ふがいない僕は空を見た/窪美澄
そんなに期待をしていなかったのに、あっさりとずるずる引き込まれてしまった。
「性と生」二つの“せい”について、様々な角度から綴られている作品なのだけれど、どれも人間が持ちうる《やっかいなもの》について書かれている。
私もその《やっかいなもの》を持っている人間なわけで、いとも簡単に引き込まれてしまった。その《やっかいなもの》を総称して大魔王様と名付けているわけだけれども。
そんな自分の身に巣くう《やっかいなもの》を私は常に持て余している。持て余しているからこそがんじがらめになって、時に身動きがとれない。
みんなそうやって持て余して、ソレと付き合って生きているんだって思わせてくれる作品。
生きる。ということは、簡単なようでとても難しい。でも、生まれてきてしまったからには生きていかなくちゃならない。自分の身に巣くう《やっかいなもの》と上手く付き合って。
生まれた環境、育った環境、今生活している環境。人はそれぞれ環境が違くて、だからこそ性格に影響するのか、はたまた性格によって見える環境が違うのか。
仕方がないなとため息を溢しながら、時には辛くて生を投げ出したくなってもそれでも生きていく人の様を駆け抜けるように読める作品。
Rー18文学賞とはいいつつ、そう感じさせない話が多い。むしろ、読み進めていけばいくほど、作品に深みが出てきて面白い。
一人一人の人間が何を考え、何を隠し、何に迷っているのか。誰も救われないけど、それがその人の人生であり、現実とはそういうものだ。
生々しい内容だから、好き嫌いはハッキリと分かれそうな気もするけれど、一気に駆け抜けるように読んでもらいたい。難しい表現も言葉も一切なく、読みやすく書かれている。
窪美澄さんの作品はこれが初めてだけれど、次の作品も是非読みたいなと思った。(2013年当時の感想)
高校一年の斉藤くんは、年上の主婦と週に何度かセックスして いる。やがて、彼女への気持ちが性欲だけではなくなってきた ことに気づくのだが──。姑に不妊治療をせまられる女性。ぼけ た祖母と二人で暮らす高校生。助産院を営みながら、女手一つ で息子を育てる母親。それぞれが抱える生きることの痛みと喜 びを鮮やかに写し取った連作長編。R-18文学賞大賞、山本周 五郎賞W受賞作。
2013/8/13 読了
ふがいない僕は空を見た/窪美澄