむものだ」という思いがあったので、ビブリオバトルのことはめちゃめちゃ訝しんでいました(笑)
ただ、見もせずに批判したくなかったので、2017年2月に兵庫県尼崎市でSonodaビブリオバトルを観戦したんです。

ー 今の前濱さんから想像するのが難しいくらいですが、最初は懐疑的だったんですね(笑)初めて観戦してみていかがでしたか?

仲間内だけの閉鎖的な空間なのかな、と思っていたんですが、オープンな雰囲気であることに驚きましたね。
色んな年齢層の方がいらっしゃって、本をテーマにフラットにお話しできるのが新鮮でした。
懇親会も、初対面の私でも世代に関係なく交流できて、また参加したい!って思えましたね。

ー きれいにイメージが覆ってますね!その後はすぐバトラーもされたんですか?

いえ、その後3回くらい観戦し続けました。
観戦専門でいようかな、と思ってたんですが、だんだん周りの方に「発表もしなよ」ってけしかけられるようになって(笑)

2017年6月に、初めてバトラーとして、『旅をする木』(星野道夫/文春文庫)を携えて参加しました。
チャンプ本は取れなかったんですが、票を入れていただけて、懇親会でも本や私の発表について感想を伝えてもらえました。

バトラーは緊張したんですが、やってみると観戦とは違う視点になって、楽しい、って思えたんです。
チャンプ本も取りたくなったので発表を続けたんですが、実際に取れるまではそこから5ヶ月かかりました(笑)

ー なんだか少年漫画の主人公が修行していく話みたいだ

そうですね(笑)
Sonodaビブリオバトル以外にも、岡本ビブリオバトルや神戸ビブリオといった別の会場にも参加しました。

初めてチャンプ本を取ったときの自分のFacebookの投稿を見たら、めちゃめちゃ嬉しそうでした(笑)

それから、岡本ビブリオバトルや神戸ビブリオは、個人開催で運営されていたんです。
もしかしたら、私でも開催できるのかも!?と思って主催者の方々に相談したら、「やっちゃえやっちゃえ」ってものすごく気軽に言われて(笑)

でも結局それが後押しになって、初チャンプ本の3ヶ月後には、自分で主催をしていました。

ー それが茨木ビブリオバトルなんですね!ノリがいい(笑)

個人開催されている方が周りにいる、というのは大きかったですね。

当時北摂(大阪府北部)では定期開催があまりされていなくて空白地帯だったんです。
なので地元でもある茨木市で開催していきたいな、と思いました。

2018年2月に初めて開催して、次で30回目になります。

開催してからは、関西でやっているビブリオバトルは全部見てみようと思って、半年くらいかけて訪問していきました。
毎週のように参加して、同じ日にハシゴしたり(笑)
営業活動も兼ねてたんですが、その頃つながった方が今も来ていただいていたりするので、やってよかったな、って思います。

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災害の後の開催で感じたこと

ー 全部回るのはすごい…!前濱さんの中で一番印象に残っているビブリオバトルはどれですか?

自分の開催になるんですが、2018年7月に行った、茨木ビブリオバトルの夏スペシャルですね。

開催の約一ヶ月前に大阪府北部地震が発生して、茨木市は特に被害が大きい地域だったんです。
会場の茨木市立男女共生センターローズWAMも避難所になっている状況で、開催できるかどうかも、直前までわかりませんでした。

でも会場の方が「いつもの部屋は無理ですが、ここなら大丈夫です」と部屋をご提案いただいて、開催に至ることができました。

蓋を開けてみると、32名の定員がほぼいっぱいになり、0代から70代まですべての世代が集った会になりました。

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ー 僕も参加させていただいたんですが、とてもあたたかい雰囲気でしたね。

災害の後にああいった会を開けたことはとても嬉しくて、その後もこんな場をまた作りたい、という思いで開催を継続できています。

短期間で準備せざるを得ず、私があたふたしている中、参加者の方々が積極的に運営を手伝ってくださったことにも、とても感謝しています。

主催しているのは私なんですが、素敵な場を作れたのは、参加いただいたお一人お一人が魅力的だったからなんだな、ということにも気づけて、それも嬉しかったです。

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大阪府北部地震のときも、今回の感染症の状況下も、会場をお貸しいただいている茨木市立男女共生センターローズWAMのご助力は、茨木ビブリオバトルにとってとても大きいんです。

施設にとっては、こうしたイベントは中止にした方が楽だし、リスクも少ないはずなんです。
ただ、コミュニティ活動の火を絶やさない、という目的のため、施設として支援し続けてくださるからこそ、ここまでやってこれていると強く感じます。

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施されたら施し返す、恩返しだ

ー 前濱さんのこれからの野望はなんでしょうか?

開催を続けること、ですね。

こういったイベントは始めるのは勢いでできますが、続けるのは思いの外大変なことです。
正直に言うと、これまでも続けるのが辛いと感じる時期もあったんですが、本を通して人がつながれる場を作っていたいので、これからも継続したいと思っています。

続ける、ということ自体で、人と人がつながっていくと思うので。

また、野望と言えるかはわかりませんが、すべての市区町村に一つずつはビブリオバトルを開催している場所があればいいな、と思います。
開催しているところが増えれば増えるほど、それぞれの人に合った場に出会いやすくなるじゃないですか。
「ここなら私はチャンプ本を取りやすい」、とか(笑)

茨木ビブリオバトルでも、「他では紹介し辛い本だけど、ここなら許されそう」みたいに言っていただくことがあって、コミュニティとしての特色を感じていただいているんだな、と思うことがあります。

ー 前濱さんにとって、ビブリオバトルとはなんでしょう?

本というものへの恩返しじゃないかな、と思います。

小学生の時、いじめに遭って苦しかった時期があって、そのときめちゃめちゃたくさん本を読んでいて救われた、という思いがあるんです。

その頃感想文もたくさん書いていたんですが、それがクラス代表として選ばれて、図書室に掲示されたんですよ。
少し自信がつき、いじめを乗り越えるきっかけの一つになりました。

小学生の私にとって、いじめられたことは大事件でした。
そのときの私を救ってくれた本に恩返しがしたいと思っているので、本に光が当たるイベントを続けたいな、と思っています。

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ー ありがとうございました!

ありがとうございました。


茨木ビブリオバトルのページはこちら。

Asobook2019のページはこちら。

「ビブ人名鑑」シリーズでは、ビブリオバトル普及委員会で活躍されている方々のインタビュー記事を不定期に掲載していきます。

どうぞお楽しみに!

お読みいただきありがとうございました。

インタビュー・執筆:益井博史
取材日・場所:2020年8月18日(火)Zoomにて

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