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小動物達が人狼やってみた

作品紹介:ほのぼのショートショート。犬、猫、鳥、針鼠が集まって人狼(ゲーム)をやってみたお話。3500文字程度なので数分でお読みいただけます。

    1

猫「人狼というゲームがあるらしい」
犬「なあに、楽しい?」
鳥「鳥仲間でやったことある。何匹かで集まってやるゲームで、人狼を当てるゲームだね」
犬「人狼ってなあに?」
猫「人に化けた狼だ」
犬「なんで化けてるの?」
猫「化けて人を食べるんだ」
針「別に化けて無くても人は食べれると思います」
鳥「そうじゃなくて、たくさんいる人間の中に紛れて一匹人狼がいるから、袋叩きにされないようにこっそり一人ずつ食べていくのさ」
犬「諦めないんだね。がんばりやさんだね」
鳥「イヌはいつもポジティブだね」
針「ポジティブがいつもいいとは限りません。そもそもイヌの発言はポジティブなんでしょうか」
鳥「ハリネズミはいつも神経質だね」
猫「まあ、とにかく、その人狼と言うゲームをみんなでやってみようと言うことだ」
犬「いいね。じゃあ僕が人狼役やりたい!」
鳥「そういうことじゃないんだよ。人狼役は黙っていて、当てられたら負けなの」
犬「どういうこと?人狼は黙っとくだけ?」
鳥「一区切りごとに人狼は一人食べることができる。そうやって最後の一人になったら人狼の勝ちさ」
猫「とても知的なゲームだ。イヌにはちと厳しい」
犬「楽しそう!やりたい!」
針「どうやってやるのかをもっと詳しくしっかり説明してもらわないと心の準備が難しいです」
猫「とりあえず、一度やってみればわかる。トリ、準備して」
鳥「はいはい。トランプのカード配るから表面見たら裏向けといて。表がジョーカー引いたら人狼ね。じゃあ、配るね」
針「どういう順番で配るかをちゃんと決めないと公平とは言えないのではないでしょうか」
猫「いいから、さっさと配れ」
鳥「さあ、みんなカードをみて伏せてね」
猫「さて、誰が人狼か」
犬「誰だろうねー!すごく手強い感じするよねー!」
猫「・・・」
鳥「・・・」
針「・・・すごく尻尾が動いているので気になります」
猫「イヌが人狼だろ」
犬「うん!」
鳥「終わりましたね」
針「よくルールがわかりませんでした。一度やってみればわかるとネコさんは言っていたのに。やはりしっかりルール説明をしていなかったのが問題だと私は考えます」
猫「とりあえず、イヌ以外にカードを配り直せ」
鳥「そうだね。ごめんね、イヌ、次は一旦、人狼役はお休みだ」
犬「うん、わかった!」
針「そうなると、確率的にとても不利です。四匹のうち人狼が一匹なのと、三匹のうち人狼が一匹では全然違い・・・」
猫「面倒くせえから、さっさと配れ」
鳥「えーと、みんなトランプ返して。ネコとハリネズミと僕の分を混ぜて」
犬「ちょっと、トイレしてきていい?」
猫「ったく、さっさとしてこいよ」
針「この小休止の間にルールの確認をお願いします。ペナルティとか禁止ルール等はありますか?それをしてしまうと大変なことになったり・・・」
鳥「うーん、まあ、ゲームだから。そんなに深刻に考えなくても大丈夫さ」
猫「本当に神経質だな」
針「みなさんが剛気すぎるのです。例えばいろいろなリスクが・・・」
猫「リスクなんかねぇよ」
鳥「このやりとりも楽しいけどね」
猫「イヌのやつ遅いな」
犬「ごめーん、たくさん出たー!」
猫「相変わらず緊張感もデリカシーも無いな」
針「排泄という行為はとても重要で・・・」
猫「もういいからトリ、始めてくれ」
鳥「さて、トランプを切って。よいしょっと。はい、みんなどうぞ。あ、そっか、イヌには配らないんだったな」
猫「さて、誰が人狼だろうな」
犬「ネコが怪しいー。最初に喋ったもん」
針「それは全然論理的ではありません。むしろ、それを咎めるイヌ君の方が怪しいです。でも今回はイヌ君は人狼から省かれているので関係が無いのですけれど」
鳥「でも、そうやって人狼を当てていくのがこのゲームの醍醐味だからね」
猫「俺はハリネズミが怪しいな。いつも大人しいのに、よく喋るし」
針「よ、よく喋るから怪しいというのはそれこそ間違っています。そもそも、人狼かどうかの証拠などなく、何故怪しまれるかの根拠が曖昧でありますから・・・」
鳥「まあまあ、落ち着いて。そうやって相手の反応を見て、絞り込んでいくのさ。最後に多数決で追放者を決めるのさ」
犬「追放?」
鳥「そう、誰が人狼かと思うかを投票するの」
犬「間違って人狼じゃないのを選んだら?」
鳥「そのプレイヤーはそのゲームはお休みだね」
犬「そうなんだ・・・。追放はしたくないね。間違えるとかわいそう」
猫「そういうゲームだ」
鳥「じゃあ、順番に追放するのは誰か言っていこうか、じゃあ犬からどうぞ」
犬「えーと、ボクを追放する」
猫「馬鹿か」
鳥「自分は追放できないんだよ」
針「なぜですか?自分への投票、言うなれば自決です。自らの意思を持って行うこと。確かに色々と賛否はありますが、私としては哲学的観点から・・・」
猫「お前は人狼じゃないだろう?人狼だと思う奴に投票するんだよ」
犬「うん。わかってる」
猫「わかってないだろ」
鳥「まあまあ、いいじゃない。イヌは自分を追放ね」
犬「うん!」
猫「じゃあ、俺はトリに投票する」
針「え。な、なぜですか?全然怪しんでなかったのでは?」
猫「いや、なんとなく」
針「確かなこともなく人狼呼ばわりは責任感の問題からすれば・・・」
鳥「よーし、じゃあ、ボクはネコに一票!」
針「ええ!?」
犬「一騎打ちだー!みんな一票ずつだねー」
猫「じゃあ、ハリネズミが入れた奴が追放だな」
針「そ、そんな。そんな重責に私はどうすれば」
鳥「まあ、ゲームだからね。そんなに考えなくても良いんじゃない?」
針「え・・・えーと・・・ああ・・・」
猫「おい!大変だ。泡吹いてるぞ」
鳥「しっかりして!」
犬「ハリネズミー!!」

