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ビブリオバトルを歩んで【ビブ人名鑑#8:中津壮人さん】

ビブリオバトル普及委員会で活躍中の方へのインタビュー企画、「ビブ人名鑑」。

今回のゲストは、ビブリオバトル普及委員会創設に深く関わり、天満橋ビブリオバトル、奈良県立図書情報館ビブリオバトル部など、重要な普及活動の担い手となる団体を支え続けている、中津壮人さんです。
中津さんの関わりは、ビブリオバトルの普及活動の歴史そのものでした。

中津 壮人(なかつ たけひと)さん
ビブリオバトル普及委員会関西地区副代表。「天満橋ビブリオバトル」「奈良県立図書情報館ビブリオバトル部」を立ち上げ、現在も運営メンバー。どちらの団体も、ビブリオバトルの開催回数は100回を超える。マージテクツ代表。

年表がないとわからなくなる

ー 中津さんは、ビブリオバトルができた初期から普及活動に携わられていますが、出会いはどのようなものだったんですか?

ふふ、今日はそういうことを聞かれるだろうと思って、準備しておきました。
まずはこちらをご覧ください。

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↑「中津独自まとめ ビブリオバトル年表」
※詳しく見たい方はこちら

ー おお!?ビブリオバトル年表!?

あくまで自分で調べた限りの資料ですが。
というのも、僕自身、ビブリオバトルに関わりすぎて色んな物事の前後関係が怪しかったりしたので、ちょっと整理したかったんです(笑)

ー なんて新しいパターンなんだ…!
年表の中身が色々気になりますが、中津さんがビブリオバトルに出会われたのは、普及委員会ができる前の2009年なんですね。

はい、大阪大学の学生だった頃でした。
当時、サイエンスルー(Scienthrough)という団体に所属していて、大学内の様々な分野の学生が、横断的なコミュニケーションをする、という目的のために活動していました。

サイエンスルーの定例会では、各自が興味を持ったことを共有しているんですが、そこでメンバーの一人が「京都大学でビブリオバトルっていうものをやってるらしいよ」って報告したんです。

ー ビブリオバトルが、まだほぼ京都大学の中だけで行われていたときの話なんですね。

そうです。
そこで、サイエンスルーのメンバー10名弱くらいでやってみました。
正確な情報が無かったのもあって「ビブリオバトルの発表はビデオに撮ってYouTubeにアップするものらしい」ということで、僕は発表もしつつ、撮影・記録係として参加したんです。

↑中津さんの初めての発表

そうすると、「これは面白いぞ!?」という感触を持ったんですよね。
というのも、定例会ではもともと興味があることを資料を持ってきたりして紹介していたので、その延長上でやれたんです。
それまでの定例会は、それはそれで盛り上がったんですが、ビブリオバトル形式にして、5分間という時間に区切ってポンポン進んでいくところが新鮮でした。

メンバーで話をして、「これは続けていきたいので京都大学の人に連絡してみよう」となりました。
それで、代表の飯島玲生さんが問い合わせてみたわけです。

ビブリオバトルの普及活動、始まる。

ー どうなったんでしょうか?

すると、京都大学の在学の方が連絡を回してくださったようで、当時京都大学から立命館大学に移っていた、ビブリオバトル考案者の谷口忠大さんからお返事が来たんです。

「やってもらってかまわないよ!むしろ、ちょうどこちらもビブリオバトルの調査をしたいところだったから、事例として取り上げさせてほしい」って。
なんなら、ちょっと一緒に話しませんか、というお誘いまで付いてました。
ありがたいことです(笑)。

ー ノリノリ!(笑)

そこで、京都のカフェで谷口さんと京大の西川徳宏さん、サイエンスルーのメンバーで、「ビブリオバトルの普及に向けて手を打っていきましょう」という話し合いにまでつながっていきました。

谷口さんは、その時点で普及に向けたコミュニティを作りたいとおっしゃっていて、初めはメーリングリストとかで情報共有ですね、と。
ゆくゆくは、普及組織をつくって、ウェブサイトで情報集約したり発信できればと構想を語っていました。

ビブリオバトルを開催していき、「ビブリオバトルでこんなことができる」っていう発見を、お互いに共有していきましょうということになり、動き始めたんです。

ー ビブリオバトル普及委員会の原型ですね。

ビブリオバトルは、当時同じコミュニティ内で繰り返し行う、というゲームでした。
研究室とか団体のアイスブレイクのような感じで。
まぁ、当時は京大内で実施されているくらいでやっている人が少なかったですから。

ただ、サイエンスルーの定例会が初めての方の参加を歓迎する気風だったことで、ビブリオバトルも誰でも参加していいですよ、というスタイルにしたんです。
そうやってオープンな開催を続けると、コミュニティ内だけではなく、知らない人同士の接点を作ることにも、ビブリオバトルはぴったりだ、と感じました。

