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"オーストラリア人"という言葉の曖昧さ

オーストラリアの国境がついに今週より全面開通しました👏

既に学生の受け入れは12月から行っていたので、来たばかりの学生を目にする機会が増えています。

私がオーストラリア(特にシドニー)に初めて来て早い段階で衝撃を受けた事のうちの一つは、移民の多さでした。

移民というのは、オーストラリアが母国ではなく他国からオーストラリアの永住権や市民権を取得した人の事をここでは指しています。

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加えて、移民として数えられていない一時的なビザ保持者(例:ワーホリや学生)も一定数いるので、純オーストラリア人でない人の数はかなり多いです。

ただ、"移民が多い"という言い方には少し語弊があるかもしれません。

というのも、そもそも現代のオーストラリア人と呼ばれる人々自体が元をたどれば移民の子孫であるからです。

少し歴史を振り返ってみましょう。

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オーストラリアという国が正式に国と認められたのが1901年、つまりオーストラリアは2022年の時点では121歳という比較的歴史の浅い国です。


18世紀に英国人によって発見、植民地化されるまでは、通常アボリジニと呼ばれるオーストラリアの原住民が5万年以上その土地で暮らしていました。

 
1788年より大陸東部沿岸(現在のシドニー周辺)を中心に白人が移住し始めたとされています。

参考:

 "A Brief Guide to the History of Australia - Insider Guides"


その後も現代に至るまで移民を受け入れ続け、アボリジニの数は激減しつつも、現代は同じ国の名のもと共生し、世界有数の多国籍な国となっています。

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2021年の調査では国民の29.8%が国外生まれで、さらに毎年20万人弱が永住権を取得しています(2021年〜22年は年間16万人の見込み)。

オーストラリア生まれでも両親またはどちらかの親が移民というケースは全く珍しくありません。

こういった歴史や背景を考慮すると、もはや"オーストラリア人"という定義自体が曖昧であるような気がしてならなくなってしまうのです。

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英語ではAustralian、またはAussie (Ozzie/Oz)の愛称でも親しまれている"オーストラリア人"。


一般的にはオーストラリア人というとオーストラリア国籍、つまり市民権を持つ人の事を指すと思います。


ちなみに市民権取得のざっくりとした条件としては

・永住権の取得後さらに複数の条件をクリアし申請に通った人

・生後10歳までオーストラリアで過ごした人

・少なくともどちらかの親が永住権または市民権を持つ人

などが挙げられます。


しかしその中には二重国籍を持つ人(日本では原則認められていない)や、オーストラリア市民権を持ちながら人生の大半を他国で過ごす人もいます。


市民権を持ちオーストラリアで生活しながらも、アイデンティティは元々自分の生まれた国、他国にあるという人も多いです。


ここで少し、私が今まで会ったオーストラリア人の例を挙げます。

①イギリス生まれの白人(caucasian)、幼少期に両親に連れられオーストラリアに移住

②オーストラリア生まれ、オーストラリア育ちの白人、両親はスコットランド人

③オーストラリア生まれ、オーストラリア育ちのアジア系、両親は中国人とベトナム人

④フィリピン生まれのアジア系、幼少期をフィリピンで過ごしたが10代よりオーストラリアに移住


上記の4人は見た目も出生地も背景も違いますが、私が尋ねた時にはそれぞれみな自分の事をオーストラリア人と認識していました。


オーストラリア人と名乗る人に一つ共通して感じる事は、強い愛国心があり、オーストラリアに誇りを持っているという事です。


親から与えられた枠組みの範囲内だけでなく、自分で自分の住む国や国籍を選べる時代になってきている、とも言えると思います。


また、最近聞いて興味深かったPodcastを紹介します。



ここでは日本人の両親を持ち海外で育ったmomoさんについて取り上げています。


ここまで深くはなくても、様々なバックグラウンドを持つ人が集まるオーストラリアでは、特に前半のような会話は割と耳にする事が多い内容です。


アイデンティティ・クライシス(15:16)という言葉が出てきていますが、今後このような複雑なバックグラウンドを持つ人は確実に増えていくと思います。


それに伴い、みんなちがってみんないい(金子みすゞさん)とみんなが思えるような大衆の価値観の変化や国の体制の変化もいずれは起こると信じています。


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今回はひとくくりに"オーストラリア人"と言っても一人ひとりが多種多様な背景を持っていて、おそらく日本人がイメージする"典型的オージー"に当てはまらない人も実はたくさんいるという事を知ってもらえたらと思ってnoteを書いてみました。


次回の記事では、オーストラリアの国際化状況を実際にイメージしやすいように自分なりに統計をとってみたので、興味があればお付き合いください。


Our ability to reach unity in diversity will be the beauty and the test of our civilization. 
(Mahatma Gandhi)

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