    2

犬「びっくりしたー」
猫「とりあえず、落ち着いたようだな」
針「すいません」
鳥「考えすぎだよ。適当に決めて良いんだよ」
針「ですが、理由もなく決めれませんよ」
猫「じゃあ、十円玉弾いて回転させて表なら俺、裏ならトリに入れろ」
犬「ボクはー?」
猫「お前はいいから黙ってろ。さあ、やれ、ハリネズミ」
針「は、はい。・・・えい!・・・えーと、表です」
猫「ちっ。俺か。じゃあ俺はリタイヤだ」
鳥「さあ。ネコは人狼だったのかな?」
猫「残念ながら俺は人狼じゃない。間違いだ」
針「えっ?私は無実のあなたを追放してしまったのですか・・・?」
猫「いや、もういいから。次のターンへ行け」
鳥「じゃあ、残るはボクとハリネズミの一騎打ちだね」
犬「ボクもいるよー」
猫「とりあえず、リタイヤした俺が進行役をしよう。イヌは最初に省かれているから、トリかハリネズミが人狼だよな?」
鳥「そういうことになるかな」
猫「お互いが投票し合うことになるから、必然的に残ったイヌの票を取った方が勝ちだ」
犬「ボクが決めるんだ?」
鳥「そうだね」
針「だとしたら簡単です。トリさんが人狼です」
犬「なんで?」
針「私は責任を感じて泡を吹いて倒れるまでになっています。人狼だったらそんなことにはなりません」
鳥「いや、わからないよ?名演技かも。それとも本当は自分が人狼だから濡れ衣に責任感を感じて泡吹いたのかも」
針「ば、馬鹿な、そんなことがあるわけが」
鳥「あやしいよねー?イヌもそう思うよねー?」
犬「うーん」
猫「さあ、進行役はつまらんからさっさと決めろ。イヌはどうする?」
犬「えーと、じゃあボクに一票!」
猫「だから駄目だって言ってんだろ!」
犬「そんなぁ」
猫「とにかく自分には入れたら駄目だ。これはルール。さあ、トリかハリネズミか選べ」
犬「うーん、どうしたらいいかな」
猫「じゃあ、もうトリにしとけ。ハリネズミは違うだろ、さすがにさっきの感じだと」
鳥「こらこら、それはルール違反だよ。酷いな」
犬「じゃあ、トリ!」
猫「じゃあ、自分に入れるのはさっきルールで禁止したから必然的にトリがアウトだな。追放で」
鳥「誘導だよ。まあでも、仕方ないかな。さっきのハリネズミの名演技じゃあね」
針「め、名演技?」
鳥「うん。だってボクは人狼じゃないから」
猫「え?」
鳥「ボクが違うってことは残りはハリネズミしかいないよね?君の勝ちだよ」
猫「なんだよー。すっげぇな、やるなぁ、ハリネズミ」
針「あの・・・私も違いますけど・・・」
鳥「は?」
猫「なんでだよ、有り得ないだろう」
針「しかし、本当に私のカードはジョーカーではないですし・・・」
猫「どうなってんだよ、トリ、ちゃんと配らなかったのか」
鳥「そんな、なにか見落としていたのかな」
犬「みんなが勝ちじゃないならボクの勝ちだね」
猫「いや、そういうことじゃなく、みんなジョーカーじゃなかったんだろ?」
犬「いや、ボク、ジョーカーだから人狼だよね」
猫「へ?」
犬「最初からずっと人狼だよ」
鳥「もしかして二回目始める前の時に戻さなかったの?ジョーカー」
犬「うん、トイレに持って行ってた」
猫「なんだそりゃ」
犬「だからずっとボクが人狼だって自分に投票してたのに」


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