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↑サイエンスルーの定例会のようす

ー 今で言う、コミュニティ型とイベント型のビブリオバトルですね。

はい、サイエンスルーの形式が、イベント型のビブリオバトルにつながっていったように思います。

そうして、1年間くらいサイエンスルーの定例会で、10〜15名程度の規模のビブリオバトルを行いましたね。
学外の人も参加してくれるようになり、手応えを感じていました。
バトラーをしたい人がどんどん増えたので、「連続でバトラーはしない」「初めての方優先」みたいな暗黙のマナーも生まれていきました。

ー 今の天満橋ビブリオバトルに近い仕組みだ。

そうですね。
変わった取り組みで言うと、ビブリオバトル周知用にサイエンスルーの有志で「まんがビブリオバトル読本!」の発行もしました。

そうして、だんだんビブリオバトルが認知されるようになっていき、僕の卒業後ですが2010年秋の学園祭では、学長やそうそうたる先生方がビブリオバトルに参戦してくれるまでになりました。

書店でビブリオバトルが開かれた

また、あるときに紀伊國屋書店の職員の方がサイエンスルーのビブリオバトルを見つけてくれて、
「こんなイベントを書店でもやりたいんだけど、どうすればいいだろうか?」
と相談を受けました。

そこで大学に尋ねたら、紀伊國屋書店とのコラボ活動をする上での窓口を立ててくれて、書店での開催に向けてサイエンスルーメンバーが動くことになったんです。
ビブリオバトル普及委員会の当時のメンバーも尽力してくれました。
たしか普及委員会も共催だったかな。

僕も、店頭プロモーション用の動画を編集して、提供しました。
その動画は、店頭POPのような形で端末で流してもらいましたね。
動画にも投票できるという仕組みだったと思います。
こんな感じでバトルするんだ、という周知の意味もあったと思います。

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↑当時の紀伊國屋書店本町店のチラシ

ー まだ誰も「ビブリオバトルとは何か」を知らない状態ですもんね。

はい。
たぶん、実店舗でイベントとしてビブリオバトルを開催した、初めての事例なんじゃないかな。

ふだんと違って、椅子を並べてイベントスペースを作っていたので、常連のお客さんは驚いたんじゃないかと思います。
僕はイベント当日は参加できなかったんですが、出場をお願いした池内祥見さんによると、店員さんが店頭でイベントに向けて呼び込みをしていて、それまでの書店のイメージが覆ったそうです。

40席ほどの椅子が用意してあったみたいなんですが、立ち見のお客さんが出るくらい独特の盛り上がりを見せたらしくって。

その後、紀伊國屋書店で行われていったビブリオバトルは読売新聞社にも伝播して、後の学生の全国大会につながっていったように記憶しています。

ー それを思うと、サイエンスルーの方々はすごく大事なサポートをされましたね…!

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↑サイエンスルーでのイベント後のようす

ビブリオバトル普及委員会、設立。

ー ビブリオバトル普及委員会が設立されたのもその頃ですよね。

そうですね。2010年です。
立ち上げに合わせ、ウェブサイトなどが整備されました。
紀伊國屋書店での開催の際は、設立したての普及委員会にいた方からのサポートなど、すでに横の連携がありましたね。

ウェブサイトでは、基本ルールや、発案から普及開始までの歴史を載せたり、また広がり始めていた各地の事例収集をしたりもしていました。
メンバーが増えるに従って、ビブリオバトルに関する一定の水準を満たした希望者のみ入会できるようにするなど、枠組みが徐々にできていったように思います。

当時はすごく小さな規模の団体だったこともあり、なぜか僕も理事の一人として名を連ねていました(笑)
僕は主にビブリオバトルの外部向けの広報部門を担当していて、チュートリアルを谷口さんに喋ってもらった動画を、YouTubeにアップしたりしていました。
ルールのイラストを載せたりとか。

ビブリオバトルにもごりごり参加していて、隙あらば発表していました(笑)
「この本が響く仲間見つけた!」という感覚がとても嬉しくて。

開催100回を超える2団体、始まる。

ー 天満橋ビブリオバトルを立ち上げられたのも同じ頃ですか?

はい。
その頃、初めての書店開催のビブリオバトルに出てもらった池内さんから、「セカンドラボラトリー(イベントなどに使うことができる空間)」という場所を立ち上げようとしているんだけど、一緒にやってみない?
というお話を頂いたんです。
立ち上げを手伝う代わりに、何かそこでやらしてもらえるかも、というので「よしやる!」と決めました。

その頃は社会人1年目で半年がたとうとしていたあたり。
仕事関係で人脈が閉じるのが嫌だなと思い始めていたのと、だからといって行きたい場所があるわけでもなかった。
そんなこともあって、その空間の使い道として、「僕にとっての人と交流する場を作りたい」という気持ちがあって、その方法の一つとしてビブリオバトルをすることを考えました。

そして2010年11月に天満橋ビブリオバトルをスタートさせました。
実は他にも電子工作したりボードゲームしたりといろんなコンテンツを考え実行してもいましたが、残ったのはビブリオバトルでしたね。

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↑初期の頃の天満橋ビブリオバトル

ー 関西各地の開催を引き起こしていくことになる団体の幕開けですね。

それだけではなく、同じ時期に奈良県立図書情報館でのビブリオバトルも始めました。

2011年1月に、奈良県立図書情報館で「仕事」について考えるフォーラムに出席したんですが、そこで熱くなって、そこに来ていた面白い人たちが定期的に集まれる場を作りたいと思ったんです。

それをビブリオバトルというゲームを通して作ってみたいと図書情報館の乾聰一郎さんに相談したら、「やってみたらいいよ」と言っていただけて、仕事フォーラムで知り合った人や知人に手伝ってもらい、ビブリオバトルをスタートすることになったんです。

ー すごい勢いでビブリオバトルの重要な団体を立ち上げていかれたんですね…!

そうですね。
とはいえ、周りの人に頼りっきりといいますか、図書情報館でのビブリオバトルでは、誰がリーダーだとかいうのが無くても、自然と集まった人でビブリオバトルできるような感じで続けられる方法を模索してたりしていたんです。
結果的に、図書情報館の方やフォーラムで出会った方、ビブリオバトルに来てくれた方など沢山の人に支えられて継続することができました。

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↑図書情報館ビブリオバトル部で発行していた「ならリオ」

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↑天満橋ビブリオバトルで発行していた「月刊ビブリオバトル」

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↑奈良県立図書情報館ビブリオバトル(夏恒例、大安寺での暁天ビブリオバトル)のようす

ー その後、天満橋ビブリオバトル、奈良県立図書情報館のビブリオバトル、ともに月に一度の開催で100回以上行っていくことになるんですよね。

そうです。
また、2012年からは、堺市立図書館や西宮図書館、生駒市立図書館など、各地のビブリオバトル運営立ち上げのサポートも、天満橋ビブリオバトルの吉野英知さんと一緒に行っていますね。

ー 破竹の勢いだ…!

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↑天満橋ビブリオバトル第100回目

ビブリオバトルは、生活に必要なのか?

ー 数々のビブリオバトルを経験されているかと思いますが、最も印象深いのはどれでしょうか?

はっとした、という意味で、奈良図書情報館ビブリオバトル部の最初の回かもしれないです。

その日は、東日本大震災の二日後だったんです。
突如やってきた大災害の直後で、開催するかどうかも非常に悩みました。
そもそもみんな集まれる状況にあるのかもわからなかったですし。

恐る恐るやってみると、あの状況の中で、人が集まって話すということ自体に、意味があるように思えました。
ビブリオバトルって生活に必要なのかどうか?ということまで考えさせられて、とても印象に残っています。

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↑奈良県立図書情報館ビブリオバトル初回(2011年3月13日)

なぜ動き続けていられるのか?

ー 中津さんのこれからの野望はなんでしょうか?

ビブリオバトルに、細く長く関わっていければと思っています。

それは天満橋ビブリオバトルかもしれないし他の活動かもしれませんが、本を通して人がつながれる場を、作り続けていきたいと考えています。

ビブリオバトルって、プライベートを持ち出さずに、誰かと会話ができるのも魅力の一つだと思います。
ゲームの体裁を装って、そういう場を作ることができるって素敵ですよね。

ー 中津さんにとって、ビブリオバトルとはなんでしょう?

本への恩返し、だと思います。

大学時代、周りの人がめっちゃ頭がキレキレだしいろんなことやっていて、自分は何もできないように思えて、こんなことでどうやって生きていけばいいんだろう、と思い悩んだ時期があったんです。

そんなときに、本を読むことで救われたんですよね。

どんなにすごい人でもすんなり人生を渡っているわけではなくて、一つ一つ可能性を試していってたどり着いている、ということに気づかされたんです。
がんがん本を読むことで平静を保てていたことが大きくて、その恩を返したい、という気持ちです。

ー ありがとうございました!

ありがとうございました。


(編集者註)
この他にも、天満橋ビブリオバトルでの苦労話など、魅力的なお話を沢山聞かせていただいたんですが、ボリュームの都合で、泣く泣くカットしました。
いずれ別の機会に、発信できればと思っています。

天満橋ビブリオバトルのページ

奈良県立図書情報館ビブリオバトル部のページ

マージテクツのページ

「ビブ人名鑑」シリーズでは、ビブリオバトル普及委員会で活躍されている方々のインタビュー記事を不定期に掲載していきます。

どうぞお楽しみに!

お読みいただきありがとうございました。

インタビュー・執筆:益井博史
取材日・場所:2020年8月16日(日)Zoomにて


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